「条例の域外適用-ヘイトスピーチ抑止条例を契機に」(雑誌『ガバナンス』2020年4月、5月号)に書いた、先行論文がないなかで、まとめてみた。
元原稿は、2019年に自治体学会の公募論文に出してみた。一部書き直しになったが、面倒になったので、ガバナンスに出してもらった(面倒とは、査読をした人のコメントが、若干、的外れだったので、再提出はやめることにした)。
この論文を書くマグマは、次の通りである。
「簡単な話である。自治体の住民たちが、自治体外から、ネット等によってヘイト攻撃を受けて苦しんでいる。そんなとき、当該自治体は、域外から行われた行為だからと言って、何もしないで放っておくのか。住民の福祉を実現するのが、自治体の役割である。住民が困っているのに、属地主義だからと言って、何もしない自治体がいたら、そんな自治体は、住民から即座にアウトを宣告されてしまう」
論文構成
条例の域外適用-ヘイトスピーチ抑止条例を契機に
はじめに
1.ヘイトスピーチ抑止条例
・ヘイトスピーチ抑止条例
・区域外で行われたヘイトスピーチと対応
2.属地主義の原則と例外
(1)属地主義の原則
・属地主義とは
・属地主義の根拠
(2)行政課題と域外適用の広がり
・反トラスト法、独占禁止法等
・個人情報保護法75条
3.条例の域外適用
(1)先行事例
・情報公開の開示請求権者
・個人情報保護条例の罰則
(2)域外適用の必要性・背景
・区域を越えた市民の暮らし
・新たな情報ツールと市民の暮らしへの影響
・法律の後追い-法律を待てない事情
4.域外適用の理論
・消極的属人主義・保護主義
・効果理論
・国際関係と地方自治の違い
5.域外適用の課題
・地域における事務
・他自治体の権限を侵害のおそれ
・不意打ちのおそれ
・執行の困難性
・国への働きかけ
6.域外適用を認める規制条例の制定にあたって
①法律の不存在
②域外で自治体の住民に被害を与える行為が行われていること
③域外の活動によって、放置できないくらいに、自治体や住民の利益が直接的、実質的に侵害されていること
④行為者において③の結果が生じることが予測可能なこと
⑤当事者の認知や意見提出の機会等、手続的適正さが担保されていること
⑥実効性の確保に一定程度の見込みがあること
7.条例の域外適用理論の発展-域外をターゲットとするまちづくり政策へ
6の項目が、ちょっと良かったと思っている。