松下啓一 自治・政策・まちづくり

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☆協働接遇マニュアル5・話し方

2019-06-06 | 1.研究活動

 同じ接遇でも、窓口と協働とでは、話し方のニュアンスは、少し違ってくるのだろう。

 各自治体の接遇マニュアルを見ると、同じような記述が多い。基本的には共通ということだろうし、どこかがタネ本となって、広がっていったのかもしれない。

 よくできていると思われる「生駒市接遇向上マニュアル」には、話し方については、次のように簡略に記載されている。 

【 話 し 方 】
①言葉づかい
□ 丁寧な言葉で忚対できていますか
□ わかりづらい専門用語、外国語、略語は使っていませんか

②話し方
□ ゆっくり、はっきりと聞き取りやすく話せていますか
□ お客様を丌安な気持ちにさせないよう、自信を持って話せていますか
□ 5W1Hの要領で、内容を整理して順序よく話せていますか 

③わからない時
□ わからないことを曖昧に返答していませんか 

④ことわる時
□ 「結構です」「いいです」等の誤解を招く言葉は使っていませんか
□ 「~できない」「~できません」のような否定的な言い方をしていませんか

 これは、窓口でも協働の場面でも、基本的には、この通りだと思うが、気になるのは、わからないときの対応である。

 私は、役所にいたときもそうであるし、研究者になってもそうであるが、わからないときは、わからないという。講演会などのあとで、質問をたくさん受け付けるが、わからないこと、知らないことはたくさんあるが、一所懸命考えて、少しでもヒントになることを言いますと、前もって、話をする。

 研究者に多いが、良くわからないのに、わからないと言えず、トンチンカンナことを言ったり、苦し紛れに牽強付会に話をこじつけたりする場面に出会うことがある。こちらがいたたまれなくなるが、分からないと言えば、気が楽なのにと思ってしまう。「知らないと言ったら死んでしまう病」に罹っている。

 自治体職員も同じで、「市民から知らないことを聞かれたら、答えられないと困る」という理由で、市民と接することを躊躇するという人もいる。

 役所は無誤謬で、何でも知っているというという前提であるが、そんなことはありえないことは、当然のことである。警察だって、犯罪を犯す。むろん、大いに注意するが、それでも間違いがあることは、仕方がないことという前提にならないと、無駄な確認コストがかかって、結局、「何もしない」が行動原理になってしまう。

 第一、何でも知っている行政とあまり知らない普通の市民というのは、対等とは言えない。それでは協働は成り立たない。協働は、それぞれの得意分野を発揮することである。

 ただ、行政は何でも知っている、知っているべきだという社会の前提のなかで、個人の努力で、「よくわからない」と答えるのも、難しいかもしれない(私は、職員時代、よくわからないがを素直に言ったが、何の問題もなかった。仕事ができないやつと思われたかもしれないが、知らないのだから仕方がない)。そこに、分からないことは分からないと答えて、そのあとのフォローをしっかりやるという方向性を出すマニュアルをつくることは、意義があるだろう。

 窓口ではなく、協働の場面では、従前の接遇マニュアルより、もっと踏み込んだ対応例を示すことができるだろう。
 
 

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