
泉鏡花は、1873年(明治6年)生〜1939年(昭和14年)、65歳没。
畏れを為して近づかないでいたが、意を決して全集(『鏡花全集』全15巻(エムティ出版、1994)に取り付く。
だが、途中で音を上げた。文章自体の難解さより、文体が馴染めない。(倒置法で文末に名詞を持ってくることが多い。)、加えて妙に方言めいた会話が多いところ。この二つで話がすっと身体に入ってこない。
もとより息の長い作家人生を送った鏡花だが、そんな訳で明治まででギブアップだ。
明治時代の作物に限定し、それなりの評価がある「中編以上」の作物31作を読む。(名作の『婦系図』については、4342首目・・・明治のベストセラー小説を読む③でアップ済。)
年代順に心に留まった作物の感想を書いておく。
「義血侠血」1984M27
芝居がかってて胸躍る名作
「夜行巡査」1895M28
些か荒唐無稽だが訴求力ある名品
「外科室」1895M28
高名すぎとは言えやはりの緊迫感
「照葉狂言」1896M29
仄暗い中で青白く揺らめく哀切は鏡花の一つの真骨頂
「湯島詣」1899M32
成就しない恋の煩悶を周到に描くさすがの名作
「高野聖」1900M33
筋は薄々読めても聖が男滝女滝を見て女に惑ひそうになる場面が秀逸
「薬草取」1903M36
女性憧憬の作物だがラストが凄絶に美しく儚い
「春昼、春昼後刻」1906M39
幻想的な名作、道連れのごとき角兵衛獅子が哀しい
「白鷺」1909M42
静の動きのみだが物悲しく心に残る話
「歌行燈」1910M43
糸が解れて見事な名調子での結末、傑作との評判どおり
一方、オカルトっぽくて高評価の『草迷宮』(1908M41)は、十八番の「母恋い」がテーマで、怖いよりむしろ切ない作物。
また、新聞連載の超長編の『風流線』(1903M36)は、読み終えた達成感はあるけど充実感はそれほどでもなかった。
(なお、著名な『天守物語』も『夜叉ヶ池』も大正の作物なので今回??はスルー。)
文才で言えば(比較しては酷だが)私の贔屓の秋声より鏡花が上だと思わずに居られない。
二人は同郷(金沢)なのだが、秋声がくすんだ光なら、鏡花は揺らめく光だ。
エンタメ性も抜群で、プロ中のプロという印象。紅葉先生の鍛錬により磨かれ硯友社で当代一の作家となったのだろう。
大正昭和の作物を読むかどうかは思案中、、。
画像は若かりし頃の鏡花。イメージどおりの相貌、、?。
「御師匠に反対さるるも貫きたる現身の女(ひと)睦まじけりとや(新作)」
神楽坂の芸妓だった「すず」(芸名「桃太郎」)との結婚を師の尾崎紅葉に大反対された鏡花。師の生前は隠し妻としていたが、泉鏡花が亡くなるまで二人は仲睦まじかったとされる。
不尽
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