『こんなのは横暴だ!! 俺が一体何をやったっていうんだ!!』
そんな風に叫んでる縄に縛られた人。必死に暴れる姿を見せつつ、地面に横たえられてる彼……いやそいつは地面をゴロゴロしてるせいか、砂が身体について汚くなってる。でもどうやらそれもソイツの作戦みたいだ。
だってあいつ……私は簡単に対象の心拍とか脈拍とか血中酸素濃度とか……まあ言うなればバイタルがわかる。普通は興奮したら血圧は上がるし、心拍だって早くなるものだろう。
でもあいつは変わってない。無駄にジタバタしてるが、興奮してるように見えて、あれは至って冷静にそれをやってるということだ。つまりは向こうにも焦りとかはない。実際アレで逃げられる……なんて本気で思ってるとも思えないんだが、それだけの余裕があるのは謎である。
(私達の事を舐めてる?)
いやそんなことはないだろう。寧ろ今ここまで来ても、まだ教会が私達の事を舐めてるとしたら……それはそれで寧ろありがたいことである。だって警戒されるよりも侮られてたほうが油断を誘いやすい。油断から足元を掬われる……なんてことはよくあることだろう。
(でも流石に……ね)
――と思う。
『これは陰謀だ!! この街の偉い奴らが俺に罪を着せようとありもしないこと叫んでるんだ!! 皆騙されるな!! 俺は神に誓って何もやってない!!』
むはー、である。良くもまあそこまでハッキリと神の名を借りてまで嘘を言えるものだ。一応この世界にはちゃんとした神がいるんだが? そいつの一神教でもある。普通は一神教とかなら神の名はそれなりに……というかかなりの重みを増すはずだが? まあこれが一般人なら簡単に使うのもわかる。
辛い世界でなら宗教はかなり大きな部分を占めてしまうから宗教というのがかなり強くなる。実際この世界はそうなってるしね。でも実際、そこまで信心深い人達がいるかっていうと……実際市中にはそんな印象はない。一応ちゃんと祈ったりしてるが、ある意味で自分の力でなんとかしないと行けないってこともわかってる。神に救いを求めているが、その手が降りてこないこともわかってる……みたいな? 市中の人達はそんな感じである。
でも……だ。でも……
「あれって教会のやつなんだよね」
流石に教会の関係者は市中の人達よりももっともっとちゃんと信仰してるはずである。なのにあんな事を言うなんて……それだけ演技派なのかな?
『神に誓って……ですか。その言葉に偽りはないと?』
『……ごく……ああ! そうだ!! 俺はやってない!!』
勇者の冷静な口調になにか感じたらしいが、でもそれでもここでやめるわけには行かなかったんだろう。だからソイツは演技を続ける。すると次の瞬間、他のドローン達が別の映像を映し出す。
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