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ソバの花はなぜダラダラと咲くの?作物の優等生「イネ」にも勝る特性 2022年8月 日( )

2022-08-27 00:18:01 | 日記

ソバの花はなぜダラダラと咲くの?作物の優等生「イネ」にも勝る特性(俣野 敏子  2022/08/24 06:00


じつは縄文時代(!?)にまでさかのぼるという代表的な日本料理、蕎麦(ソバ)。健康食としても大人気で、日本が誇る伝統食の1つだ。しかし、意外にもその文化的、歴史的側面はあまり知られていない。なんとソバ文化は日本だけのものではなかったのだ……。植物であり、作物でもあるソバの魅力を、世界各地の食文化、日本における歴史、そして健康食としてのパワーを通して語った1冊『そば学大全』より、ソバ研究に情熱を傾けた一人の研究者の想い、そしてソバの魅力に迫る!水稲からの転作需要が急増し、足りなくなった種を製粉用に輸入した中国の種で代替するが、そのことによって在来種との交配がソバに起こってしまう。人間からすると困った事態だ。しかし、ソバからみると納得の理由があった。そこには迷走する当時の農政やそれに振り回される生産者の様子が垣間見えてくるのだった……。
(※本稿は俣野敏子『そば学大全』を一部再編集の上、紹介しています)



補助金目当ての転作

日本の米の備蓄が過剰になり始めたのは1965年(昭和四十年)頃からで、1970年に水稲の生産調整が始まると、ソバは特定転作作物としての指定を受け、補助金を受けることになった。それまで栽培面積の減り続けてきたソバが、急激な増加を余儀なくされたために、播種するにも種子がない状況がしばらく続いた。
それまでに私が訪ね歩いた山里の老人たちは、「とにかく種を残すだけでも」と作り続けてきたから、その土地に適した種は確保していたが、一方で、補助金目当てのソバ畑はソバなら何でもよいからと、とにかく播いていたらしい。転作面積の調査は、生育のごく早い時期にあるので、あとはすき込めばどんな品種でもソバでさえあればよいと。
しかし、実のつくまでおいておく場合も多く、所々で赤い花が見られるといわれるようになった。どうも製粉用に輸入した中国の種を播いていたらしかった。
それぞれの地域の環境条件に適応したものとして大切に保存されてきた在来品種が、ただでさえ残り少なくなってきている上に、まるでちがうところから持ち込まれた遺伝的素質を持つものと交雑してしまうのだから、多収穫なんて思いもよらない話である。

格安の輸入ソバと比較すると

どんな場所にどのような性質の在来品種が残されているのかを研究してきた私にも、なすすべがなかった。急に日の目を見始めたこの頃がソバの受難の時期だったのかもしれない。
明治以降急速に減少してきたソバの栽培面積は、1970年頃、つまり私が研究を始めた頃はまさに風前のともしびだった。水田転作で一度増加し始めたが、1975、1976年に最低となり、転作田でも増えなかった。ソバどころといわれてきた信州で、当時の転作田のソバ栽培が少ないのを見て私は何やらほっとしたものである。
その後、需要は急増し、それにともなって輸入量は増加の一途をたどっている。生産調整が開始された1970年から二十数年の間に、種が不足していた頃に交雑したものは、それぞれ地に適応したものが残されて、ましになってきているのかもしれない。
しかし、日本のソバの栽培面積はほとんど増加していない。単位面積あたりの収穫量は横ばいか、むしろ低下している。努力をしてみても、格安の輸入ソバに比較してはとてもまともな収益の上がる作物とは考えられないからだろう。



ふぞろいな成育

ソバ畑が満開になったといっても、1つの個体を見ると、しっかり咲いている花もあれば明日にも咲きそうな白いつぼみもあるし、さらにまだまだ硬くて緑のつぼみもある。
もっとよく見ると、これから葉の出る枝もある。それらはさらに遅れてつぼみがつき、開花する。開花してから数日たつと、受精した実は茶色く色づいてきて、数日で黒い実になるが、他の花がまだこれからたくさん咲こうとしている時に落ちてしまう。
イネのように茎の先端に花(穂)がつく場合には、葉が全部出終ってから花が咲く。イネ科では茎の頂端の芽が葉芽から花芽に変ってからいっせいに花が咲く。
ソバは、ほかの花が咲いていたり、まだつぼみのままだったりするのに、早いものは黒い実になってしばらくすると落ちてしまって収量が減る。この実は土の上にごろごろところがっており、暖かい時期なら雨が降るとその年のうちに、あるいは秋に落ちると次の春に芽を出している。
だから、春先に前年のソバ畑へ行くとソバの芽が元気に育っている。この畑は春に播いたもので発芽が悪くてこんなに不ぞろいなのかと感じたりするくらいである。そこを耕して新しく種を播いても、前年の落ちた種がいつまでも芽を出すから、次の年の品種がちがえば混じってしまう。


遺伝子の多様性
このダラダラといつまでも咲く花の咲き方は、人間にとっては困る問題だが、ソバにとっては好都合な話なのである。花の寿命はふつうは1日で、朝咲いて夕方にはしぼんでしまうので、雨が降ったり、強風が吹いたりすると虫が来ないから、いっせいに咲くようではその個体の子孫は残せないことになってしまう。
いつまでも次々に咲いていれば、そのうちによい日にめぐり会うというものだ。つまり、無駄花をたくさんつくることになっても遺伝子の多様性を残すほうが野生生物としては都合がよい
他殖性がなぜ野生の植物に都合がよいかというと、栽培植物の場合は人間がその植物に適した環境をつくって育てるが、野生の場合は不適当な環境では少数の子孫でもよいから誰かが生き残るような性質、つまり遺伝子の多様性が必要になってくるわけである。
ソバは手がかかる作物だが、それは野生に近い植物であるがゆえ。人間のコントロールが及ばない「個」が際立つことで、種を保存させようという彼らなりの戦略なのであった。

ソバの花はなぜダラダラと咲くの?作物の優等生「イネ」にも勝る特性


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