全国市町村国際文化研修所で新空き家条例を考えた。国会解散のどさくさの中で、空き家対策特措法ができたタイミングでの研修となった。
全国で空き家問題が顕在化し、それに対応する条例が作られてきた。平成22年の所沢市が最初で、今では300を超える自治体で空き家条例がつくられている。しかし、法的な裏づけという点では、条例だけではおぼつかないところもあり、国の法律が制定されることが要望されていた。
そうした中、今回は、議員提案で法律が提案され、全会一致で制定されたことになる。
今回は、議員提案になったが、もし内閣提案ならばどうだったろう。おそらく、まだまだできていないだろう。主管と考えられるは国土交通省であるが、国土交通省は、むしろ住宅の新規着工のほうがメインで、後始末的な空き家対策は傍流である。あわせて、空き家対策は、関係者も多岐にわたり、調整だけでも大変な苦労である。押し付け合いが続き、なかなか前に進めなかったかもしれない。
今回、解散総選挙のさなかであるが、ほぼ当初の参加予定者50数名が参加した。それだけ関心が強く、急ぎの対応を迫られているのだろう。当初、私は、法律はできないだろうと考えて、法律制定を受けた新条例については、考えていなかった。しかし、法律制定を受けて、ステージが変わったと考え、急遽、新空き家条例のヒントを話すことにした。
夜、ホテルで考えたもので十分なものではないが、参加者に概要とそのつくり方をした。
基本的な考え方は、空き家対策の全体像が見える総合条例をめざすものである。
①内容は、空き家になった後の対症療法だけでなく(つまり指導・助言、勧告、命令、代執行という行政法的手法)だけでなく、空き家にしない(未然防止、適正管理)、利活用するというものとなる。イメージは、リサイクルの3Rである。
②法律に書いてあることも条例に規定する。関係者が一覧できるような条例であるべきだからえある。新条例には、法律事項を確認し、さらには具体化・詳細化する規定も含まれる。
③メインは、新法第6条の「空家等対策計画」である。条例には、頭出しするだけでよいが、その実施計画づくりが、真の空き家対策の事業になるだろう。
④多くの関係者の役割、連携協力という規定も重要になる。空き家問題は、行政の一部局、あるいは役所だけでは対応できないからである。
試案では(そのヒント程度であるが)、全部で20条前後の条文構成になりそうである。
このように考えると、この条例の作り方も、変わってくる。役所が作って、「はいみなさん当事者ですよ」といっても、当事者意識を持ってもらうことはできない。関係者と協働で、条例を作っていくことになるので、そのための仕組みが必要になるだろう。今回は、時間がなくてそこまでは示すことができなかったが、市民協働立法的な手法を応用することになる。
今回の研修では、受講者には、たくさんの情報を持って帰ってもらおうと考えた。そこで、グループでつめた議論をしてもらう工夫と、せっかく集まった受講生同士で情報を出し合うことができるように工夫した。
その詳細については、ここで省略するが、全員の前での報告・発表でも、積極的な発言や提案、情報提供が行われる、いい研修となった(時間が足りないくらいだった)。
それには自由闊達な雰囲気づくりが必要になる。講義の中で、もし私が出世していたらとか、魚河岸シャツの話、マロン君がメンタルになった話などを随所にしたが、それは、私が話好きだからではなく、あくまでも、この雰囲気づくりのために、やむなく話したことであることを念のために記しておきたい。
ともかく、時間を使って、行ってよかったと思える研修になった。