「やるんだろ? どうする? 一気に突撃するか?」
俺は腰にある剣に手を添えてそういった。けど目の前の女はこんなことをいってきた。
「あほを言うな。死ぬ気か?」
ってね。こっちとしては「はあ?」という感じだ。じゃあなんでこんなことしてるんだよってことだよ。俺たちがここに入り込んでる教会の奴らを殺していくことで、手柄にする――ってことじゃないのか? 見たところ、奴らは武器を持ってるようにも見えないし、やれるはずだ。それに向こうはこっちに気づていない。
不意打ちならもっと簡単。てかそもそもが見える奴らは鍛えてるようにも見えない。武器を持った相手が突然現れたらきっと何もできないだろう。殺すなんて簡単だ。なのに……ただ見てるだけ? そんな事が出来るか? なにせこいつらを放置してたらこっちに不利になる。今更街に愛着があるかとかじゃない。
こっち側が負けたらそもそも生きることもできなくなるんだ。なら、やりたいかやりたくないかってことじゃなく、やらなきゃいけない。誰かの為じゃない。俺の為だ。ここで奴らを殺す――俺は女の言葉を無視して飛び出した。
声は出さない。音もなるべく静かに……そして出来るだけ速く駆ける。
「なんだお前!!」
けどもちろんだけど、気づかれる。なにせそこまで広くもない路地だ。でも既に近い。問題ない。やれる。俺は抜いてた剣を振りかぶった。信頼してる剣だ。斬れない物なんてない。事実、この剣で切れてない物は今の所ないんだ。
「ぐっ!?」
何か違和感があったが、傷つけることは出来た。でも運がいいのか、俺が狙ったやつは足を絡ませて後ろに倒れてしまった。斬れたのはわずかだけ。
「ちっ」
――と思わず舌打ちがでる。一瞬の抵抗、あれがなかったら真っ二つにできてたのに……
「貴様!!」
そういって前に手を翳すもう一人の奴。すると次の瞬間、不可視の衝撃が俺を吹き飛ばした。
「がはっ!?」
壁にぶつかって変な声をだす俺。何が起きた? まるでいきなり何かがぶつかってきたような……俺はそのまま地面に落ちた。同時に、剣を取り落とす。カラン――と空しい音が響く。
「大丈夫か?」
「ああ、それよりもそいつは……軍の奴? ではないな」
「ああ、ただのごろつき? いや、それにしては剣は最新型だ。刺客か。なら……」
俺に向けて一人が手を向ける。すると今度はその手に炎が生まれて丸まっていく。あれを受けたら丸焼けになるのだろうか? なんとかしたいが……まださっきのダメージが……
「死ね」
そんな言葉を紡がれた直後、俺は目を閉じる。けど攻撃がくることはなかった。逆になんか「がはっ――」とかいう声とザシュ――という音が聞こえた。恐る恐る目を開けると、そこには二人の教会関係者を殺した女が剣の血を拭ってた。
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