「これって……ハンカ――」
野々野足軽が上流から流れてきたその布をとった。手を伸ばしてまで取ることはなかったかもしれないが……薄汚れてる……とかじゃなくとてもきれいだったから、そこに忌避感はなかったんだ。
その流れてきた物を手に取った野々野足軽。するとその瞬間だ。ある光景が頭に叩き込まれてきた。
『よっと……んしょ。わあ、今どきの子は……でも私だって今なら……』
その光景とともに観えたのは真っ暗な暗闇だった。でもなんか妙な温かさがある。そして何かの密着感。そして臭う生々しい感じの匂い。
「つっ……なんだ?」
フラッとよろめいて思わず顔を手で覆う野々野足軽。まるで目の奥、眼球の奥から痛みが来たような……そんな感覚だった。
「だいじょ……ぶ……」
急にふらついた野々野足軽に対して心配したのか、ちょっと前に出て駆け寄ろうとしてた野々野小頭。けどその足はすぐに止まってしまう。別に大丈夫そうだから……とかそう判断したわけじゃない。
そうじゃないんだ。
「それ……何?」
なんかとても低い声……冷たい声が小頭からは出てた。けどそんな風な冷たい声を掛けられる覚えは足軽にはない。
「なんの事……」
「それだよ! そのパンツだよ! よく妹の前でパンツで顔拭いてるね!?」
「は? ええええええええ!?」
その小頭の発言にびっくりして自分が持ってた物を確認する野々野足軽。それは確かに、女物のパンティーだった。なんか薄いとは思った。肌触りもなんか良かった。けどきれいな布だったし、そんなものかと思った。そもそもが野々野足軽は女物のパンティーなんて触れたこともないのだ。
それにいうと……だ。誰が女物のパンティーが上流から流れてくると思うだろうか? 足軽はパンティーなんて思ってその布を取ってなんてない。それに顔に持っていったのもたまたまである。別にパンティーで顔を拭きたかったわけじゃない。
でもその言い訳を小頭が聞いてくれるか……はまた別問題。でもここは冷静にいかないといけない。そう野々野足軽は思った。
「落ち着け。俺は別にこれがパンティーなんて知らなかった」
「でも手に取った瞬間には貪るように顔に持っていったじゃん。変態」
そんな風に観えてたのか……と野々野足軽は思った。てか偏見がすぎる。もうちょっと兄を信じてくれてもいいだろうと思う。そんなに兄は女に飢えてるととおもわれてるのだろうか? なんかちょっと悲しくなった足軽だ。
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