こんな夢をみた。
物心が付いた頃には難民キャンプで暮らしていた。
生まれもこの難民キャンプらしいが、両親が死んでいたのでそう聞かされたのは難民キャンプを運営している国連の職員からだった。
母国はもう何年も内戦状態であり、ここは隣国に作られた難民キャンプだった。
それでも国境にほど近いここには、母国からの流れ弾や野盗となった兵士達がやって来ては犠牲者をだしている。
国連軍の兵士によって守られてはいるものの、多すぎる難民達全てをカバーする事は不可能だったのである。
だから自警団を作る事になった。
僕が始めて銃を持ったのは10歳の時で、その二日後には難民キャンプから子供を誘拐して少年兵にしようとしていた旧政府軍の兵士を射殺した。
それから三年の月日を数え、もう何人殺したかなど数えてはいないのだけれども、奴らは殺しても殺してもやって来るのだった。
「聞いたかタケシ」
深夜の見張りの時、暗闇を見つめていると同じようにしていた親友のジョージが話しかけてきた。
基本的には私語は禁止されているのだけれど、まわりには気にするような大人の自警団員はいなかった。
「なにを?」
「この難民キャンプの自警団で国に帰って、他の勢力の連中を叩きつぶして新しい国を作ろうと言う話があるんだよ。兵士も募集している」
ジョージは見つめる先の暗闇の中に不審な動きを見つけ、発砲しながらそう言った。
「無理だろ。連中はよその国から支援を受けて戦争しているのに、自衛の為に小銃を国連軍から借りてるだけの俺らがまともに闘えるわけ無いだろう」
暗闇の中から反撃の銃弾。
僕とジョージは土嚢に身を隠しながら応戦し、会話を続ける。
「そもそも僕らには支援をしてくれるバックがいない」
「この国があるだろう。奴らも難民を多数抱えて、それが政情不安を起こしかねないという事に危機感を感じているのさ。それならば、多少の出費をしてでも、難民を追い出した方が良いと考えているんだ」
「泥沼に足を突っ込むようなものだね」
「俺たち難民を抱えた時点で、すでに首までズッポリ浸かっていたのさ。あとは多少の犠牲は払ってでも、どうやって泥沼から抜け出すかという事だけなんだよ」
弾切れなのか、敵側の銃声が一寸止む。
僕とジョージは土嚢に身を乗り出すと、一斉に全弾撃ち尽くしたのだった。
夜が明けてから、敵がいたらしい場所へ偵察に向かった。
そこには僕やジョージと同い年くらいの少年兵達の遺体がボロ雑巾のようにグチャグチャになり、重なっているのを発見した。
生きている者の姿は見あたらない。
「なぁ、ジョージ」
「なんだ、タカシ?」
「ここにいる限り、僕たちの最期はこいつらと大差ないんだろうなと思うよ」
「まぁ、それが現実的な最期だろうな」
「僕は、母国には帰らないし、兵士に応募するつもりもない」
「じゃあどうするんだ?」
「世界は広いんだ。どこかに僕らが生きて行ける場所があるんだと思うよ」
「現実的じゃないな。でも、悪くない」
僕たちは顔を見合わせると、いそいで自分のテントに戻り、なけなしの全財産を持って難民キャンプを出たのだった。
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