松下啓一 自治・政策・まちづくり

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☆大和市おもいやりマスク着用条例を考える(1)

2020-08-21 | 1.研究活動
 大和市は、一生懸命、仕事をしている知り合いもたくさん知っているので、この条例について書くのは、気の毒だと思うが、大事なことだと思うので、私の意見を書いておこう。

 マスク警察という言葉がある。善意からあるいは正義のために、マスクをしていない人を一方的に非難する行為である。

 コロナ禍は、私たちにさまざまな問題を突きつけた。そのひとつが、同調圧力である。同調は私たちの強さであるが、今は、逆に弱さとなって、さまざまな問題を引き起こしている。最近では、天理大学生というだけ、教育実習を中止され、バイトも雇いどめになっている。

 コロナ禍において、自治体は何をすべきなのか、自治体の力量が問われている。

 大和市のこの条例は、専決処分で行われ、そのスピード感から全国初の条例とされる。ここにはいくつかの論点があるが、考え方を示す意味で、大和市と同じように、全国初の条例(公開政策討論会条例や若者政策・若者議会条例)を連発している愛知県新城市のケースを示しておこう。

 大和市のマスク条例の公布・施行とほぼ同じ時期、愛知県に緊急事態宣言を受けて、新城市長は、次のように市民に訴えている。

 少し長いが、紹介しよう。2020年04月10日 愛知県緊急事態宣言へ―市民皆さまへのお願い(市長ブログより)

(前略)
 私としては、全ての皆さまに次の点に強く留意していただきたいと思います。

 それは感染者ならびにそのご家族や関係者を、感染を広める加害者のようにみなし、孤立無援の状況に追い込むことは許されないということです。

 また感染者の搬送・治療・調査などにあたっているすべての専門職従事者(ならびに家族等)への排除攻撃や差別偏見を、絶対に許してはならないということです。

 人のつながりが濃密な地域社会では、発表・報道される感染情報から特定の個人を容易に推定したり、ウワサ話を伝えたりといったことが、特別な悪意なく広まることがあります。

 感染への恐怖から、それが感染者探しを呼び、感染者をウイルスを持ち込んだ犯人のように非難し、排除しようとする圧力になることもしばしばみられます。感染リスクと隣り合わせながらも治療にあたる医療従事者への排撃も同様です。

 不運にもウィルスに感染された方は、意図せざる条件が重なってそうなってしまった患者です。誰一人といえどもこの可能性から逃れられない以上、全ての市民がともに守り合わなければならない人々です。

 にもかかわらず感染者を、ウイルスを広める犯人のように指弾しはじめたらどんなことが起こるでしょうか。

 感染を疑う自覚症状のある人が、非難を受けることを恐れてそれに気づかれまいと隠したり、病状を伏せて日常の活動を続けるようになるでしょう。

 感染の広がりがさらに猛威をふるう結果を招くだけです。

 またその事態を避けようと感染状況の正確な公表を関係機関にためらわせることで、公的情報の信頼性が揺らいで風評、デマのたぐいが地域社会を支配するようになるでしょう。

 ウイルスとの闘いにおいては、最悪な状況を招くだけです。

 さらにわれわれは次のことを理解しなければならないと思います。

 新型コロナウイルスの脅威は、新たなワクチンや抗体薬品が開発され、適切な治療法が確立してはじめて打ち消されます。それは決して短期間で完成せず、ウイルスの特性を見極め、臨床事例を重ねる幾多の取り組みがあって初めて成就されます。

 ウイルスに打ち勝つためには、感染の発生と事例の広がりを経なければならない。逆説的ではあっても、これが厳しい現実であり、新手の疫病と闘う人類の宿命です。

 感染者は社会に新たな危機を知らせ、さらにはこの脅威に打ち勝つための方策を先んじて教えてくれる人々であり、共同の運命を持つ戦列に連なって不幸にもその先駆けとなってしまった人々です。

 この人々を守り合うことができずして、どうしてウイルスに勝利することができるでしょうか。

 ましてや医療現場で献身する人々に、許しがたい偏見をもって接することは自殺行為に等しいことです。

 ウイルスを封じ込め、患者を治療する能力と資格を備えた人はそこにしか存在せず、ほかに替わりを務められる人はいないからです。

 人類社会の大きな危機に直面して、われわれは正気と英知をもって立ち向かうべきです。

 長く苦しい道のりを誤りなく進むために、私は新城市が次の規範に則って運営されるよう務めを果たしたいと思います。

 ・新城市民は感染者を孤立させず、互いに支えあいます。
 ・新城市民は医療従事者をはじめ最前線で奮闘する人々を守り、その負担を減らすために力を合わせます。
 ・新城市民は感染拡大をくい止めるためのあらゆる社会行動と連帯します。
 ・新城市民はこの事態のなかで生活や経営の困難に直面する人々を支援し、経済対策のさらなる充実をはかれるよう、国、県、近隣市町村との連携を強めます。

 以上

 新城市が条例をつくったら、この4つの規範をベースに、全国初の条例をつくるのだろう。イメージでいうと、氷山全体をとらえ、海の下のある大きな氷の塊まで含めて条例をつくると思う。大和市の条例は、海に出ている氷山の一部をとらえて条例をつくるものである。海の上の氷山の一部という意味は、マスクのほか、手洗い・うがい、三密を防ぐなど、マスクのほかのこともあるからである。

 日本において、同調圧力が、どのように展開するかは、簡単に予想できることである。他県ナンバーへの意地悪、マスク警察、なぜ帰省したのだという張り紙等々、負の連鎖は、予想通りである。マスクを強調すれば、どのようになるか、おのずと明らかである。
 
 これに対して、市民の暮らしを守る自治体がすべきことは何か。自治体は、どんなメッセージを送るべきなのかを考えてみたい。
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