「あれ?」
消えてなくなった三毛猫を撫でてた手、そこに何かある……と草陰草案はその手の中の物を見た。そこには何か、綺麗な石があった。黄色いトパーズみたいな綺麗な石だ。別に研磨されたとかなさそうな、そこらに落ちてそうな形してるが、色が真っ黄色で透明感もある。
それを見て……草陰草案は「綺麗」――といった。するとそれを見て、アンゴラ氏がなんかおかしな反応をしてる。それに猩々坊主は気づいた。
「あれに何か感じるのか?」
「ええ……良いものなのか、悪いものなのかは正直よくわかりませんが……なにか……とてもひきつけられると言いますか……そんな感じです」
そんな会話を一番後ろで諦観してる野々野足軽はこう思う。
(まあ、綺麗だからな)
実際かなり綺麗にできたと思ってる野々野足軽である。実際あの猫もちょっとした演出。緊張感を取り戻してもらって、さらに何か秘密の共有というか……そんなのが目的だった。それに……だ。それにこれからの事を考えての事でもある。あの猫も、そしてあの石ころも……
「ねえ、草案ちゃん……あの猫って……」
「あの子は……ちょっと小さいときに出会った猫に似てたってだけだよ……そんなわけ……ないよね」
「でも……それ……きっと草案ちゃんの為に残してくれたんじゃないの?」
普段はオカルトなんて微塵も信じてない野々野小頭である。けどそんな小頭にも、今の猫が草陰草案と全く関係なんて思えなかった。だって……姿を見せて……そして何やら残していった。それに……だ。ここにいる誰もが思ってるだろうが……今まで見た変なナニカ――とはさっきの猫は違ってた。少なくとも、野々野小頭はそう思ってる。
「そうだったらいいな……」
「そうだよ絶対!」
「ああ、某もきっとそうだと思う」
「猩々坊主さん……」
なんか女子中学生の二人の会話に割り込んでくる猩々坊主。そしてあの猫の事をこういった。
「あれはきっと、お主の守護霊だったんではないかな? 見ろ」
そういって猩々坊主は今さっき、草陰草案が助け出された場所を示す。そこはかなり悲惨な場所だ。上階の一部が崩落して、この場所に落ちてきて、瓦礫だけじゃなく、そこにあった棚やらなんやらが積み重なってる。
「わかるか? 本当ならきっとお主は助かってない。これにどこも潰されずにかすり傷程度なんて考えられない」
「それって……」
「ああ、さっきの猫の守護霊が守ってくれたんじゃないか? それにそう考えた方が良いだろう?」
「……そうですね。はい……きっと私はあの子に助けられた……そう思うようにします。もうあの子はいなくなってしまったかもしれないけど、きっとこれはあの子が私に残してくれた贈り物なんですよね」
「うむ」
そんな風にいっていい感じになってる。それからは皆でこの廃ビルからでて、外には事前に連絡しておいたのだろう、草陰草案の両親がいた。そして両親に引き渡して、今回の草陰草案失踪事件は幕を下ろす。
あんなことがあったんだ。草陰草案も少しは自重するようになった……かと思うだろうが、二日の検査入院を経て学校に通いだした草陰草案はいつも通り……いや、いつも以上だった。
「小頭ちゃん凄い凄いよ!!」
「なに?」
放課後、さっそくそんな事を言って教室に乗り込んできた草陰草案は野々野小頭の腕をつかんで引っ張っていく。そして人気のない廊下で、野々野小頭の背中を壁に押し付けて、自身はその両手で野々野小頭が逃げられないようにしてた。
そしてその息は「はあはあ」と荒い。何やらやけに興奮してるな? と思ってる野々野小頭。とりあえず冷静になってもらうためにも話を聞く必要があるだろうと判断する。
「何があったの?」
面倒ごとは嫌だな……とか思いつつ、そんな風に聞く。すると草陰草案はこういった。
「私、目覚めちゃった!!」
「え?」
その瞬間野々野小頭に寒気が走った。まさかそっち系に目覚めた……とかじゃないよね? と思ったんだ。確かに草陰草案とは仲いい。友達の中では一番……親友だろう。
けど野々野小頭にはそれ以上になる気はない。
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