巻末のお母さんへの思いには本当に涙しました。
中学時代の出来事です。
突然家が差し押さえされます。
兄と姉と本人の3人の子どもに対して、
父は「こういう事だから解散」とバスガイドが名所を指差して案内するように差し押さえられた家を指差して言ったそうです。
「一体如何ういう親?」と思ったのですが、
事業に失敗したわけでもなく、
博打や酒におぼれて借金を作ったわけでもないのです。
母もパートで働いていました。
それも随分無理をしていたようで
過労で倒れた時は直腸がんが随分進行していました。
そして帰らぬ人となったのです。
その後、父も直腸がんになります。
幸い発見が早かったので一命は取り留めましたが、
闘病している間に会社を首になります。
なんとひどい国なのでしょうね。
一生懸命働いて体を壊してまで働いてきたのに。
誰も手を差し伸べてくれません。
それどころか、今まで尽くしてき会社からは、使い物にならなくなったら捨てられるんですね。
今の世の中は本当にひどいです。
そんな不幸のどん底でとり残された3人の兄弟たちは仕方なくホームレスとなり、
公園や神社で野宿の生活が始まります。
誰かに助けを求めたら良かったのですが3人とも一番多感な年頃、
かっこ悪い気持ちや、人に迷惑はかけたくないという気持ちの方が強くて何とか自力での生活を試みます。
しかし、空腹に耐えかねて友達に相談したことから運命の出会いがあります。
事情を知った友人の両親や近所の人が生活保護を受けられるようにしてくれます。
こんなひどい世の中ですが、捨てたもんではないですね。
近所の人たちは、心温かくいい人ばかりです。
人はみんな誰かに助けられながら、助け合って生きているのですね。
今まで食べんものがこんなにおいしいものだと味わって味わって感謝しながら食べたこともなかったでしょう。
たった一膳のご飯をどうやったら満腹感を味わえるか、噛み方で工夫もします。
こんな辛い思いをするのなら、早くお母さんの元に行きたいと思ったのも正直な気持ちでしょう。
でもそんな時ひとりの先生との出会が彼を救います。
その先生に自分が生きている価値を教えてもらいます。
そこに希望を持ちまた生きる勇気をもらいました。
このときマザーテレサを思い出しました。
路上で行き倒れて今にも死にそうな人たちにマザーがかける言葉は、
「この人たちはお腹がすいて食べるものがほしいのではないのです。
一人の人間として生きている事を誰かに認めてほしいのです。」
その言葉とダブります。
先日もテレビで「ワーキングプアー」の番組がありました。
人が信じられない。自分が生きている意味や価値がわからない。
人をそんな思いにさせる今の世の中があります。
彼の心のよりどころは大好きなお母さんです。
何をする時でも必ずお母さんがどこかで見守ってくれている。
お母さんが悲しむようなことは出来ない。
そんなとても強い親子の絆を羨ましくも思いました。
そして彼の偉いところは、
一切愚痴も言わない、
そして周りの人をを恨んだりしないところです。
「解散」と言ったお父さんに、しばらくして一度街で出会うのですが、
そのときも何も言わず分かれます。
自分たちを捨てたお父さんにも恨みは持っていないのです。
本当に心の優しい人なのでしょうね。
きっと大好きなお母さんに愛情いっぱいで育てられたからなのでしょうね。
彼のお母さんに対する気持ちが感動的でした。
「いつか、ぼくを見て周りの人が、僕ではなく、お母さんのことを褒めてくれるような立派な人間を目指して。」
親子の絆や家族の大切さを考えさせられる1冊でした。