この写真は引っ越して来たばかりで何もなかった頃の我が家。
王様も私達とほぼ同時にこの家の住人になりました。
どんな毎日が始まるのか想像もつかなかった頃です。
インテリアは、自分達で決めました。
何もないところから一軒の家丸ごとの家具を選ぶというのは骨の折れる作業でした。
気に入ったものが見つからなければいつまででも探すつもりでしたので、
結局のところ最低限必要な家具が揃うまで一年かかりました。
ひとつとして同じお店で家具を購入しなかったので、
バラバラに配達されて来る家具の搬入時には、
他の家具と本当にマッチするのか毎回ドキドキでした。
人間の色彩や形の記憶等、全く当てになりませんし、
例え写真に撮ったところで風合いとか温度感等は、実際並べてみて初めて判る事です。
インテリアを考えていく上での手がかりは、
それまで訪れた様々な国々のリゾートホテルのインテリアと、
私が学生時代アートの学生として学んだギャラリーデザインのノウハウだけ。
家とそこで暮らす人達がチグハグでは、到底心地よく暮らす事は出来ません。
インテリアを考える上で、住む人のライフスタイルやキャラクターを考慮する事は大切です。
私達は二人揃って生活臭のしない人という印象を周囲の方々に与える様です。
これはネガティブ・ポジティブが表裏一体となっているものだと思いますが、
恐らく妥当な評価だと思うべきだと認識しています。
一番大きな理由は、私達が大人だけの暮らしをしているという事、
それから聞かれれば答えますが、自分たちのプライベートを好んで話さないことや、
会話に周囲の特定の人物が登場する、いわゆるゴシップが苦手というのが理由の様です。
そのような私達が暮らす家ですから、アットホームなインテリアは方向違いです。
住まいは住む人と、そこを訪れる人の為のもの。
当然インテリアもそれに付随する訳ですが、もうひとつ忘れてならないのが、
建築物としての家のキャラクターと家の周囲の環境とのハーモニーではないかと思います。
よほど特別な好みが有るか、とんでもなく人里離れた場所に建てる場合を除けば、
家は既に出来上がっている物件を購入するのがこの辺りの習慣です。
そして家は一軒一軒全くデザインの違うものを建てるのではなく、
その地域を大規模に宅地開発してひとつの街を作り上げるので、
近隣の家々は、こまごまとした間取りや敷地の広さに違いが有っても、
共通する空気感とか雰囲気が有りますから、
私はそのハーモニーを大切にしたいと思っています。
引っ越しをしてからかなり長い間、私達は家具を買わず、
引っ越しの段ボールで御飯を食べたり、唯一持っていたベッドを使って、
家の中で一番小さな部屋を中心に生活していました。
この家を知ってからでなければ、家具は選べないと私が主張しましたので。
朝日が昇って、夕日が沈み、夜の静寂に包まれる家は、ちゃんと呼吸をしているのです。
庭の木々には、一日中沢山の野鳥も尋ねて来てくれます。
別の場所での今までの私達の生活をどやどやと持ち込んで、
好き勝手に自分の好みを押し付けられては、
ずっとここで住人達の生活を見守って来た家もたまったものではないでしょう。
色々考えた結果、私は自分達の好みよりも、
家が喜ぶインテリアを作る事にしました。
真っ青な空、沢山のパームツリー、ブーゲンビリアの鮮やかなピンク、プールのブルー。
これらの色に負けず、尚かつ主張しすぎず、清潔感がある色。
インテリアは全て白にする事に。ベージュ、クリーム、生成り、純白・・・・・
様々な素材の、色々な白を重ねていく事で、リズムや奥行きを出す事にしました。
家具はアメリカ各地、インドネシア、タイ、マレーシア、インド、日本から。
新しいものもアンティークも取り混ぜています。
産地や年代は違っても、木の素材を活かしたものや、細工の面白いものなど、
自分たちが魅力を感じるものを集めていくと、無国籍ながら調和が生まれます。
それらを取りまとめているのが様々な白。
白は光を集めますから、家具に照明を当てているのと同じ効果が期待出来ます。
私は陶芸家ですので自分の作品はもちろん、
仕事柄その他のアート作品も家のあちこちに置く事になる訳ですが、
インテリアは、そのフレームとしての役割も果たすものでなくてはなりません。
そんなところからも、色の多用は避けたいと思いました。
家具の配置やアートの展示等については、
学生時代レポート提出の為に数えきれない程美術館に足を運んだ事や、
ギャラリーデザインの授業の一環で、何度もギャラリーの内装をした経験が役に立ちました。
私達は自分たちの暮らすこの家が好きですが、
これが私達のインテリアの一番好きなスタイルなのか?と尋ねられれば、
実のところ答えはNOです。それほど固定された好みを持っていないと言うべきでしょうか。
この家でなければ、私達は全く違うインテリアを考える事でしょう。
自分の好みで飾るのではなく、『家が喜ぶインテリア』。
こんな考え方もあるというお話でした。
The End.