杜の里から

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EMへの疑問(14) ~活性液って何?~

2015年09月04日 | EM

 

(はてなブログに引っ越しました。当該エントリーはこちらです。)

 

素人目線からの素朴な疑問をぶつけるこのシリーズ、最後のエントリーは2010年6月3日、その後しばらくは別の話題に移ってしまって忘れられていた感がありましたが、本当にお久しぶりです。
実は前回エントリーをまとめている内、ついタイトルの様な疑問が新たに湧いてきまして、ここにめでたく5年ぶりに復活する事と相なりました。

前回は高校生による「環境浄化材マイエンザ(えひめAI)」の研究を紹介しましたが、この研究ではマイエンザの成分分析も行われ、そこからグルタミン酸、アスパラギン酸、リジン、ロイシン、プロリン等18種のアミノ酸が検出された事が報告されました(→こちら)。
ですがよくよく考えてみれば、これらのアミノ酸というのは構成比は異なっているとはいえ、実は有機肥料の成分とほぼ同じものである事が分かります。
つまり、マイエンザが有機肥料と同様の働きをする事が期待される一方、これを河川に大量投入する事は有機肥料をそのまま投入する事と変わりなく、水質汚濁の原因にも成り得る事がここで改めて確認された訳で、だから尚の事、マイエンザを河川投入する事は固く禁じられている訳です(→参照)。

一方、EM活性液についてはどうでしょうか。
EM活性液とは、こちらの説明によりますと、微生物資材EM1に水と糖蜜を加え、38℃で一週間ほど培養させた溶液の事を指します。
マイエンザの製造方法が、ヨーグルト(乳酸菌)・納豆(納豆菌)・ドライイースト(酵母)と水・砂糖を混ぜて35℃で24時間培養というもので、基本的な作り方はどちらも似た様なものです。
ではこうして出来たEM活性液の中身の成分は、一体どうなっているのでしょうか?
これについてネット内を探してみましたが、マイエンザの様に詳細な成分分析をした記録は見つかりませんでした。
EM活性液による水質浄化のメカニズムについて、本家のサイトでは、

EM活性液やEM団子中に含まれる有機物は発酵されていることで、自然界の微生物や原生動物等のエサ(栄養分)として活用されやすく、更に様々な代謝物質や生理活性物質が含まれており、より多様な微生物や水生生物が活性化すると考えます。

との説明がなされており、『自然界の微生物や原生動物等のエサ(栄養分)として活用』とある様に、その働きを見るとマイエンザとよく似ている事が分かります。
しかし解説の中では「代謝物質」とか「生理活性物質」との記述もありますが、それが具体的に何を指しているのかこの説明ではよく分かりません。
そして説明はこう続きます(強調は引用者)。

EM活性液やEM団子などのEM資材には乳酸菌や酵母など水中の有機物やヘドロの発酵分解に関わる微生物や酵素の他、有機酸(乳酸や酢酸)アミノ酸など、微生物が活用しやすい形態の栄養分やビタミンやミネラル等の生理活性物質が含まれていて、汚染の浄化と生態系回復に役立ちます(下図参照)。

などと説明していますが、「有機酸(乳酸や酢酸)やアミノ酸など、微生物が活用しやすい形態の栄養分」などは、「全窒素(T-N)」という富栄養化の原因物質でもあり、過剰に供給すればそれがアオコや赤潮発生の原因にもなってしまうとされるものですが、この危険性についてはまるで説明がありません(→参考)。

河川の水質を守るための法律として、「水質汚濁防止法」というものがあります。
この法律では、排水の水質の規制が必要な施設というものが細かく設定されていて、例えばこちらの特定施設の項目では、
〔5〕 みそ、しよう油、食用アミノ酸、グルタミン酸ソーダ、ソース又は食酢の製造業の用に供する施設であつて、次に掲げるもの
とか、
〔11〕 動物系飼料又は有機質肥料の製造業の用に供する施設であつて、次に掲げるもの
など、成分の観点から見れば関連する施設の例もあり、これらには皆厳しい排水基準が設けられています。

もちろんこの法律はあくまで〔事業所〕に向けてのものであり、一般住民やNPOを対象にしたものではなく、一般家庭の排水に関しては今の所何の規定もありません。
しかしいくら規制対象外だからと言って、トン単位で投入しても許されると思うのならば、それはちょっと違うのではないかと私は思います。
環境に害はないとするならば、まずはその科学的根拠となる中身の成分を明らかにし、たとえ事業活動ではないとしても、法律で定めた基準に照らした上で投入の許可を得る所から始めるべきではと思うのです。

最近はNPOだけではなく、自治体が自ら率先して河川へのEM投入を行っている事例も見られます。
例えば愛知県稲沢市ですが、ここでは毎年市の予算を使ってEM活性液の河川投入を行っています(→資料PDF)。
その量何と100トン! (クリックで拡大) ↓



その効果についてここの会議録(PDF)を読んでみますと、

(P.4)
稲沢市においても、平成14年度から三宅川の浄化に取り組んでいますが、結果としてBOD(生物化学的酸素要求量)の値が上昇しているわけではなく、特に水質が浄化されたという科学的なデータがない状態です

などという発言がありますが、それでもこの年平成25年度でのこの事業評価は〔B〕ランクとなっています。
評価を担当した4人の委員中、B評価は3名、D評価は1名で、その意見は、

〔B〕評価
・まずは明確な数値データを取り、EM菌に効果があることを市民に公表する事が必要。
・EM菌の放流活動に限らず、市民への啓蒙活動に事業の重点を置いていけば良い。
・現在の投入量的にどれほどの効果があるか分からないが、市民の環境美化意識の向上には繋がると考える
〔D〕評価
・判断するための根拠が足りない。啓蒙活動に関しては理解

というものでした。
また、市民からのパブリックコメント(PDF)への対応を見ても、

EM菌は、河川の水質浄化に係る分析データが無いのが実情ですが、ヘドロが減少し臭気が抑制され透視度が上がった事例や、生物相が豊かになり、アユ等が復活したという事例が多数あるのも現実であり、国内では河川浄化事業や学校プールなどにおいて、また国外ではマレーシアやタイなどで、EM菌の使用事例があります。

などと、EMの広報で使われる文言そのままの回答がなされているだけです。
こんな対応を見ていると、そもそもEMそのものに対する科学的根拠が希薄に見えてなりません。

でもここでよくよく考えてみれば、ネット内では中々見つからない活性液の成分資料などは、EM活動を実際に行っているこの様な自治体に尋ねてみればよい訳です。
それにこの活動には市民の税金を投入している訳ですから、市民の人なら尚更の事、EM活性液の成分の情報開示を要求する権利もある訳です。

先に紹介した水質汚濁防止法で規制されている「特定施設」には、
 ・国又は地方公共団体の試験研究機関
とか、
 ・農業、水産又は工業に関する学科を含む専門教育を行う高等学校、高等専門学校、専修学校、各種学校、職員訓練施設又は職業訓練施設
などの公的機関も含まれてはいますが、取り締まる側である【自治体そのもの】は規制対象とはなっていません。
でもおそらく、そもそも微生物資材の成分分析など高校生でも行っているぐらいですから、これほど大量に投入するからには自治体としてもその成分はちゃんと把握していて、環境に悪影響を及ぼす成分は含まれていないという判断はしっかりなされているはずです。

比嘉さんはご自身の主張の中で、

微生物資材で科学的検証の必要なものは「まったく未知の微生物」か「遺伝子組み換えをした微生物」に限られており、法的な義務づけがあります。EMは、そのいずれにも該当せず、科学的検証はまったく必要なく、各試験研究機関もEM研究機構の同意なしには、勝手に試験をして、その効果を判定する権限もありません(→こちら

などと述べてますが、「活性液の成分分析」というものは、これは別に効果の判定でも検証でもなく、それ以前のどこの事業所でも行っている一連の「手続き」なのですから、これなら別に比嘉さんに逆らうものでもない訳です。
それに「EM活性液」というのは企業製品ではなく、基本使用者による「自作品」であって、元々自己責任として企業責任を放棄したものです。
よってその時の出来不出来で中身の成分は大きく変わる事も考えられますから、おそらく行政としての定期的な品質チェックも適切に行われている事でしょう。

勿論NPOに河川投入を許可する場合でも、その中身についてはしっかりとした分析がなされているはずですから、活性液の成分を知りたい時は当該自治体にお伺いしてみるのが一番早いかもしれません。

  

それにまさか、公共河川に大量投入するものの中身が何なのか、それも知らずに投入を許可している所などあるはずもなく、またそんな事は決してあってはならない事です。
もしそんな自治体があったとすれば、そこの環境行政は高校レベル以下、環境について語る資格なしという評価が下される事でしょう。

現在、EM推進している自治体は結構な数に上ります(→参考)。
これらの自治体の中で河川浄化にEM活性液を投入している所があったなら、果たしてその中身の成分を正しく把握しているのかどうか、これはぜひ一度聞いてみる価値はありそうです。


(関連エントリー)
「マイエンザはなぜ効くのか」
「【考察】EMに関するよくある誤解(3)(環境編)」



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