11 お金って?
いつの間にか僕は、緑豊かな大草原に立っていた。心地いい風が体の中を通りぬけていく。そして色とりどりの花が無数に咲いていて、ほのかに甘い良い香りがする。気候は春ぐらいだろうか?遠くのほうには、富士山の倍はあるかと思われる山々が連なっていて、はっきりと見え頂上付近には、まだ雪が残っている。天気は晴れていて空は青く澄み渡り空気がおいしい。鳥や虫たちは思いのままに飛び交っていて、とても平和な気分だ。
耳を澄ますと水の流れる音が聞こえる。近くに小川があるようだ。音のする方向へ歩いていくと動物たちが水浴びをしていた・・・。馬や牛、ヤギや猿など・・・思いのままに水を飲んだり、はしゃいだりして遊んでいる。とそこに一人の老人が話しかけてきた。
「どうじゃな・・この場所は?いいところじゃろ」
いつ近づいてきたんだろう?全然気づかなかった。でも不思議とすぐに、おじいさんに親しみを感じている自分がいた。
「はい!とっても平和で心地いい所ですね。ここは、どこなんですか?」
そう聞くと老人はこう答えた。
「心の楽園じゃよ。この場所には競争や、いがみあい、戦争もない。ここに存在する全てのものが主役になってこの世界を作っている。誰ひとりとして欠けても、この世界は成り立たない。みんなが優しい心を持ち相手をいたわり愛があるのじゃ」
「愛?」
「そう愛じゃよ。この世界はのぅ・・心の汚れたものが入ってはこれない世界なのじゃ。ここは向上心のある者や、今の人生をもっと良い方向へ変えたいと心から願っているものだけが入ることが許される世界じゃ・・・。(少し沈黙)なぁ~~~んてな!(^^)というのは冗談じゃよ。誰でもこの世界に入ってこれる。本人がそれを望むのならな。」
「僕でもですか?」
「なにをいっておる。お前さんは、すでにここに来ておるではないか・・・ゆっくりしていくといい。今まで見えなかったものが見えるようになるじゃろうて・・・」
このときは変なことを言うおじいさんだなと軽く聞き流していたが、しばらくした後にこの老人の言った言葉の意味が理解できた。
「さてお若いの。しばらく、わしと会話でもして楽しまんか?お前さんには、なにか悩みがあるようじゃが・・もしよかったら話ししてみんか?少しは役にたてると思うがのぅ・・・」
「はい!」
僕の心境がなぜ分かったのか不思議だったが、悪い人でもなさそうなので後についていくことした。
30分ほど歩いただろうか?森を抜けると、そこにはログハウス風のかわいらしい小さな家が建っていた。中に入るとヒノキのいい香りがして、よりいっそう僕の気持ちが軽くなるのが感じた。なんて心地いい場所なんだろう。部屋は一部屋しかなかった。中央には木で出来たテーブルがありイスもあった。全て手作りみたいだ。木のぬくもりが至るところで感じらる。窓は南にひとつ大きなのがあり、そのおかげか中はとっても明るかった。老人は僕にイスに座るように言うと飲み物を差し出してくれた。
金色のマグカップの中には、ほのかに甘い香りがする飲み物が入っていた。すすめられるままに飲むと、体の中から悪いものがすぅ~っとでていき、その代わりに新たな新しいエネルギーみたいのが入ってくるような感じがした。不思議な飲み物だ・・・。
「さて、お若いの名前はなんていうのじゃ?」
「翔馬です。」
「ほう・・それはいい名前じゃな。で、わしに話たいことがありそうじゃが・・・よかったら話してみんか?」
「はい!実は・・・。僕は今の人生をもっともっと良いものにしたいのです。で、色々と本を読んでどうすればいいか勉強してきました。そして・・・」
このとき、あいちゃんに出会ったことを話そうとしたが急に悲しくなってきたと同時にあいちゃんのことが気になって仕方なくなってしまった。
「そんなとき、あいちゃんという幸せで豊かで楽しく暮らしている子に出会ったんです。その子には色々と教えてもらっています。そして僕は、そのアドバイスに従って色々な課題に取り組んでいて、それで・・・うまくいってきてはいたのですが・・・」
「ほう~、それはいい子と出会ったの~」
「はい!でも、ある日喧嘩をしてしまって・・・本当は、あいちゃんの言うことが正しいというか間違ったことは言ってないと分かっているのに、その時はイライラしてしまっていて・・・そこで喧嘩してしまい落ち込んでいたんです。自分が悪いのですが・・・」
「ほほう。そうじゃったか・・それはそれは・・まぁ喧嘩するほど仲がいいと言うしな。でも、なぜイライラしていたのかね?」
「はい。僕はある目標を立てました。大好きなことをしてお金持ちになるって・・・それで僕は早く結果を出したいとおもって焦ってしまって・・・もっと早くお金持ちになりたいと思っていたのだと思います。本当はそんなに焦ることなんかないのに・・・冷静に考えてみればあいちゃんに出会う前より、はるかに充実した時間を過ごせているし僕の人生は少しずつよくなってきているし・・・それに・・・」
僕は言葉に詰まってしまった。そんな僕に、おじいさんは優しいまなざしで僕を見て
こう言った。
「翔馬君、君ならできる。自分を信じて自分の内に秘めている無限の力があることを思い出しなさい。愛を持って自分に接してあげなさい。夢を忘れないようにな!」
「はい!ありがとうございます。ところで、おじいさんはお金のことをどう思っていますか?」
「わしが思うに、お金はお金であってそれ以上でもそれ以下でもない。お金そのものが人を不幸にも幸福にもするわけではないのだよ。扱う人間によって、それは変わってくるのだと思っておるよ。そしてお金はわしにとって、自分の好きなことをするための道具にすぎん。」
「お金が道具ですか?」
「そうじゃよ。翔馬君!ただし、わしが今から言うことをよ~~く覚えておきなされ。お金に心を支配されてはならぬ。決してな。そして、真の幸せというのは人の心の中にあるものじゃし、お前さんのすぐ目の前にも見えておるものじゃ・・。いつも近くにあって決して消えることはない。ただし、おまえさんがお金や物に執着しすぎると、それは見えなくなってしまう。というより見えなくしてしまうのじゃ。自分でも気づかぬうちにな・・。分かってもらえるじゃろか?」
「はい、なんとなくは・・・。僕は何か大事なことを忘れていたような気がします。それはなにか?今は、はっきり分かりませんが、おじいさんの言いたいことは大体分かったと思います。ありがとうございました。なんだか気持ちが楽になりました。」
「そうかそうか、そう言ってもらえるとありがたいの。では握手じゃ。」
そして僕はその老人と握手した。その手のひらは、とても厚くそして温かく優しい感じのする手で、瞬間的にこのおじいさんが普通の人ではない、なにか特別な人のように思えたのだ。
そこで、僕は目を覚ました。リアルな夢だった。寝ぼけ顔でぼ~っとしていると目の前にはあいちゃんが座っていた。
「翔馬君、本当によく寝ていたわね。チャイムを鳴らしたけど反応がなくて、どうしようかと思ったんだけど上がらせてもらったの。そしたら翔馬君・・寝てて・・・。でも起こすのもかわいそうかなって思ってずっと眺めてたんだ。」
「そうだったんだ。俺、不思議な夢をみたんだよ。草原の中に僕はいて、しばらくするとおじいさんが立っていたんだ。でね、色々と話をしてくれて・・・そして・・」
「そうだったんだ。」
「あいちゃん、ごめんね。俺・・・さっきは・・・イライラしってついカッとなってしまって。本当にごめん。心から反省してる」
「よかった。翔馬君なら分かってもらえると思っていたわ。さぁ、これからレッスンの続きをしましょう」
「うん!」
「私たちは、生まれた瞬間から素晴らしい宝物を持って生まれてきているのよ。そして・・・」
「そして?」
「あなたはすでに莫大な財産を持ってるの」
「ええ~~そんなわけないよ。お金なんて銀行にすずめの涙ほどしか残っていないし、そんな大金・・・。あっ!分かった。あいちゃんが僕の口座に振り込んでくれたとか??わぁ~~いわぁ~~いありがとう!!あいちゃん!!」
「なに言ってるの?財産といってもお金だけとは限らないのよ。」
「なぁ~んだ、違うんだ。がっくし・・」
「そんなことないわ。翔馬君はすでに・・お金持ちになる権利と才能を持っているの」
「お金持ちになる権利と才能??」
「そうよ。あなたの耳と耳の間にあるものとか・・・」
「脳?」
「うん。そこを、うんと使ってあげることね。まだまだ元々持ってる能力のほんのわずかしか活用していないんだから・・」
「そうなの?」
「そうよ!他にもあるわ。例えば目。素晴らしい大自然の景色やきれいな花を見ることができたり朝日や夕日などを見ることができる。そして耳。素敵な音楽を聴けたり、波の音や虫の鳴き声、翔馬君の好きなF1や戦闘機の音だって聞くことができる。そして、口。おいしい物を食べたり、自分が感じたことを言葉として表現したり、愛情を示したりできる。健康な体もそうね。健康でなければ、好きなことをやるのも制限されてしまう。これらは、かけがけのない財産よ。命もそう。人はお金にかえられないほど素晴らしい宝物つまり財産を持っているの。そしてあなたの存在そのものが、かけがえのない貴重なものなの。国宝級といってもいいわね。」
「そんなにおだてなくても・・・なんだか照れるなぁ・・」
「本当よ。この世の中にあなたという人間は一人しかいないの。同じ顔で全く同じ考えや性格の人がいると思う?」
「そう言われてみれば、居ないね。みんな顔も違うし性格や考え方だって違う。似ている人はいるけど・・・」
「だから・・・。みんなに個性があって、最初から持って生まれた才能が誰にでも備わっているの。それを生かして、よりよき人生を生きる権利が私たちにはあるのよ。自分の人生を他人に任せっきりでは、だめなの。自分の足で1歩1歩歩いていくの。ゆっくりでもいい自分だけの人生の道を切り開いてあるいていくの。自分に対して優しく、そして思いやりを持って接していくの。自分を信頼して愛してあげて・・・それができない人が、他人に優しくしたり思いやりの心をおくったり信頼してあげることなんてできないのよ。まずは自分を大切にしてあげなきゃ。」
なんだか今日のあいちゃんは、とても気合が入った話方をする。かなり真剣だ。こんなあいちゃんは見たことがない。
「自分を大切にする?」
「そうよ。自分に対して、そういったことができない人が、どうやって他人にそれらのことをしてあげられる?冷静に考えれば分かるはずよ」
「なるほど!だから僕に自分を褒めたり自信をつけるためにアドバイスしてくれたんだね。」
「うん。自分を信頼してあげたりするためには、まず自分に自信を持ってほしいと思ったから・・・。自信が持てない人が自分のことを信頼したりすることなんてできないはずよ。そんな人が自分を大切にできるわけない!」
「そうだね」
僕は今まで色々な課題をやってきた。考えてみれば、自分の人生は誰のためでも自分のためにあるわけで、他人のせいにしたり世の中にせいにしなくても、自分の気持ちというか心がけしだいで、どうにでもなるのかなと思った。そう思うと、今どんな環境であろうと僕が望む未来を、これからは生きることができるということが分かってきた。これもあいちゃんのおかげだ。それにしても、夢の中のおじいさんは、誰だったんだろう??
しばらく考えてみた。なんだか昔から知っているような知らないような・・でも赤の他人とは思えなくて・・・。そのときふと、おじいさんが話してくれたお金のことを思い出した。「お金そのものが人を不幸にも幸福にもするわけではない。それを扱う人間によって、それは代わってくるのだよ。」以前あいちゃんがお金のことをどんなものだと思ってる?って、聞いてきたけどこのことを僕に言いたかったのかな?
たしかに、おじいさんの言っていたことはそういうことかもしれない。だって例えて言えばお金をバイクと置き換えて考えてみよう。バイクだって、走りを楽しむための道具だ。
でも、そんなバイクも乗り方を心得ていないと危険な乗り物になってしまう。しかし乗りこなすことができるようになればよりいっそう走るのが楽しくなる。そうなると道具というよりも友達みたいな存在になるだろう。お金も同じかもしれない。お金の使い方や守り方、増やし方などお金のことがきちんと分かれば、お金も自分の人生を楽しむ素晴らしい道具になる。
お金のことをしっかりと理解してる人にとってお金は友達なんだ。そうだ。きっとそうに違いない。あいちゃんはどう思っているのだろう?聞いてみよう。
次回 12章 誕生日プレゼントは心の栄養?
お楽しみに^^
いつの間にか僕は、緑豊かな大草原に立っていた。心地いい風が体の中を通りぬけていく。そして色とりどりの花が無数に咲いていて、ほのかに甘い良い香りがする。気候は春ぐらいだろうか?遠くのほうには、富士山の倍はあるかと思われる山々が連なっていて、はっきりと見え頂上付近には、まだ雪が残っている。天気は晴れていて空は青く澄み渡り空気がおいしい。鳥や虫たちは思いのままに飛び交っていて、とても平和な気分だ。
耳を澄ますと水の流れる音が聞こえる。近くに小川があるようだ。音のする方向へ歩いていくと動物たちが水浴びをしていた・・・。馬や牛、ヤギや猿など・・・思いのままに水を飲んだり、はしゃいだりして遊んでいる。とそこに一人の老人が話しかけてきた。
「どうじゃな・・この場所は?いいところじゃろ」
いつ近づいてきたんだろう?全然気づかなかった。でも不思議とすぐに、おじいさんに親しみを感じている自分がいた。
「はい!とっても平和で心地いい所ですね。ここは、どこなんですか?」
そう聞くと老人はこう答えた。
「心の楽園じゃよ。この場所には競争や、いがみあい、戦争もない。ここに存在する全てのものが主役になってこの世界を作っている。誰ひとりとして欠けても、この世界は成り立たない。みんなが優しい心を持ち相手をいたわり愛があるのじゃ」
「愛?」
「そう愛じゃよ。この世界はのぅ・・心の汚れたものが入ってはこれない世界なのじゃ。ここは向上心のある者や、今の人生をもっと良い方向へ変えたいと心から願っているものだけが入ることが許される世界じゃ・・・。(少し沈黙)なぁ~~~んてな!(^^)というのは冗談じゃよ。誰でもこの世界に入ってこれる。本人がそれを望むのならな。」
「僕でもですか?」
「なにをいっておる。お前さんは、すでにここに来ておるではないか・・・ゆっくりしていくといい。今まで見えなかったものが見えるようになるじゃろうて・・・」
このときは変なことを言うおじいさんだなと軽く聞き流していたが、しばらくした後にこの老人の言った言葉の意味が理解できた。
「さてお若いの。しばらく、わしと会話でもして楽しまんか?お前さんには、なにか悩みがあるようじゃが・・もしよかったら話ししてみんか?少しは役にたてると思うがのぅ・・・」
「はい!」
僕の心境がなぜ分かったのか不思議だったが、悪い人でもなさそうなので後についていくことした。
30分ほど歩いただろうか?森を抜けると、そこにはログハウス風のかわいらしい小さな家が建っていた。中に入るとヒノキのいい香りがして、よりいっそう僕の気持ちが軽くなるのが感じた。なんて心地いい場所なんだろう。部屋は一部屋しかなかった。中央には木で出来たテーブルがありイスもあった。全て手作りみたいだ。木のぬくもりが至るところで感じらる。窓は南にひとつ大きなのがあり、そのおかげか中はとっても明るかった。老人は僕にイスに座るように言うと飲み物を差し出してくれた。
金色のマグカップの中には、ほのかに甘い香りがする飲み物が入っていた。すすめられるままに飲むと、体の中から悪いものがすぅ~っとでていき、その代わりに新たな新しいエネルギーみたいのが入ってくるような感じがした。不思議な飲み物だ・・・。
「さて、お若いの名前はなんていうのじゃ?」
「翔馬です。」
「ほう・・それはいい名前じゃな。で、わしに話たいことがありそうじゃが・・・よかったら話してみんか?」
「はい!実は・・・。僕は今の人生をもっともっと良いものにしたいのです。で、色々と本を読んでどうすればいいか勉強してきました。そして・・・」
このとき、あいちゃんに出会ったことを話そうとしたが急に悲しくなってきたと同時にあいちゃんのことが気になって仕方なくなってしまった。
「そんなとき、あいちゃんという幸せで豊かで楽しく暮らしている子に出会ったんです。その子には色々と教えてもらっています。そして僕は、そのアドバイスに従って色々な課題に取り組んでいて、それで・・・うまくいってきてはいたのですが・・・」
「ほう~、それはいい子と出会ったの~」
「はい!でも、ある日喧嘩をしてしまって・・・本当は、あいちゃんの言うことが正しいというか間違ったことは言ってないと分かっているのに、その時はイライラしてしまっていて・・・そこで喧嘩してしまい落ち込んでいたんです。自分が悪いのですが・・・」
「ほほう。そうじゃったか・・それはそれは・・まぁ喧嘩するほど仲がいいと言うしな。でも、なぜイライラしていたのかね?」
「はい。僕はある目標を立てました。大好きなことをしてお金持ちになるって・・・それで僕は早く結果を出したいとおもって焦ってしまって・・・もっと早くお金持ちになりたいと思っていたのだと思います。本当はそんなに焦ることなんかないのに・・・冷静に考えてみればあいちゃんに出会う前より、はるかに充実した時間を過ごせているし僕の人生は少しずつよくなってきているし・・・それに・・・」
僕は言葉に詰まってしまった。そんな僕に、おじいさんは優しいまなざしで僕を見て
こう言った。
「翔馬君、君ならできる。自分を信じて自分の内に秘めている無限の力があることを思い出しなさい。愛を持って自分に接してあげなさい。夢を忘れないようにな!」
「はい!ありがとうございます。ところで、おじいさんはお金のことをどう思っていますか?」
「わしが思うに、お金はお金であってそれ以上でもそれ以下でもない。お金そのものが人を不幸にも幸福にもするわけではないのだよ。扱う人間によって、それは変わってくるのだと思っておるよ。そしてお金はわしにとって、自分の好きなことをするための道具にすぎん。」
「お金が道具ですか?」
「そうじゃよ。翔馬君!ただし、わしが今から言うことをよ~~く覚えておきなされ。お金に心を支配されてはならぬ。決してな。そして、真の幸せというのは人の心の中にあるものじゃし、お前さんのすぐ目の前にも見えておるものじゃ・・。いつも近くにあって決して消えることはない。ただし、おまえさんがお金や物に執着しすぎると、それは見えなくなってしまう。というより見えなくしてしまうのじゃ。自分でも気づかぬうちにな・・。分かってもらえるじゃろか?」
「はい、なんとなくは・・・。僕は何か大事なことを忘れていたような気がします。それはなにか?今は、はっきり分かりませんが、おじいさんの言いたいことは大体分かったと思います。ありがとうございました。なんだか気持ちが楽になりました。」
「そうかそうか、そう言ってもらえるとありがたいの。では握手じゃ。」
そして僕はその老人と握手した。その手のひらは、とても厚くそして温かく優しい感じのする手で、瞬間的にこのおじいさんが普通の人ではない、なにか特別な人のように思えたのだ。
そこで、僕は目を覚ました。リアルな夢だった。寝ぼけ顔でぼ~っとしていると目の前にはあいちゃんが座っていた。
「翔馬君、本当によく寝ていたわね。チャイムを鳴らしたけど反応がなくて、どうしようかと思ったんだけど上がらせてもらったの。そしたら翔馬君・・寝てて・・・。でも起こすのもかわいそうかなって思ってずっと眺めてたんだ。」
「そうだったんだ。俺、不思議な夢をみたんだよ。草原の中に僕はいて、しばらくするとおじいさんが立っていたんだ。でね、色々と話をしてくれて・・・そして・・」
「そうだったんだ。」
「あいちゃん、ごめんね。俺・・・さっきは・・・イライラしってついカッとなってしまって。本当にごめん。心から反省してる」
「よかった。翔馬君なら分かってもらえると思っていたわ。さぁ、これからレッスンの続きをしましょう」
「うん!」
「私たちは、生まれた瞬間から素晴らしい宝物を持って生まれてきているのよ。そして・・・」
「そして?」
「あなたはすでに莫大な財産を持ってるの」
「ええ~~そんなわけないよ。お金なんて銀行にすずめの涙ほどしか残っていないし、そんな大金・・・。あっ!分かった。あいちゃんが僕の口座に振り込んでくれたとか??わぁ~~いわぁ~~いありがとう!!あいちゃん!!」
「なに言ってるの?財産といってもお金だけとは限らないのよ。」
「なぁ~んだ、違うんだ。がっくし・・」
「そんなことないわ。翔馬君はすでに・・お金持ちになる権利と才能を持っているの」
「お金持ちになる権利と才能??」
「そうよ。あなたの耳と耳の間にあるものとか・・・」
「脳?」
「うん。そこを、うんと使ってあげることね。まだまだ元々持ってる能力のほんのわずかしか活用していないんだから・・」
「そうなの?」
「そうよ!他にもあるわ。例えば目。素晴らしい大自然の景色やきれいな花を見ることができたり朝日や夕日などを見ることができる。そして耳。素敵な音楽を聴けたり、波の音や虫の鳴き声、翔馬君の好きなF1や戦闘機の音だって聞くことができる。そして、口。おいしい物を食べたり、自分が感じたことを言葉として表現したり、愛情を示したりできる。健康な体もそうね。健康でなければ、好きなことをやるのも制限されてしまう。これらは、かけがけのない財産よ。命もそう。人はお金にかえられないほど素晴らしい宝物つまり財産を持っているの。そしてあなたの存在そのものが、かけがえのない貴重なものなの。国宝級といってもいいわね。」
「そんなにおだてなくても・・・なんだか照れるなぁ・・」
「本当よ。この世の中にあなたという人間は一人しかいないの。同じ顔で全く同じ考えや性格の人がいると思う?」
「そう言われてみれば、居ないね。みんな顔も違うし性格や考え方だって違う。似ている人はいるけど・・・」
「だから・・・。みんなに個性があって、最初から持って生まれた才能が誰にでも備わっているの。それを生かして、よりよき人生を生きる権利が私たちにはあるのよ。自分の人生を他人に任せっきりでは、だめなの。自分の足で1歩1歩歩いていくの。ゆっくりでもいい自分だけの人生の道を切り開いてあるいていくの。自分に対して優しく、そして思いやりを持って接していくの。自分を信頼して愛してあげて・・・それができない人が、他人に優しくしたり思いやりの心をおくったり信頼してあげることなんてできないのよ。まずは自分を大切にしてあげなきゃ。」
なんだか今日のあいちゃんは、とても気合が入った話方をする。かなり真剣だ。こんなあいちゃんは見たことがない。
「自分を大切にする?」
「そうよ。自分に対して、そういったことができない人が、どうやって他人にそれらのことをしてあげられる?冷静に考えれば分かるはずよ」
「なるほど!だから僕に自分を褒めたり自信をつけるためにアドバイスしてくれたんだね。」
「うん。自分を信頼してあげたりするためには、まず自分に自信を持ってほしいと思ったから・・・。自信が持てない人が自分のことを信頼したりすることなんてできないはずよ。そんな人が自分を大切にできるわけない!」
「そうだね」
僕は今まで色々な課題をやってきた。考えてみれば、自分の人生は誰のためでも自分のためにあるわけで、他人のせいにしたり世の中にせいにしなくても、自分の気持ちというか心がけしだいで、どうにでもなるのかなと思った。そう思うと、今どんな環境であろうと僕が望む未来を、これからは生きることができるということが分かってきた。これもあいちゃんのおかげだ。それにしても、夢の中のおじいさんは、誰だったんだろう??
しばらく考えてみた。なんだか昔から知っているような知らないような・・でも赤の他人とは思えなくて・・・。そのときふと、おじいさんが話してくれたお金のことを思い出した。「お金そのものが人を不幸にも幸福にもするわけではない。それを扱う人間によって、それは代わってくるのだよ。」以前あいちゃんがお金のことをどんなものだと思ってる?って、聞いてきたけどこのことを僕に言いたかったのかな?
たしかに、おじいさんの言っていたことはそういうことかもしれない。だって例えて言えばお金をバイクと置き換えて考えてみよう。バイクだって、走りを楽しむための道具だ。
でも、そんなバイクも乗り方を心得ていないと危険な乗り物になってしまう。しかし乗りこなすことができるようになればよりいっそう走るのが楽しくなる。そうなると道具というよりも友達みたいな存在になるだろう。お金も同じかもしれない。お金の使い方や守り方、増やし方などお金のことがきちんと分かれば、お金も自分の人生を楽しむ素晴らしい道具になる。
お金のことをしっかりと理解してる人にとってお金は友達なんだ。そうだ。きっとそうに違いない。あいちゃんはどう思っているのだろう?聞いてみよう。
次回 12章 誕生日プレゼントは心の栄養?
お楽しみに^^