「そんなものか? いや、そんなものだよお前は」
そんな事を言われた。俺はひっくり返った虫の様にモゾモゾとするしかない。なにせその攻撃は凄まじかった。けどそれでも……彼女は手を抜いてる。だってそうだろう。その剣で……その刃が届いてたら今俺はどうなってる?
そんなのは決まってる「死」だ。俺は本当なら今の攻撃で二回は死んでるだろう。強い……いや強いのはしってた。けど追いついてると思ってた。
なにせ訓練はしてたし、それにこの武器……これがあれば警戒はするだろうって。いや警戒はきっとしてる。けどそれでも……だ。それでもあの女は俺を脅威と見てない。
「う……うあああああああああああああ!!」
俺は近づいてきたところを狙って、剣を振り回した。そして「来るな! 来るなああああああああああ!!」と泣き叫ぶ。でもそれにも彼女は冷静だった。
わずかにでも当たればそれだけでスパッときれる剣だ。こんな風に滅茶苦茶に振り回したとしても、それでも切れ味はそこらの剣よりも断然良い。
肉体なら、抵抗なんてほとんどなく切れるだろう。だからこそ、こんな無茶苦茶は寧ろ脅威になりえる。武術を得て、きちんと基礎をやったらそれこそ実力差があれば太刀筋を見極める事もできるだろう。
実際それくらいきっと俺とこいつには実力差がある。悔しいが……それは事実だ。だからこその滅茶苦茶。けどそれでも彼女は冷静だった。いきなり剣が差し込まれた。眼の前でその剣はピタッととまった。そしてクルッと腕を回して甲高い音を出して俺の剣を滑っていく。そしてそのまま俺の拳をわずかにきった。
「いっ!?」
一瞬の痛み……その反射で俺は剣を手放してしまった。そしてそれを上手く自身の伸ばしてた剣でカーンと弾いて自身の手元にスポッとおさめる。
簡単な事をやったように見えて、それはあまりにもかけ離れた技術。傭兵でもここまで技術があるやつなんてそうそういないだろう。そもそもが傭兵って大体が我流だ。それで技術なんて……それこそ実践を経て勝手に作り上げていくような……そんなのだ。弱いやつは死んで、強いやつが生きながらえる――それが傭兵家業。
部位欠損してるやつなんて珍しくない。そんななか、比較的若いのに何の欠損もなく今にいたってるこの女は……そう異常だった。
それに今更気づいた。
「俺のまけ――ぶぎゃ!?」
敗北宣言……それすらも許されなくて再び俺はふっとばされた。そしてふっとばした俺のところにやってきた彼女は俺の髪を掴んでそのままて引きずり出す。
イタイイタイ――と言っても聞く耳持たず
「不快だ。お前は私に取っては金でしか無い。喋るな。舌を切り取るぞ」
その言葉に俺は黙るしかなかった。
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