はいどうもー。
昨日からこっちはものすごい雨が降ってた。今日はそうでもないかな。
夕方から仕事なんで、今日は午前中に集中して書いてみた次第。
以下、このまえのお話の続きです。ご興味持っていただけた方はどうぞ。
↓↓↓
マヤが生徒の父親たちと関係を持つようになったのは、あるひとりの生徒がきっかけだった。入社して1年目の冬、ちょうど社長からの度を越したセクハラが始まり、教室では講習準備で寝る間もないほど忙しい日々が続き、その上にまだ生徒と保護者の面倒をみなければならず、マヤは極限のストレスを抱えていた。
教室には小学生から高校生まで様々な学年の子供たちが通っている。生徒ひとりに対して科目ごとに先生がひとりついて指導をする、いわゆる個別指導の形態で、イメージとしては家庭教師をそのまま教室に移動させたようなものである。教室長のマヤはすべての生徒の学習状況と、講師の指導方法、また生徒と講師の相性に至るまでしっかりと把握しておかなければならない。生徒の様子を見ながら、必要に応じて講師と相談するだけでもかなりの時間を取られてしまう。
そのなかにひとりだけ小学校1年生の女の子がいた。彼女、高峰ユリアは勉強はあまり得意そうでは無かったが、ゆっくりと指導をしていくうちに学校で習う程度の学習内容は理解できるようになった。いつも子供らしく元気いっぱいで無邪気に笑い、大きな瞳をぱちぱちと瞬きさせて授業を受ける様子は本当に可愛らしく、マヤも講師たちも、ユリアに関わる皆が親や兄弟になったような気持ちで接していた。
ある日の授業中、彼女を担当していた女性講師がマヤのところに戸惑った表情でやってきた。何事かと事情を聞くと『ユリアちゃんの背中に大きな痣がある』という。
「授業をしていても、ずっと『背中が痛い』って後ろばかり気にしているんです……それで、あまりにも何度も言うものですから、ワンピースのファスナーがひっかかったりしているのかと思って少し服の中をのぞいてみたらすごく腫れていて……」
女性講師の言葉には、誰かにやられたのではないか、というようなニュアンスが含まれていた。心配になり、授業を中断させてユリアを事務室に呼んだ。この日のユリアも、いつものように髪を綺麗に編んでもらい、ひらひらとしたピンクのワンピースを身に着けていた。マヤはできるだけ優しく聞こえる声を出し、ユリアの頭を撫でた。
「ユリアちゃん、ごめんね、お勉強してるときに。ゆうこ先生に聞いたんだけど、ユリアちゃん、お背中がちょっと痛いのかな? 大丈夫?」
「うん、だいじょうぶ。ユリアね、ママのジャマしちゃったの。それで、ママがキイッって怒ったから、ポットのね、お湯ね、バシャーッて。ユリアがいい子じゃないからって。そしたらね、ママ泣いちゃってね、それから知らないおじさんがきてね、ママ、だっこされてたの」
ポットのお湯、の部分でユリアの痣が火傷の跡だとわかった。きちんとケアされた様子は無い。範囲は狭いが、確実に消えない跡が残りそうに見えた。知らないおじさん、のくだりはおそらく不倫相手だろう。ユリアの母親が浮気をしているらしいというのは、すでに複数の母親たちから噂話として聞いていた。不倫でも浮気でも勝手にすればいいが、子供に火傷を負わせたのを放置して男に走るというのは、さすがにその神経がわからなかった。頭に血が上りそうになるのを堪える。
「そう……ママはもうおうちにいるかな? ちょっとお電話してみるね……」
「ママ、おうちにいないと思う。えっとね、これでお電話したらママが出るの」
ユリアが首からぶらさげた携帯電話を差し出す。履歴に残っている番号はふたつしかなく、どちらかが母親で、どちらかが父親の番号らしい。片方の番号にかけてもコール音が鳴るだけで誰も出ず、もうひとつの番号にかけると父親らしき男が出た。
『もしもし?ユリアか?』
「あ、お忙しいところ申し訳ございません。わたくしユリアちゃんが通われている塾の水上と申しますけれども……」
『ああ、塾の先生ですか。いつもユリアがお世話になっております。どうかされましたか?』
「ええ、あの……ユリアちゃんが、その、背中が痛いとおっしゃって……とても授業を受けられるような状態ではなさそうなので、ご連絡させていただきました。もしよろしければお母様と少しお話させていただければと思ったのですが、お電話に出ていただけなくて……」
電話のむこうで息をのむ気配とわずかな沈黙があった。ガタガタという音の後、父親は『すぐに教室に向かいますので、もう少しの間だけユリアをお願いします』と言って電話を切った。
「ママ、来てくれるの?」
ユリアが不安そうな目で見上げる。マヤはもう一度ゆっくりとユリアの髪を撫でた。
「もうすぐパパがお迎えに来てくれるからね。ちょっとだけ先生と一緒に待っていようね」
そう言うと、ユリアは少し安心したように笑顔になり、いつものように学校であった面白いことや好きなテレビ番組の話を始めた。ユリアを担当してた講師には次の担当授業まで休憩してもらうように伝え、父親を待ちながらひたすらユリアの話を聞き続けた。30分ほど過ぎた頃、教室のドアが勢いよく開いて父親が駆けつけた。仕立ての良いスーツをピシリと着こなし、いかにもビジネスマンといった雰囲気は、子供の父親というのにあまり似つかわしくない感じがした。
「ああ、ユリア……こっちにおいで。先生、どうもお手数をおかけして申し訳ありません。最近その……家の方でいろいろとありまして……」
父親は跳びはねるようにして抱きついてきたユリアを軽々と抱きあげ、まわりの視線を気にしながら言葉を濁した。マヤは軽くうなずいて、小さな声で父親に応えた。
「ええ、お話になりにくいことは無理におっしゃっていただかなくて大丈夫です。ただ、ユリアちゃんの背中、本当に痛そうなので病院に連れて行ってあげてください」
「わかりました。私も供の背中の件はさっきいただいたお電話で初めて知ったような次第で……とりあえず病院に連れて行きます。また後ほど詳しいお話をさせていただきたいのですが、お時間をとっていただけますか?」
「もちろんです。授業の後も午前0時ごろまでは教室にいることが多いので、事前にお電話さえいただければいつでもお話を伺います」
マヤは教室の電話番号が書かれた名刺を差し出し、父親からは会社名の入った名刺を受取った。高峰政史、○△商事 代表取締役……そこに書かれた内容を無意識に目で追う。父親は深々と頭を下げて、ユリアを抱きあげたまま教室を出て行った。
その日の最終授業が終わり、残っていた講師たちも全員が帰った後、教室の電話が鳴った。低く落ちついた声。ユリアの父親からだった。
『もしもし、高峰です。夕方はどうもご心配をおかけしてしまいまして……遅い時間になってしまいましたが、いまから教室にお伺いしてもよろしいでしょうか』
柱に取りつけられた時計の示す時刻は23時。本来なら懇談業務の時間外だが、もちろんマヤは断らなかった。
「はい、もちろんです。ユリアちゃんの件、ですね。わたしも気になっておりましたので、ぜひお話をお聞かせいただければと思っていたので……このまま教室でお待ちしております」
『わかりました。あと10分で行けると思います。それでは』
やや早口の電話が切れた後、高峰は計ったようにきっちり10分後にやって来た。今度はスーツ姿ではなく、ジーンズに黒のセーター、足元はスニーカーというラフな格好だった。誰もいない教室の中で、マヤは面談用のテーブルをはさんで高峰と向かい合う。静まり返った教室に、コチコチと時計の秒針が進む音だけが響く。
「すみません、先生。こんな遅くに……唐突ですが、さっそく用件に入らせていただいても?」
「ええ、もちろんです。病院に行かれたんですよね? ユリアちゃんの傷、いかがでしたか?」
「はい、お恥ずかしい話ですが、医者にずいぶん叱られました。どうして火傷を負った直後に病院に連れて来なかったのかと……手当はしてもらいましたが、やはり大きく火傷の跡が残ってしまうようです。成長につれて多少は薄くなっていくかもしれないですが、ある程度体が成長した段階で皮膚の形成手術を受けさせようと考えています。女の子ですのでね……いや、僕がすぐに気付いていれば……」
「そうですか……」
高峰がいたたまれない様子で目を伏せる。テーブルの上で組まれた腕が震えているのがわかった。マヤには子供はまだいないが、父親にとっては娘という存在は特別に可愛いものだという。高峰の心の痛みが伝わってくるような気がした。
「あの、失礼ですが、ユリアちゃんのお母様は……?」
「ああ、そうなんです。そのことを先生にもお伝えしておこうと思いまして……実は少し前から妻の様子がおかしくて、あんなに可愛がっていたはずのユリアに突然辛く当たるようになってしまって……」
仕事の都合でどうしても家にいる時間が短くなり、子供の世話や教育に関してはこれまでほとんど母親に任せきりだったという。話の様子からいくと、高峰は妻の浮気に関しては知らないようだった。夫のいない間に他の男を引っ張り込みたい妻にとって、ユリアの存在は邪魔でしかないのだろう。その結果、虐待につながっていたとしても不思議はない。でも、そんなことをマヤの口から言うわけにもいかず、マヤは高峰の話の聞き役に徹した。
話は午前0時を過ぎても終わらず、やっと話の区切りがついたのは午前2時ちかくになってのことだった。結局、高峰の中ではしばらくユリアの安全のために近所に暮らす祖母に毎日様子を見に行ってもらうことにしよう、という結論に達したらしい。高峰は時間を忘れて話し続けた非礼を詫び、マヤを車で自宅まで送り届けたいと言い出した。保護者と教室外で一緒に行動することは基本的には禁じられているので、マヤは固辞したが、もうすでに終電も無くなった後のことで、高峰に押し切られる形で車に乗せられた。
車に詳しくないマヤでもわかる高級車、車内にはまだ新車の匂いが残っていた。助手席に乗ると、温まっていくシートが疲れた体を癒してくれた。慣れた様子で高峰が車を操作し、真夜中の道路に滑り出していく。道路の凹凸は微塵も伝わらず、乗り心地は快適そのものだった。
「このシート、すごくほかほかして気持ちいいですね。床暖房みたい」
「あはは、床暖房って、面白い表現をされるんですね。このシート、冬は重宝します。いやあ、本当に今日は申し訳なかった。ユリアのことで、またこれからも相談させていただいてよろしいですか?」
「ええ、わたしでよければ。こちらこそ、送っていただいて返って申し訳ないと思っています」
マヤの自宅まで20分ほどの時間、高峰はユリアの話から自分の仕事の話などを巧みに織り交ぜてユーモアたっぷりなおしゃべりでマヤを楽しませた。さっきまでの深刻さから解放され、マヤもすっかり気分が良くなってまるで昔からの友人と話しているような気安さを感じた。
その日から、高峰は3日に一度のペースで深夜に教室を訪れるようになり、そのたびにマヤを自宅まで送り届けた。そして何度目かの帰り道、いつものように車を降りようとするマヤの腕を高峰が引き寄せ、見つめ合い、どちらからともなく唇を重ねた。罪悪感は無かった。むしろ旦那と子供をないがしろにして遊び呆ける高峰の妻に、形を変えた復讐をしているようで興奮した。高峰の腕が背中にまわされ、マヤもまた自分の手を高峰の頬にそえた。低く押し殺したような声で高峰が囁く。
「君が欲しい」
「……誰にでもそんなことを?」
「違う、君にだけだよ」
「奥さんがいるのに?」
「もう僕たちの夫婦生活は壊れている。……僕が相手じゃ、嫌かい?」
「嫌じゃないから、困るの」
予定調和のような甘い言葉の応酬。高峰はマヤをホテルに誘い、マヤはそれを受け入れた。平日の夜、空室のあるホテルを探すのに苦労は無かった。部屋に着くと高峰はいきなりマヤを背中から抱き締めて首筋に唇を寄せた。
「あっ……」
目を閉じる。これ以上ないほど傲慢な態度でクレームをつけてくる高峰の妻の顔がよぎる。喚き散らす声が耳の奥で蘇る。いい気味……あなたのご主人、今こんなにわたしのことを欲しがっているわ……
「綺麗だよ、先生……」
「先生はやめて、マヤって呼んで」
「ふふ、可愛いね、マヤ……」
シャツのボタンが外され、ブラの隙間から素肌に触れられると、それだけで全身が震えた。尻に押し付けられた高峰の男の部分が熱く猛っているのがわかる。高峰は性急にマヤのスカートを捲りあげ、パンティを引き下ろした。両足を開かされ、足の間に指を入れられる。じんじんと痺れるその部分に、高峰の勃起したペニスの尖端がマヤの内部に潜り込んでくる。
「あああっ……そんな、いきなり……」
「ごめんね、あんまり可愛いから我慢できないよ……ほら、君の方もこんなにぐっしょり濡れてる……力を抜いて……」
高峰のそれは社長のものほど大きくはなかった。それでも、正面の鏡に映る自分の姿……高峰に背後から腰を抱き寄せられて挿入される姿を見ると、それだけで絶頂に達しそうなほどの快感が押し寄せてくる。ぐっ、ぐっ、と高峰が奥を責めてくると、それに合わせて恥ずかしい声が出てしまう。
「あんっ……んっ、んんっ……すごい、気持ちいいっ……」
「僕も気持ちいいよ、マヤがきゅうって締めつけてくるから……いいの? こういうの好きなのかな?」
「言わないで……恥ずかしいの……んっ、あぁんっ…」
「恥ずかしい? そうだよね、先生、僕とこんなことしちゃって……ほら、おっぱいもあそこも見えちゃってるよ? こんなエロい体してるなんて知らなかったなあ……」
「せ、先生って……言っちゃ、だめ……」
高峰の手が乳房を揉む。マヤの反応を見て、高峰がペニスを引き抜き、マヤをベッドに押し倒す。
「悪い先生だね……ぐちょぐちょにあそこ濡らして、乳首もこんなに尖らせて……このおっぱい舐めたらどうなっちゃうのかなぁ、先生、教えてよ……」
「し、知ってるくせに……ああっ……」
乳房にまんべんなくキスをした後、乳首をくわえられる。ねっとりと舌でしゃぶられると、もうそれだけで力が入らなくなる。舌で愛撫を続けながら、今度は正面から高峰が挿入してくる。一番奥まで貫き、少し引いてまた突き上げる。もっともっと奥まで欲しくて、マヤは腰を大きく揺らして高峰を求め、そうすると高峰は焦らすように腰を引く。
「やんっ……抜いちゃ、だめぇ……」
「そんなに欲しい? いやらしい先生だな……じゃあ、僕のお願い聞いてくれたら、いっぱい突いてあげるよ」
「お、お願い……?」
高峰はマヤの中に指を入れ、膣内を掻きまわすようにしながら悪戯っぽく笑った。敏感になったそこを弄られると、燃えあがるように体が熱くなる。まだ若いマヤは性欲をコントロールする術もなく、身悶えしながら声をあげた。
「あ、あああっ……欲しい。欲しいの……なんでも、言うこと聞くから……」
「ほんとに? じゃあ先生……マヤ、これからはときどきこうしてホテルに誘ってもいいかな?」
「んっ……いい、いいわ……、いっぱい、可愛がって……」
「いい子だ。ああ、すごいよ、もうシーツまでぐっしょりだ……」
両足を大きく開かせて、その間に高峰が顔を埋める。ぴちゃぴちゃと粘ついた音が聞こえてくる。舌で優しくクリトリスの包皮を剥かれ、唇をつけて吸い上げられ、マヤは絶頂に達した。
「ああああああああっ、あっ、いく、いっちゃうううううっ……!」
「いいよ、いっちゃって。ここも弱いんだね……可愛いよ……」
ぐったりとした体に高峰が再び入ってくる。それを受け入れた瞬間、またマヤの内側が燃えあがる。終わりの無い快感、狂おしい悦び。ふたりの狂宴は明け方近くまで続いた。
それ以来、高峰とマヤは表面上は以前と変わらない様子で過ごしながら、真夜中に人目を忍んで秘めやかな時間を過ごすようになった。高峰は今すぐに家庭を壊すつもりは無いようだったし、マヤも高峰を独占したいなどとはまったく思わなかった。
この件を境に、マヤは自分に好意を寄せてくる保護者たちと積極的に関係を持つようになった。彼らは一様に年上で落ちつきがあり、潤沢な金と大切な家庭を持っていた。ただちょっと、あまり危険の無い、身元の確かな若い女の子と遊んでみたいだけなのだ。子供の先生、というマヤの立場も彼らの興奮を刺激する材料になり得るようだった。彼らとマヤはお互いに秘密を共有し、無理のない程度に会っておしゃべりをし、酒を飲み、ホテルへ行った。
マヤは彼らの後ろに、常に生徒の母親の姿を見ていた。身勝手なわがままをぶつけてくる母親たち。自分たちの都合しか考えない馬鹿親ども。父親たちに抱かれながら、マヤは自分の抱かれている姿を母親たちに見せつけているような気持ちでいた。
どう? あんたたちのご主人、いまこんなに気持ち良さそうに喘いでいるわ。もうしばらくご無沙汰なんじゃないの? ぼんやりしている間に、大事なものを根こそぎ持っていかれても知らないわよ……
そういう時間を過ごすようになってから、マヤの鬱屈したストレスはずいぶんと軽減されたようで、仕事そのものも以前よりずっと楽しくこなすことができた。また、そうしてマヤと関係を持った父親たちは、負い目があるためか生徒の授業数を増やしてくれたり、特別講習を何十回も受けてくれたりしたので、教室の売り上げも飛躍的に伸びた。社長はマヤの教室に関しては売上目標を厳しく言わなかったが、それでも数字が伸びることに関しては嬉しいらしく、会議のときに名指しで誉めてくれたりもするようになった。
それはそれで、ほかの社員たちの嫉妬をさらに煽る結果になるので、一概に喜ぶこともできなかったのだけれど。
また、性的な満足は容姿にも滲み出てくるものなのか、アルバイト講師の学生達にも「先生、なんだか綺麗になりましたね」と声をかけられることも増えた。多くは女性の講師たちからで、真面目な顔で美容法を訪ねられたりもしたが、そのたびにマヤは「何にもしていないわよ」と笑ってごまかした。
アルバイト講師の中には社会人も大学院生もいる。様々な年齢の講師たちと授業後におしゃべりをするのもマヤの楽しみのひとつだった。年上の講師ほどプライドが高く、丁寧に接してやらないと後々扱いが難しくなる。逆に学生の講師には、あまり下手に出過ぎるとこちらの要望をきいてもらえなくなる。そのさじ加減が難しい。
授業後のおしゃべりに、最近わりと毎回のように最後まで残っている講師がいる。久保田大輔、24歳。理系の大学院生で研究に忙しく、最終授業の時間しかアルバイトに来れずにいるが、大学受験レベルの問題であれば何の科目でも対応できるので重宝している。
見た目は色白ですこしぽっちゃりとしていて、お世辞にも「カッコいい」と言われるタイプではない。自分でも「年齢イコール彼女いない歴なんです」と、それをネタにして笑いを取るようなところがある。頭の回転が速く、教室の運営にも非常に協力的で、話をしていても面白いので、彼とのおしゃべりはマヤにとってやすらぎの時間でもあった。
「久保田くんのお話って、ほんといつも面白いよね。社会に出たら、きっとモテると思うよ」
そんなふうにマヤが言うと、顔を真っ赤にするのも可愛らしい。
「い、いえ、僕、ほんとに女の人と話すの苦手なんです。恥ずかしいんだけど、研究室が休みのときでもパソコンとかゲームばっかりやってて……」
「あはは、そういえば高2の佐伯くんが、久保田先生にゲームの攻略法教えてもらったとか言って喜んでたよ。まさか授業中にそんな話してるんじゃないでしょうね?」
「ち、ちがいます、すみません。休み時間にちょっとだけ……」
「そう、いいわよ、そんなに謝らなくて。でも久保田くん、わたしと話すときはすごくおしゃべりよね。女の人が苦手って、信じられないな」
「それは……なんていうか、先生が話しやすいんです。あの……特別、っていうか、その……いえ、なんでもないです」
身長180センチの体を丸めて恥ずかしそうにするのがおかしくて、マヤはお腹を抱えて笑った。最近教室を出るのが遅くなるのは、この久保田とのおしゃべりも原因の一つかもしれない。彼に対しては性的な気持ちは一切湧かず、出来の良い弟のような存在というのがぴったり当てはまる。
こんなふうだったから、社長のことさえなければ、少々キツくともこの仕事を辞めたいとは思わなかった。気の合う仲間たちと、割りきった関係を続けられる父親たちがいれば、生徒や母親たちの身勝手な発言も、先輩達からの嫌みも耐えられる。
今日もマヤは父親たちのひとりと仕事の後に会う約束をし、その前に授業後の打ち合わせを兼ねて久保田とのおしゃべりを楽しんでいた。今日の話は、久保田が友人に女の子を紹介されたけど、どうにも自分と合わないような気がしてに困っている、というような内容だった。
「まだ会ってないんでしょ? 久保田くんって早く結婚したい派だって言ってたじゃない。チャンスかもよ、会うだけでも会ってみれば」
「えー、でもですね、趣味がテニスとか、スポーツ観戦とからしいんですよ。僕、前も言いましたけど完全にインドアな人なんで、たぶん合わないと思うんですよね……ハァ、面と向かってフラれるのって傷つきそうだしなあ……」
「あはは、いいじゃない、当たって砕けろ、よ。めちゃめちゃ可愛い子だったらどうするの?絶対あとで後悔するよ」
「もう、先生、他人事だと思って面白がってるでしょ? あー、憂鬱だなぁ……」
「ちょっと、もっと自信持っていいと思うよ。そうね、わたしだったら久保田くんとデートしたら楽しいだろうなって思うもん。ほんと、ほんと」
「ええっ、マジですか? じゃあ今度先生が僕と……」
冗談よ、と言おうとしたところで唐突に教室のドアが開いた。もう真夜中で、生徒も保護者も来るような時間では無い。ぽかんとした顔でふたりがそろってドアの方へ目を向けると、そこには薄笑いを浮かべた社長の姿があった。
(つづく)
昨日からこっちはものすごい雨が降ってた。今日はそうでもないかな。
夕方から仕事なんで、今日は午前中に集中して書いてみた次第。
以下、このまえのお話の続きです。ご興味持っていただけた方はどうぞ。
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マヤが生徒の父親たちと関係を持つようになったのは、あるひとりの生徒がきっかけだった。入社して1年目の冬、ちょうど社長からの度を越したセクハラが始まり、教室では講習準備で寝る間もないほど忙しい日々が続き、その上にまだ生徒と保護者の面倒をみなければならず、マヤは極限のストレスを抱えていた。
教室には小学生から高校生まで様々な学年の子供たちが通っている。生徒ひとりに対して科目ごとに先生がひとりついて指導をする、いわゆる個別指導の形態で、イメージとしては家庭教師をそのまま教室に移動させたようなものである。教室長のマヤはすべての生徒の学習状況と、講師の指導方法、また生徒と講師の相性に至るまでしっかりと把握しておかなければならない。生徒の様子を見ながら、必要に応じて講師と相談するだけでもかなりの時間を取られてしまう。
そのなかにひとりだけ小学校1年生の女の子がいた。彼女、高峰ユリアは勉強はあまり得意そうでは無かったが、ゆっくりと指導をしていくうちに学校で習う程度の学習内容は理解できるようになった。いつも子供らしく元気いっぱいで無邪気に笑い、大きな瞳をぱちぱちと瞬きさせて授業を受ける様子は本当に可愛らしく、マヤも講師たちも、ユリアに関わる皆が親や兄弟になったような気持ちで接していた。
ある日の授業中、彼女を担当していた女性講師がマヤのところに戸惑った表情でやってきた。何事かと事情を聞くと『ユリアちゃんの背中に大きな痣がある』という。
「授業をしていても、ずっと『背中が痛い』って後ろばかり気にしているんです……それで、あまりにも何度も言うものですから、ワンピースのファスナーがひっかかったりしているのかと思って少し服の中をのぞいてみたらすごく腫れていて……」
女性講師の言葉には、誰かにやられたのではないか、というようなニュアンスが含まれていた。心配になり、授業を中断させてユリアを事務室に呼んだ。この日のユリアも、いつものように髪を綺麗に編んでもらい、ひらひらとしたピンクのワンピースを身に着けていた。マヤはできるだけ優しく聞こえる声を出し、ユリアの頭を撫でた。
「ユリアちゃん、ごめんね、お勉強してるときに。ゆうこ先生に聞いたんだけど、ユリアちゃん、お背中がちょっと痛いのかな? 大丈夫?」
「うん、だいじょうぶ。ユリアね、ママのジャマしちゃったの。それで、ママがキイッって怒ったから、ポットのね、お湯ね、バシャーッて。ユリアがいい子じゃないからって。そしたらね、ママ泣いちゃってね、それから知らないおじさんがきてね、ママ、だっこされてたの」
ポットのお湯、の部分でユリアの痣が火傷の跡だとわかった。きちんとケアされた様子は無い。範囲は狭いが、確実に消えない跡が残りそうに見えた。知らないおじさん、のくだりはおそらく不倫相手だろう。ユリアの母親が浮気をしているらしいというのは、すでに複数の母親たちから噂話として聞いていた。不倫でも浮気でも勝手にすればいいが、子供に火傷を負わせたのを放置して男に走るというのは、さすがにその神経がわからなかった。頭に血が上りそうになるのを堪える。
「そう……ママはもうおうちにいるかな? ちょっとお電話してみるね……」
「ママ、おうちにいないと思う。えっとね、これでお電話したらママが出るの」
ユリアが首からぶらさげた携帯電話を差し出す。履歴に残っている番号はふたつしかなく、どちらかが母親で、どちらかが父親の番号らしい。片方の番号にかけてもコール音が鳴るだけで誰も出ず、もうひとつの番号にかけると父親らしき男が出た。
『もしもし?ユリアか?』
「あ、お忙しいところ申し訳ございません。わたくしユリアちゃんが通われている塾の水上と申しますけれども……」
『ああ、塾の先生ですか。いつもユリアがお世話になっております。どうかされましたか?』
「ええ、あの……ユリアちゃんが、その、背中が痛いとおっしゃって……とても授業を受けられるような状態ではなさそうなので、ご連絡させていただきました。もしよろしければお母様と少しお話させていただければと思ったのですが、お電話に出ていただけなくて……」
電話のむこうで息をのむ気配とわずかな沈黙があった。ガタガタという音の後、父親は『すぐに教室に向かいますので、もう少しの間だけユリアをお願いします』と言って電話を切った。
「ママ、来てくれるの?」
ユリアが不安そうな目で見上げる。マヤはもう一度ゆっくりとユリアの髪を撫でた。
「もうすぐパパがお迎えに来てくれるからね。ちょっとだけ先生と一緒に待っていようね」
そう言うと、ユリアは少し安心したように笑顔になり、いつものように学校であった面白いことや好きなテレビ番組の話を始めた。ユリアを担当してた講師には次の担当授業まで休憩してもらうように伝え、父親を待ちながらひたすらユリアの話を聞き続けた。30分ほど過ぎた頃、教室のドアが勢いよく開いて父親が駆けつけた。仕立ての良いスーツをピシリと着こなし、いかにもビジネスマンといった雰囲気は、子供の父親というのにあまり似つかわしくない感じがした。
「ああ、ユリア……こっちにおいで。先生、どうもお手数をおかけして申し訳ありません。最近その……家の方でいろいろとありまして……」
父親は跳びはねるようにして抱きついてきたユリアを軽々と抱きあげ、まわりの視線を気にしながら言葉を濁した。マヤは軽くうなずいて、小さな声で父親に応えた。
「ええ、お話になりにくいことは無理におっしゃっていただかなくて大丈夫です。ただ、ユリアちゃんの背中、本当に痛そうなので病院に連れて行ってあげてください」
「わかりました。私も供の背中の件はさっきいただいたお電話で初めて知ったような次第で……とりあえず病院に連れて行きます。また後ほど詳しいお話をさせていただきたいのですが、お時間をとっていただけますか?」
「もちろんです。授業の後も午前0時ごろまでは教室にいることが多いので、事前にお電話さえいただければいつでもお話を伺います」
マヤは教室の電話番号が書かれた名刺を差し出し、父親からは会社名の入った名刺を受取った。高峰政史、○△商事 代表取締役……そこに書かれた内容を無意識に目で追う。父親は深々と頭を下げて、ユリアを抱きあげたまま教室を出て行った。
その日の最終授業が終わり、残っていた講師たちも全員が帰った後、教室の電話が鳴った。低く落ちついた声。ユリアの父親からだった。
『もしもし、高峰です。夕方はどうもご心配をおかけしてしまいまして……遅い時間になってしまいましたが、いまから教室にお伺いしてもよろしいでしょうか』
柱に取りつけられた時計の示す時刻は23時。本来なら懇談業務の時間外だが、もちろんマヤは断らなかった。
「はい、もちろんです。ユリアちゃんの件、ですね。わたしも気になっておりましたので、ぜひお話をお聞かせいただければと思っていたので……このまま教室でお待ちしております」
『わかりました。あと10分で行けると思います。それでは』
やや早口の電話が切れた後、高峰は計ったようにきっちり10分後にやって来た。今度はスーツ姿ではなく、ジーンズに黒のセーター、足元はスニーカーというラフな格好だった。誰もいない教室の中で、マヤは面談用のテーブルをはさんで高峰と向かい合う。静まり返った教室に、コチコチと時計の秒針が進む音だけが響く。
「すみません、先生。こんな遅くに……唐突ですが、さっそく用件に入らせていただいても?」
「ええ、もちろんです。病院に行かれたんですよね? ユリアちゃんの傷、いかがでしたか?」
「はい、お恥ずかしい話ですが、医者にずいぶん叱られました。どうして火傷を負った直後に病院に連れて来なかったのかと……手当はしてもらいましたが、やはり大きく火傷の跡が残ってしまうようです。成長につれて多少は薄くなっていくかもしれないですが、ある程度体が成長した段階で皮膚の形成手術を受けさせようと考えています。女の子ですのでね……いや、僕がすぐに気付いていれば……」
「そうですか……」
高峰がいたたまれない様子で目を伏せる。テーブルの上で組まれた腕が震えているのがわかった。マヤには子供はまだいないが、父親にとっては娘という存在は特別に可愛いものだという。高峰の心の痛みが伝わってくるような気がした。
「あの、失礼ですが、ユリアちゃんのお母様は……?」
「ああ、そうなんです。そのことを先生にもお伝えしておこうと思いまして……実は少し前から妻の様子がおかしくて、あんなに可愛がっていたはずのユリアに突然辛く当たるようになってしまって……」
仕事の都合でどうしても家にいる時間が短くなり、子供の世話や教育に関してはこれまでほとんど母親に任せきりだったという。話の様子からいくと、高峰は妻の浮気に関しては知らないようだった。夫のいない間に他の男を引っ張り込みたい妻にとって、ユリアの存在は邪魔でしかないのだろう。その結果、虐待につながっていたとしても不思議はない。でも、そんなことをマヤの口から言うわけにもいかず、マヤは高峰の話の聞き役に徹した。
話は午前0時を過ぎても終わらず、やっと話の区切りがついたのは午前2時ちかくになってのことだった。結局、高峰の中ではしばらくユリアの安全のために近所に暮らす祖母に毎日様子を見に行ってもらうことにしよう、という結論に達したらしい。高峰は時間を忘れて話し続けた非礼を詫び、マヤを車で自宅まで送り届けたいと言い出した。保護者と教室外で一緒に行動することは基本的には禁じられているので、マヤは固辞したが、もうすでに終電も無くなった後のことで、高峰に押し切られる形で車に乗せられた。
車に詳しくないマヤでもわかる高級車、車内にはまだ新車の匂いが残っていた。助手席に乗ると、温まっていくシートが疲れた体を癒してくれた。慣れた様子で高峰が車を操作し、真夜中の道路に滑り出していく。道路の凹凸は微塵も伝わらず、乗り心地は快適そのものだった。
「このシート、すごくほかほかして気持ちいいですね。床暖房みたい」
「あはは、床暖房って、面白い表現をされるんですね。このシート、冬は重宝します。いやあ、本当に今日は申し訳なかった。ユリアのことで、またこれからも相談させていただいてよろしいですか?」
「ええ、わたしでよければ。こちらこそ、送っていただいて返って申し訳ないと思っています」
マヤの自宅まで20分ほどの時間、高峰はユリアの話から自分の仕事の話などを巧みに織り交ぜてユーモアたっぷりなおしゃべりでマヤを楽しませた。さっきまでの深刻さから解放され、マヤもすっかり気分が良くなってまるで昔からの友人と話しているような気安さを感じた。
その日から、高峰は3日に一度のペースで深夜に教室を訪れるようになり、そのたびにマヤを自宅まで送り届けた。そして何度目かの帰り道、いつものように車を降りようとするマヤの腕を高峰が引き寄せ、見つめ合い、どちらからともなく唇を重ねた。罪悪感は無かった。むしろ旦那と子供をないがしろにして遊び呆ける高峰の妻に、形を変えた復讐をしているようで興奮した。高峰の腕が背中にまわされ、マヤもまた自分の手を高峰の頬にそえた。低く押し殺したような声で高峰が囁く。
「君が欲しい」
「……誰にでもそんなことを?」
「違う、君にだけだよ」
「奥さんがいるのに?」
「もう僕たちの夫婦生活は壊れている。……僕が相手じゃ、嫌かい?」
「嫌じゃないから、困るの」
予定調和のような甘い言葉の応酬。高峰はマヤをホテルに誘い、マヤはそれを受け入れた。平日の夜、空室のあるホテルを探すのに苦労は無かった。部屋に着くと高峰はいきなりマヤを背中から抱き締めて首筋に唇を寄せた。
「あっ……」
目を閉じる。これ以上ないほど傲慢な態度でクレームをつけてくる高峰の妻の顔がよぎる。喚き散らす声が耳の奥で蘇る。いい気味……あなたのご主人、今こんなにわたしのことを欲しがっているわ……
「綺麗だよ、先生……」
「先生はやめて、マヤって呼んで」
「ふふ、可愛いね、マヤ……」
シャツのボタンが外され、ブラの隙間から素肌に触れられると、それだけで全身が震えた。尻に押し付けられた高峰の男の部分が熱く猛っているのがわかる。高峰は性急にマヤのスカートを捲りあげ、パンティを引き下ろした。両足を開かされ、足の間に指を入れられる。じんじんと痺れるその部分に、高峰の勃起したペニスの尖端がマヤの内部に潜り込んでくる。
「あああっ……そんな、いきなり……」
「ごめんね、あんまり可愛いから我慢できないよ……ほら、君の方もこんなにぐっしょり濡れてる……力を抜いて……」
高峰のそれは社長のものほど大きくはなかった。それでも、正面の鏡に映る自分の姿……高峰に背後から腰を抱き寄せられて挿入される姿を見ると、それだけで絶頂に達しそうなほどの快感が押し寄せてくる。ぐっ、ぐっ、と高峰が奥を責めてくると、それに合わせて恥ずかしい声が出てしまう。
「あんっ……んっ、んんっ……すごい、気持ちいいっ……」
「僕も気持ちいいよ、マヤがきゅうって締めつけてくるから……いいの? こういうの好きなのかな?」
「言わないで……恥ずかしいの……んっ、あぁんっ…」
「恥ずかしい? そうだよね、先生、僕とこんなことしちゃって……ほら、おっぱいもあそこも見えちゃってるよ? こんなエロい体してるなんて知らなかったなあ……」
「せ、先生って……言っちゃ、だめ……」
高峰の手が乳房を揉む。マヤの反応を見て、高峰がペニスを引き抜き、マヤをベッドに押し倒す。
「悪い先生だね……ぐちょぐちょにあそこ濡らして、乳首もこんなに尖らせて……このおっぱい舐めたらどうなっちゃうのかなぁ、先生、教えてよ……」
「し、知ってるくせに……ああっ……」
乳房にまんべんなくキスをした後、乳首をくわえられる。ねっとりと舌でしゃぶられると、もうそれだけで力が入らなくなる。舌で愛撫を続けながら、今度は正面から高峰が挿入してくる。一番奥まで貫き、少し引いてまた突き上げる。もっともっと奥まで欲しくて、マヤは腰を大きく揺らして高峰を求め、そうすると高峰は焦らすように腰を引く。
「やんっ……抜いちゃ、だめぇ……」
「そんなに欲しい? いやらしい先生だな……じゃあ、僕のお願い聞いてくれたら、いっぱい突いてあげるよ」
「お、お願い……?」
高峰はマヤの中に指を入れ、膣内を掻きまわすようにしながら悪戯っぽく笑った。敏感になったそこを弄られると、燃えあがるように体が熱くなる。まだ若いマヤは性欲をコントロールする術もなく、身悶えしながら声をあげた。
「あ、あああっ……欲しい。欲しいの……なんでも、言うこと聞くから……」
「ほんとに? じゃあ先生……マヤ、これからはときどきこうしてホテルに誘ってもいいかな?」
「んっ……いい、いいわ……、いっぱい、可愛がって……」
「いい子だ。ああ、すごいよ、もうシーツまでぐっしょりだ……」
両足を大きく開かせて、その間に高峰が顔を埋める。ぴちゃぴちゃと粘ついた音が聞こえてくる。舌で優しくクリトリスの包皮を剥かれ、唇をつけて吸い上げられ、マヤは絶頂に達した。
「ああああああああっ、あっ、いく、いっちゃうううううっ……!」
「いいよ、いっちゃって。ここも弱いんだね……可愛いよ……」
ぐったりとした体に高峰が再び入ってくる。それを受け入れた瞬間、またマヤの内側が燃えあがる。終わりの無い快感、狂おしい悦び。ふたりの狂宴は明け方近くまで続いた。
それ以来、高峰とマヤは表面上は以前と変わらない様子で過ごしながら、真夜中に人目を忍んで秘めやかな時間を過ごすようになった。高峰は今すぐに家庭を壊すつもりは無いようだったし、マヤも高峰を独占したいなどとはまったく思わなかった。
この件を境に、マヤは自分に好意を寄せてくる保護者たちと積極的に関係を持つようになった。彼らは一様に年上で落ちつきがあり、潤沢な金と大切な家庭を持っていた。ただちょっと、あまり危険の無い、身元の確かな若い女の子と遊んでみたいだけなのだ。子供の先生、というマヤの立場も彼らの興奮を刺激する材料になり得るようだった。彼らとマヤはお互いに秘密を共有し、無理のない程度に会っておしゃべりをし、酒を飲み、ホテルへ行った。
マヤは彼らの後ろに、常に生徒の母親の姿を見ていた。身勝手なわがままをぶつけてくる母親たち。自分たちの都合しか考えない馬鹿親ども。父親たちに抱かれながら、マヤは自分の抱かれている姿を母親たちに見せつけているような気持ちでいた。
どう? あんたたちのご主人、いまこんなに気持ち良さそうに喘いでいるわ。もうしばらくご無沙汰なんじゃないの? ぼんやりしている間に、大事なものを根こそぎ持っていかれても知らないわよ……
そういう時間を過ごすようになってから、マヤの鬱屈したストレスはずいぶんと軽減されたようで、仕事そのものも以前よりずっと楽しくこなすことができた。また、そうしてマヤと関係を持った父親たちは、負い目があるためか生徒の授業数を増やしてくれたり、特別講習を何十回も受けてくれたりしたので、教室の売り上げも飛躍的に伸びた。社長はマヤの教室に関しては売上目標を厳しく言わなかったが、それでも数字が伸びることに関しては嬉しいらしく、会議のときに名指しで誉めてくれたりもするようになった。
それはそれで、ほかの社員たちの嫉妬をさらに煽る結果になるので、一概に喜ぶこともできなかったのだけれど。
また、性的な満足は容姿にも滲み出てくるものなのか、アルバイト講師の学生達にも「先生、なんだか綺麗になりましたね」と声をかけられることも増えた。多くは女性の講師たちからで、真面目な顔で美容法を訪ねられたりもしたが、そのたびにマヤは「何にもしていないわよ」と笑ってごまかした。
アルバイト講師の中には社会人も大学院生もいる。様々な年齢の講師たちと授業後におしゃべりをするのもマヤの楽しみのひとつだった。年上の講師ほどプライドが高く、丁寧に接してやらないと後々扱いが難しくなる。逆に学生の講師には、あまり下手に出過ぎるとこちらの要望をきいてもらえなくなる。そのさじ加減が難しい。
授業後のおしゃべりに、最近わりと毎回のように最後まで残っている講師がいる。久保田大輔、24歳。理系の大学院生で研究に忙しく、最終授業の時間しかアルバイトに来れずにいるが、大学受験レベルの問題であれば何の科目でも対応できるので重宝している。
見た目は色白ですこしぽっちゃりとしていて、お世辞にも「カッコいい」と言われるタイプではない。自分でも「年齢イコール彼女いない歴なんです」と、それをネタにして笑いを取るようなところがある。頭の回転が速く、教室の運営にも非常に協力的で、話をしていても面白いので、彼とのおしゃべりはマヤにとってやすらぎの時間でもあった。
「久保田くんのお話って、ほんといつも面白いよね。社会に出たら、きっとモテると思うよ」
そんなふうにマヤが言うと、顔を真っ赤にするのも可愛らしい。
「い、いえ、僕、ほんとに女の人と話すの苦手なんです。恥ずかしいんだけど、研究室が休みのときでもパソコンとかゲームばっかりやってて……」
「あはは、そういえば高2の佐伯くんが、久保田先生にゲームの攻略法教えてもらったとか言って喜んでたよ。まさか授業中にそんな話してるんじゃないでしょうね?」
「ち、ちがいます、すみません。休み時間にちょっとだけ……」
「そう、いいわよ、そんなに謝らなくて。でも久保田くん、わたしと話すときはすごくおしゃべりよね。女の人が苦手って、信じられないな」
「それは……なんていうか、先生が話しやすいんです。あの……特別、っていうか、その……いえ、なんでもないです」
身長180センチの体を丸めて恥ずかしそうにするのがおかしくて、マヤはお腹を抱えて笑った。最近教室を出るのが遅くなるのは、この久保田とのおしゃべりも原因の一つかもしれない。彼に対しては性的な気持ちは一切湧かず、出来の良い弟のような存在というのがぴったり当てはまる。
こんなふうだったから、社長のことさえなければ、少々キツくともこの仕事を辞めたいとは思わなかった。気の合う仲間たちと、割りきった関係を続けられる父親たちがいれば、生徒や母親たちの身勝手な発言も、先輩達からの嫌みも耐えられる。
今日もマヤは父親たちのひとりと仕事の後に会う約束をし、その前に授業後の打ち合わせを兼ねて久保田とのおしゃべりを楽しんでいた。今日の話は、久保田が友人に女の子を紹介されたけど、どうにも自分と合わないような気がしてに困っている、というような内容だった。
「まだ会ってないんでしょ? 久保田くんって早く結婚したい派だって言ってたじゃない。チャンスかもよ、会うだけでも会ってみれば」
「えー、でもですね、趣味がテニスとか、スポーツ観戦とからしいんですよ。僕、前も言いましたけど完全にインドアな人なんで、たぶん合わないと思うんですよね……ハァ、面と向かってフラれるのって傷つきそうだしなあ……」
「あはは、いいじゃない、当たって砕けろ、よ。めちゃめちゃ可愛い子だったらどうするの?絶対あとで後悔するよ」
「もう、先生、他人事だと思って面白がってるでしょ? あー、憂鬱だなぁ……」
「ちょっと、もっと自信持っていいと思うよ。そうね、わたしだったら久保田くんとデートしたら楽しいだろうなって思うもん。ほんと、ほんと」
「ええっ、マジですか? じゃあ今度先生が僕と……」
冗談よ、と言おうとしたところで唐突に教室のドアが開いた。もう真夜中で、生徒も保護者も来るような時間では無い。ぽかんとした顔でふたりがそろってドアの方へ目を向けると、そこには薄笑いを浮かべた社長の姿があった。
(つづく)
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