ビャッコイの自生地。湧泉(手前)の水中に生育する=15日、白河市表郷金山© (C) KAHOKU SHIMPO PUBLISHING CO.
水草「ビャッコイ」絶滅の危機 朝ドラ「らんまん」モデル牧野富太郎が命名(河北新報社 の意見 • 13 時間前)
NHK連続テレビ小説「らんまん」のモデルとなった植物学者牧野富太郎(1862~1957年)が名付けた水草「ビャッコイ」が危機にひんしている。国内唯一の自生地、白河市で以前の数十分の1ほどに個体数が減り、絶滅の恐れがある。地域の宝を守ろうと、市は国の天然記念物指定を目指して準備を始めた。
[ビャッコイ]カヤツリグサ科の多年草。通年で10~12度の水温を保つ湧泉などの環境で生育するといわれる。8~9月には数ミリ程度の白っぽい花を咲かせる。環境省の絶滅危惧種リスト(レッドリスト)では絶滅の危険性が最も高い「絶滅危惧IA類」に登録。同省は2020年、種の保存法に基づき捕獲や譲渡を禁止する「国内希少野生動植物種」に指定した。
■福島・白河に国内唯一の自生地 市が天然記念物指定目指す
ビャッコイが自生するのは白河市表郷地区の農村部。杉林に囲まれたくぼ地を下ると、小さな湧泉があり、水中で静かに揺らいでいる。
牧野が1905年にビャッコイを発表した論文によると、会津若松市にある戊辰戦争の古戦場、戸ノ口原で採集した標本を基に、白虎隊にちなんで自身が命名したとされる。それ以来、戸ノ口原では見つかっておらず、表郷地区の標本が戸ノ口原の別の標本と紛れ、牧野の元に届いたとする説もある。
現在に至るまで国内はもとより、北半球でも白河市以外で見つかっていない。55年には県指定天然記念物となった。
旧表郷村の調査によると、ビャッコイは95年時点では湧泉から水路までの約350メートルにわたり生育していたが、今は湧泉の地点のみ。福島大の黒沢高秀教授(植物分類学・生態学)は「数十分の1に減った。既に遺伝的多様性が低く、環境変化により絶滅する可能性が高い状態」と指摘する。
黒沢教授が激減の一因に挙げるのが光環境の変化だ。40~50年前までは住民が水路で調理道具などを洗っていたことを踏まえ「常に人が入っていたことで明るい環境が維持され、生育環境が保たれていた」と推測する。消失した箇所は日当たりが悪く、草木が伸び放題になっている。
ビャッコイの現状に白河市は危機感を募らせ、昨年度、国の天然記念物指定の申請準備を本格化させた。指定されれば、保全などに関する事業費の半分に国の補助金を充てられる。専門家とも協議し、適切な管理方法を探る方針だ。
自生地では研究者や住民らが観察会や清掃活動をするなどして、生育環境の保護に努めてきた。市文化財課の担当者は「ビャッコイは地域の宝。絶滅させるわけにはいかない。多くの人が関心を寄せてもらう場をつくり、保全につなげたい」と意気込む。(福島総局・佐々木薫子)
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます