松下啓一 自治・政策・まちづくり

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☆立法事実or政策事実(三浦半島)

2012-12-07 | 1.研究活動
 条例づくりには、立法事実が重要だという。立法事実とは、条例の目的と手段を基礎付ける社会的な事実(データ、市民意識など)である。こうした事実が、条例の成立時ととともに、存続時にもあるというのは、もっともなことであるが、はたして、「立法事実」という言葉が正しいのかという問題意識である。
 私は、条例づくりにおいて、立法事実という言葉は、狭すぎ、視点がずれていると考え、政策事実という言葉を使うべきではないかと考えている。2002年に書いた『自治体政策づくりの道具箱』(学陽書房)で提案し、その後、2010年の『政策条例の作り方』(第一法規)でも、政策事実を使っている。改めて、なぜ政策事実なのかを書いておこう。
 ①政策法務の理念からである。なかなかうまく言えないが、従来の霞が関法務の発想は、法律があって、そちら側から条例を審査する立場である。法規担当も、法律が基準で、その立場から原課の条例を見ることになる。こうした発想を転換し、自治体の政策立案側から、政策目的を達成するために提案した条例を実現することをターゲットに、それに合致するように法律を解釈して行こうというのが政策法務の理念であった。1990年代の後半であったが、だから、私は、政策法務に魅力を感じ、この世界に入ってきた。
 ②立法事実について、自治体法務検定公式テキストには、「違憲ではないか、法律に矛盾抵触していないかについての裁判所の審査に耐えられる主張をするために、実務上、「立法事実の説明資料」が必要になります」(p46 平成23年度版)と書かれている。立法事実論は、もともと司法審査側からの言葉で、対司法審査を意識して使われている。しかし、政策法務の立場からは、もちろん裁判所も意識するが、それだけではなく、市民も議会も意識して、条例をつくる。地方自治の目的は、市民の暮らしを守ることだから、市民のみんながそうだといえば、形式的な法律の文言など、簡単に乗り越えてしまう。その意味で、裁判所と同時に、市民を意識すべきだと思う。従来の霞が関法務と葉発想を転換し、政策法務の理念を表すために「政策事実」と言ったらどうかという提案である。
 ③条例や規則をつくるときには、立法事実という言葉はフィットするが、条例や規則は、あくまでも政策の一形式である。政策目的を達成するこのが大事で、その目的を達成するために、適切な形式を選ぶことになる。条例ではなくて、計画や予算のほうが適切なときは、こちらを選択する。計画や予算の場合も、その目的と手段を基礎付ける社会的な事実(データ、市民意識など)が必要なのは同じである。この場合も、「立法事実」が必要になるが、言葉として違和感がるので、そこで、これらを包含する概念として「政策事実」を言う言葉を使ったらどうかという提案である。
 余計なことであるが、たくさんの知り合いもいて、その顔が浮かんできて書きにくいが、先に例として出した『自治体法務検定』の内容には、正直なところ違和感を感じてしまう。全体に霞が関や裁判所からの目線を強く感じ、自治体から変えていこうという熱気が感ぜられないからである。これが「公式テキスト」だとすると、私の青春は・・・。
 余計なことを書いてしまったが、ついでにさらに余計なことを書くと、一緒に『政策条例の作り方』をつくった、第一法規の小川ユコリンは、どうしているのだろう。だいぶ会っていないが、お嫁さんに行ったのだろうか。
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