松下啓一 自治・政策・まちづくり

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☆住民と市民(自治基本条例)

2011-11-06 | 1.研究活動
 議論が錯綜しているようだ。事実を踏まえてから、その先の議論が必要だと思う。
 1.地方自治法では、「住民」の権利・義務を規定している。その代表的なものが、自治体から役務の提供を受ける権利と負担を分任する義務(要するにサービスを受ける権利と税金を払う義務。法10条2項)と住民監査請求・住民訴訟(法242条、242条の2)である。
 この住民とは、その自治体に住所を有する人が「住民」で、日本人、外国人、法人も含まれる。住民である外国人も、住民訴訟の前提として、自治体の施策そのものの是非をめぐって(つまり、市長の判断が誤っていると言って)、裁判に訴えることができる。この点については、異論がない。
 2.住民の情報提供権、参加権は、これら権利の前提として認められる。きちんとした役務の提供を受けるために、正しい情報の提供を受け、参加して意見を言うことができる。逆に言うと、これまで情報を提供せず、参加させなかったために、住民の誤解や思いとの乖離が生じて、つまならぬトラブルが発生した。この時代、そんな軋轢を起こしている余裕はない。今こそ、協力して、一人ひとりが安心して暮らせる地域をつくっていくときだからである。つまり、住民であれば、外国人にも情報提供権、参加権は認められる。
 3.外国人の参政権については、周知のとおり、意見が分かれている。外国人に地方参政権を付与するのは立法政策というのが判例の見解とされている。要するに、国政ならば主権の問題が出てくるが、役務の提供(サービス)と助け合いが、業務である地方自治の場合、外国人に参政権を認めたほうが、住民全体にとって、プラスかマイナスかを多面的に議論して決めるべきだという考え方である。どういう地域づくりをしていくのか、将来をにらんで、住民によるさまざまな議論が必要であろう。
 4.自治基本条例で規定される「市民」というのは、住民よりも広い概念である。住所は持っていないが、その町で活動している人の意味である。あえて、市民という概念をつくるのは、「住民」だけでは、サービス提供や助け合いができないからである。たとえば、大阪のように、外から働きに来る人が多い町は、住民だけでは、まちの安全も維持できない(逆に、バスが一本も通らない町では、住民だけで、サービス提供や助け合いをするしかない。ここでは、「市民」概念を規定する必要がない)。要するに町によって違ってくる。大阪にいたとき,JR西日本の脱線事故があった(ゼミ生も巻き込まれた)。そのとき、真っ先に、助けに入ったのは、近くの工場で働く人たちである。その多くは、「住民」ではなく、尼崎に働きに来た「市民」である。多くの町では、「市民」の協力なく、まちはつくることができなくなっている(交通網等の発達で、それだけ広域化しているということである)。ましてや、人口減少が進み、ますます定住人口は減少する。住所はないが、その町で活動する「市民」をまちのために、頑張ってもらうように取り込むのが、自治経営だろう。それができた町が、活気を維持していく。
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