違法判決が続く中、附属機関を条例設置とする条例ができはじめる。
本来ならば、例えば、総合計画の審議会について、この審議会設置条例を提案することになるが、これら附属機関を一覧表にして、「これらを附属機関とする」条例がつくられる。これで附属機関は条例で設置するという138条の4の規定が満たされることになる。
1.全国の附属機関条例は、大別すると2つのタイプに分かれる。
(1)一覧表を示す条例
(2)一覧表に加え、例外的に執行機関限りで規則で附属機関を置けるという委任規定を定める条例である。
2.一覧表は限定列挙なので、これに外れた委員会は、附属機関にはならない。
どこが違うかというと、附属機関ならば、執行機関からの諮問等に基づく調査審議及び報告・答申・提言等ができるが、附属機関でないと、これら提言等ができず、参加者からの意見聴取にとどまる。つまり、みんなで議論した結果をまとめて、こうしたらよいという提案ができないのである。これに関連して、会長等の選任、定足数の設定、議決要件の設定も不可とされる。
3.(2)は、これでは窮屈なので、執行機関に委任できるという例外を置く条例がある。
指定都市で調べてみると、いくつかのタイプに分かれる。
①特定の行政課題を調査し、又は審議するため、緊急又は臨時の必要がある場合(設置期間が1年以内のものに限る)札幌市
②執行機関等が必要があると認めるとき(設置期間が1年以内のものに限る)静岡市
③契約の相手方の選定に係る審査会,臨時的な行政課題について調査審議する(設置期間が2年以内のものに限る)神戸市
④契約の相手方の選定に係る審査会,臨時的な行政課題について調査審議する(設置期間が2年以内のものに限る) 岡山市
⑤市が発注する業務等に係る受託者の選定に関し必要な審査又は審議をするもの、災害、事故その他の臨時に生じた行政課題への対処に関し必要な調査又は審議をするもの(設置期間が1年以内のものに限る) 熊本市
⑥市長その他の執行機関は,その定めるところにより,設置期間が1年以内の附属機関を置くことができる。京都市
4.詳しく見ると、
(1)契約の相手方選定はいろいろなパターンがあり、これをいちいち条例化するのは煩雑であることから、これは、その通りであろう。札幌市は、このケースの記述がないが、「緊急・臨時」で読むのだろうか。
(2)「臨時的」には、緊急も含むであろうから、あえて書かなくてもよいだろう。
(3)静岡市や京都市は、執行機関が決めれば、臨時とは言えなくても、附属機関を設置できる。なお、京都市では、「3 市長その他の執行機関は,前項の規定により附属機関を設置したときは,その旨を市会に報告しなければならない」。この担保があるので、執行機関に広範な裁量権が許される規定になっている。
(4)いずれも期間を限るのは、白紙委任という批判を避けるためだろう。例外的な措置であること示している。
(5)1年と2年では、1年のほうが多い。これは「臨時」の解釈と実際の運用の絡みとの関係である。1年で何とかなるという判断だろう。
条例から規則への委任は、個別・具体的な範囲でできるが、これが個別・具体の内容ともいえる。
このようにみると、執行機関への委任は、ある程度の相場ができはじめているといえる。
5.私は、どのように考えているか
(1)附属機関条例主義の例外として、臨時という考え方は、たしかに、これは分かりやすい。短期の会議でも、そのたびに条例としますか?という問いかけられたら、そこまでは必要ないという答えになる。議会に説明する際に、分かりやすさは、やはり重要である。
(2)いつまでも続く懇談会ならば、きちんと条例で行けと言う話になる。臨時だから1年というのは分かりやすい。2年の説明は、やや骨が折れるだろう。
(3)しかし、スジからいえば、臨時だからという説明は、少し違うと思う。
・すでにみたように、条例設置の附属機関とともに要綱設置の附属機関を認めるのが、二元代表制や本条の立法趣旨にかなう(論理解釈)。
・厳しい時代の自治経営は、市民を自治の当事者に巻き込む必要がるが、要綱設置の会議はそのひとつである。
・参加者からの意見を聞くだけでなく、みんなで集まって、どういう市民参加がいいかなど自治の課題を議論し、市民の意見をまとめて提言していくような仕組みが必要になる。
・市民参加の懇談会は、時間がかかる。一般的には、1年で終わらず、2年くらいはかかることも多い。
(4)この立場でいえば、附属機関条例は、次のようになるだろう。
・この附属機関条例は、条例設置の附属機関に関する条例で、それとは別に、執行機関が要綱で設置できる附属機関があること
・要綱設置の附属機関の例として、たとえば「情報・政策立案への市民からの助言・参考のための懇談会」などを例示することになる。
・この場合、京都市条例のような、「市長その他の執行機関は,前項の規定により附属機関を設置したときは,その旨を市会に報告しなければならない」という規定を担保として入れるのが好ましいだろう。
6.5の作業と説明は厄介である。本質的な説明と相手側の理解力が必要になる。現実の条例制定過程において、うまく理解してもらえないかもしれないという意見も出るだろう。また、条例設置の附属機関と要綱設置の附属機関の分水嶺をうまく記述できるのかという技術的な問題もある。
(1)そこで、これらを飲み込んだうえで、「市長その他の執行機関は,その定めるところにより」として委任できる場合も広めにとり、それと「議会への報告」をセットとして、いってこいの関係にして、条文をつくるというのは、大人の知恵としてあるかもしれない。
(2)その場合、1年では短すぎる。実際には、2年くらいは必要であるが、これでは白紙委任みたいなものという批判を受けるかもしれない。1年ではまとまらない事例をうまく考えて、2年で頑張るという手もある。それができなかったら、「原則として1年」とするのもあるだろう。タイミングの関係で、1年と1日という場合もあるし、突発的なこともあるので、「原則とした」としたが、1年が延びてしまったら、その理由も含めて「議会に報告する」から、白紙委任にはならないと説明する手はどうだろう。
本来ならば、例えば、総合計画の審議会について、この審議会設置条例を提案することになるが、これら附属機関を一覧表にして、「これらを附属機関とする」条例がつくられる。これで附属機関は条例で設置するという138条の4の規定が満たされることになる。
1.全国の附属機関条例は、大別すると2つのタイプに分かれる。
(1)一覧表を示す条例
(2)一覧表に加え、例外的に執行機関限りで規則で附属機関を置けるという委任規定を定める条例である。
2.一覧表は限定列挙なので、これに外れた委員会は、附属機関にはならない。
どこが違うかというと、附属機関ならば、執行機関からの諮問等に基づく調査審議及び報告・答申・提言等ができるが、附属機関でないと、これら提言等ができず、参加者からの意見聴取にとどまる。つまり、みんなで議論した結果をまとめて、こうしたらよいという提案ができないのである。これに関連して、会長等の選任、定足数の設定、議決要件の設定も不可とされる。
3.(2)は、これでは窮屈なので、執行機関に委任できるという例外を置く条例がある。
指定都市で調べてみると、いくつかのタイプに分かれる。
①特定の行政課題を調査し、又は審議するため、緊急又は臨時の必要がある場合(設置期間が1年以内のものに限る)札幌市
②執行機関等が必要があると認めるとき(設置期間が1年以内のものに限る)静岡市
③契約の相手方の選定に係る審査会,臨時的な行政課題について調査審議する(設置期間が2年以内のものに限る)神戸市
④契約の相手方の選定に係る審査会,臨時的な行政課題について調査審議する(設置期間が2年以内のものに限る) 岡山市
⑤市が発注する業務等に係る受託者の選定に関し必要な審査又は審議をするもの、災害、事故その他の臨時に生じた行政課題への対処に関し必要な調査又は審議をするもの(設置期間が1年以内のものに限る) 熊本市
⑥市長その他の執行機関は,その定めるところにより,設置期間が1年以内の附属機関を置くことができる。京都市
4.詳しく見ると、
(1)契約の相手方選定はいろいろなパターンがあり、これをいちいち条例化するのは煩雑であることから、これは、その通りであろう。札幌市は、このケースの記述がないが、「緊急・臨時」で読むのだろうか。
(2)「臨時的」には、緊急も含むであろうから、あえて書かなくてもよいだろう。
(3)静岡市や京都市は、執行機関が決めれば、臨時とは言えなくても、附属機関を設置できる。なお、京都市では、「3 市長その他の執行機関は,前項の規定により附属機関を設置したときは,その旨を市会に報告しなければならない」。この担保があるので、執行機関に広範な裁量権が許される規定になっている。
(4)いずれも期間を限るのは、白紙委任という批判を避けるためだろう。例外的な措置であること示している。
(5)1年と2年では、1年のほうが多い。これは「臨時」の解釈と実際の運用の絡みとの関係である。1年で何とかなるという判断だろう。
条例から規則への委任は、個別・具体的な範囲でできるが、これが個別・具体の内容ともいえる。
このようにみると、執行機関への委任は、ある程度の相場ができはじめているといえる。
5.私は、どのように考えているか
(1)附属機関条例主義の例外として、臨時という考え方は、たしかに、これは分かりやすい。短期の会議でも、そのたびに条例としますか?という問いかけられたら、そこまでは必要ないという答えになる。議会に説明する際に、分かりやすさは、やはり重要である。
(2)いつまでも続く懇談会ならば、きちんと条例で行けと言う話になる。臨時だから1年というのは分かりやすい。2年の説明は、やや骨が折れるだろう。
(3)しかし、スジからいえば、臨時だからという説明は、少し違うと思う。
・すでにみたように、条例設置の附属機関とともに要綱設置の附属機関を認めるのが、二元代表制や本条の立法趣旨にかなう(論理解釈)。
・厳しい時代の自治経営は、市民を自治の当事者に巻き込む必要がるが、要綱設置の会議はそのひとつである。
・参加者からの意見を聞くだけでなく、みんなで集まって、どういう市民参加がいいかなど自治の課題を議論し、市民の意見をまとめて提言していくような仕組みが必要になる。
・市民参加の懇談会は、時間がかかる。一般的には、1年で終わらず、2年くらいはかかることも多い。
(4)この立場でいえば、附属機関条例は、次のようになるだろう。
・この附属機関条例は、条例設置の附属機関に関する条例で、それとは別に、執行機関が要綱で設置できる附属機関があること
・要綱設置の附属機関の例として、たとえば「情報・政策立案への市民からの助言・参考のための懇談会」などを例示することになる。
・この場合、京都市条例のような、「市長その他の執行機関は,前項の規定により附属機関を設置したときは,その旨を市会に報告しなければならない」という規定を担保として入れるのが好ましいだろう。
6.5の作業と説明は厄介である。本質的な説明と相手側の理解力が必要になる。現実の条例制定過程において、うまく理解してもらえないかもしれないという意見も出るだろう。また、条例設置の附属機関と要綱設置の附属機関の分水嶺をうまく記述できるのかという技術的な問題もある。
(1)そこで、これらを飲み込んだうえで、「市長その他の執行機関は,その定めるところにより」として委任できる場合も広めにとり、それと「議会への報告」をセットとして、いってこいの関係にして、条文をつくるというのは、大人の知恵としてあるかもしれない。
(2)その場合、1年では短すぎる。実際には、2年くらいは必要であるが、これでは白紙委任みたいなものという批判を受けるかもしれない。1年ではまとまらない事例をうまく考えて、2年で頑張るという手もある。それができなかったら、「原則として1年」とするのもあるだろう。タイミングの関係で、1年と1日という場合もあるし、突発的なこともあるので、「原則とした」としたが、1年が延びてしまったら、その理由も含めて「議会に報告する」から、白紙委任にはならないと説明する手はどうだろう。