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こんな夢をみた
エベレストに登頂した。
頂上近くには日本人の中年の夫婦が営む山小屋があり、そこに二週間ほど家族で滞在する予定だった。
取った部屋は広く、トイレと風呂も完備され、30型の液晶テレビでは、地元の番組が放送されている。
自炊する事もできるので、食材を麓のスーパーまで買い物に行く。
麓のスーパーには様々な食材が揃っていて、他の登山客で混み合っていた。
そこで付いてきていた母親が、気が付かない内にソーセージとベーコンを万引きして店員に取り押さえられたが、そこは機転を利かせて言葉が分からないフリをして警察沙汰になるのは勘弁してもらう。
母親に注意をしながら、暗くなった山道を帰っていく。
「そういえば、田中さんの圭子ちゃん。離婚して実家に戻ってきたってね」
母親が、むかし近所に住んでいた幼なじみの女の子の話を始めた。
「子供も二人いるのに、旦那さんが浮気したんだって」
ザイルを掴み
、アイスピックを氷壁に打ち込みながら、そう言えば高校の時に好きだった田代さんも離婚したってフェイスブックに書いてたななどと思い出す。
「おれ、芸人になりたいんだ」
と、会社を辞めてきて言ったので、即座に六年間の結婚生活にピリオドを打ったという。
ちなみに子供はいないらしい。
二十歳過ぎてつき合った元カノの陽子は、俺と別れたあとに三度結婚し、父親の違う子供が三人いるらしい。
なんか、縁のある女性達はみんな離婚していると思うが、そもそも自分は結婚などしたことがないので何も言う事はない。
そんな事を考えているうちに山小屋にたどり着き、その日は就寝。
尿意を覚えて目を覚ます。
まだ暗かった。
用を足していると、トイレのドアの隙間から、この山小屋のおかみさんが覗いているのに気が付いた。
「……なにか?」
「そとをごらんになって下さい。とても綺麗ですよ」
おかみさんが隙間から覗いててそう言う。
俺はトイレの窓から外を見ると、地平線から夜の暗闇がオレンジ色に変わっていくところだった。
朝である。
部屋に戻り、大きな窓からその絶景を鑑賞する。
明るくなるに連れて、空には暗雲が立ち込め始めた。
すでにここは空と言っても問題ない場所なので、窓のすぐ外で暗雲がタコ踊りの様に渦を巻いているのが見えた。
爆発でも起きたのかと思うほどの衝撃音と発光。
震える山小屋。
雷が至近距離で発生したのだった。
空気が帯電し、ビリビリする。
雷は何度も発生して、ひたすら蹲って耐えたのだった。
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