松下啓一 自治・政策・まちづくり

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☆戸田市自治基本条例推進委員会・第4期始まる

2022-04-28 | 1.研究活動
 戸田市自治基本条例推進委員会の第4期が始まった。

 第4期は、メンバーが大きく変わった。全体に若者が増えた。はじめなので、戸田市自治基本条例の意義について、5分ほどで話をした。

 戸田市の自治基本条例の策定プロセスは、全国的に見ても、とても優れていて、誇るべきものだと思う。戸田市方式と言われるもので、「学ぶ」「体験する」「創る」のプロセスを経ている。「体験する」では、策定メンバーが街に出て、福祉の活動団体等を訪ね、それぞれの活動の意義やヤマミを体験し、これら課題を解決する道筋としての自治基本条例を創ろうと奮闘した。

 この過程で、いつも顔を出す、声だけが大きい市民が、脱落していったことを思い出す。

 自治基本条例が、なぜつくられるのか。簡単に言えば、法律が足りないからである。地方自治の基本法である地方自治法は、昭和22年につくられている。昭和22年なので、明らかに、今日の事情と乖離している。この現状との乖離を補うために、条例がつくられる。

 その自治基本条例は、2011年の東日本大震災を境に、前期と後期に分けることができる。

 前期の代表例が、北海道のニセコ町のまちづくり基本条例である。前期では、地方自治法に足りないものは、住民による行政・議会の民主的統制の権利や仕組みであると考える。たしかに、地方自治法には、市民参加や情報公開の規定が不十分である。これらを条例に書いて、住民の信託を受けた役所や議会を市民のものにしようという条例である。

 ちなみに、ニセコ町のまちづくり基本条例ができたときのことをよく覚えている。自治体学会か自治体法務研究会で報告があったと思う。その時の率直な感想は、「ニセコ町まちづくり基本条例に書いてあることは、横浜市では既にやっている」というものだった。内容的には、特に新鮮味はなかったが、ただ、これを条文に記述することがすごいと思った(むしろ、この内容で、驚いている、他の自治体職員が、不思議だったことを覚えている)。

 民主的統制一辺倒の自治基本条例が大きく変わるのが、2011年の東日本大震災である。ここでは、人と人のつながりや連携が注目された。役所の民主的統制では、命が守れないからである。声を掛け合って避難し、避難先で救援にくるまで、少ない食料を分け与えながら、1週間、がんばったという例がたくさんあった。

 戸田市の自治基本条例もその時に検討が始まった。だから、自治基本条例の策定メンバーも、東日本大震災に触発されて、参加したという人がたくさんいた。いてもたってもいられず、新たなつながり、助け合いが出来るシステムとして、自治基本条例を創りたいと参加した。

 自治基本条例は前期と後期に分かれるが、そのための推進委員会も、その目的や活動が前期と後期で違ってくる。

 前期型の推進委員会は、自治体の民主的統制が主たる目的である。役所が行った自治基本条例の進捗状況をチェックするのが役割となる。ただ、年間、1回か2回の委員会で、役所をチェックすると言っても、結局は、役所の内部チェックを確認(後押し)する役割となる。おそらく、説明が大半で、2、3質問する会議になっているだろう。

 後期型の推進委員会は、市民間のつながり、助け合いシステムを盛り上げるのが主たる目的となる。焼津市では、その具体化として、市民、議員、行政が一堂に会するまちづくり市民集会を行っている。

 戸田市も、同様な試みを行ったが、うまく組み立られなかった。その原因は、いくつかあるが、戸田市方式で、学び、体験し、創るのプロセスを実践した市民を推進委員会にうまく取り込めなかったことが一番大きかった。その分、試行錯誤であるが、3期の最後に方向性が、決まったので、新たな取り組みが期待できると思う。自治基本条例の策定当時の事務局職員も、戻ってきたので、当時の雰囲気が施策に反映されるようになると思う。

 ちなみに、委員長に決まった横山さんは、当初からのメンバーで、東日本大震災に触発されてメンバーになった人である。いつも話は面白いし、フレンドリーなので、明るく、楽しい委員会になると思う。

 この日は、初めての体験をした。最初なので、委員長、副委員長の互選があるが、委員長候補の横山さんは欠席、副委員長候補の方は、遅れてくるという。つまり、いない人を決める会議となった。

 まず、他の委員から委員長の推薦があった。これで他の委員の賛同を求めるが、当然、みな「賛成」である。ただ、ご本人が会議にいないので、本人の同意は取れない。そこで、携帯で本人連絡して、それで了解を得るという方法がとられた。長い間、いろいろな委員会をやるが、携帯方式は初めてだった(何かの役職で不在のとき、すでに本人の同意を得ているという進め方は、あった)。

 さて、携帯電話であるが、事務局が、皆に聞こえる声で、「横山さんを委員長にという声があったが、ご意向はいかがか」と聞く。スピーカーではないのでご本人の声は聞こえないが、「推薦をいただいので・・・・」と言った旨の回答があったのだと思う。その旨を事務局が報告し、「ご本人の了解を得られた」ということになった(携帯をスピーカーに変えて、意向を聞くというのもあったかもしれない)。

 また、副委員長は、委員長の推薦であるが、これも電話で「・・・さんを」という回答があった旨が報告された。そのうえで、委員長のご意向は「・・・さんを」ということなので、これでよろしいかと報告された。そして、これも委員一同、賛成となった。ただ、そのときは、副委員長さんは、まだ来ていない。しばらくして、ご本人が来たので、議事を中断して、「委員長のご意向で、副委員長にということですが、よろしいでしょうか」と尋ね、「了解しました」となって、一件落着した。

 「本日、会長さんは欠席ですが、ご本人の了解は得ています。副会長さんは、会長さんの意向で・・」というやり方でも、異議は出ないと思うが、厳密に考えると、「事前の同意」は、有効なのか。そんな風に考えて、今回の運営になったのかもしれない。いい体験をした。
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