少しだけ One for All

公的病院の勤務医です。新型コロナウイルスをテーマの中心として、医療現場から率直に綴りたいと思います。

新型コロナウイルス ---見えてきたかもしれない光--- 3

2021-10-16 00:19:05 | 日記
 今回の極端に急激な感染減少は、ひょっとして感染の終息に関係する出来事なのでは?と考えて検証を始めました。感染の終息のために必要と考えられているのは、「感染力が強いけれども、毒性は弱い変異株」です。今回の感染の主役であった変異株、デルタ株がこの条件を満たしていれば、デルタ株によって終息に向けた歩みがすすめられたと言えるかも、ということになります。
 「感染力が強いけれども、毒性は弱い変異株」を「終息株」と名付けることにします(実際にそういう名前があるかどうかは知りません)。「感染力が強い」という条件に関して、デルタ株は十分に終息株の条件を満たしていました。今回は、終息株のもうひとつの条件である「毒性が弱い」かどうかということに関して、デルタ株が満たしているかを検証してみます。少し考えるとデルタ株は凶悪で、毒性の強い変異株だったはずですが、、、
 今回も、CくんとRさんの会話形式をとらせていただきます。
  
R:確かにデルタ株が「感染力が強い」のは間違いないわね。でも、Cくんが言うように、そんなに簡単に救世主の終息株候補に入れてしまっていいものかしら。だって、病院はパンクしていたし、自宅で亡くなってしまった人までいたのよ。「毒性が弱い」という条件には当てはまらないんじゃないかしら?
 
C:そうかなぁ、、、?テレビとかでは確かにたくさん騒いでいたけど、でも日本ってコロナ病床がとっても少ないんじゃなかった?病院がパンクしていたのはそのせいかもしれないよ。自宅で亡くなった人たちは、もしかしたら病院で酸素を吸ったり、点滴をしていたら助かっていた人かもしれないんじゃない?たくさんの患者さんがいたけれど、同じようにたくさんの患者さんが、自宅療養のままで病院にもかからずに良くなったって話も聞いたよ。それだったら、重症になる人や不幸にして亡くなった人の割合は、もしかしたら実は低くなっている、ってことはない?
 
R:確かにそうね、、、。調べてみようか。(スマホで検索)デルタ株、重症化率、死亡率、、、あ、デルタ株のデータが出てきたわ。重症化率も致死率も従来株に比較して同じかそれ以上だって。確かにオリンピックの頃はそんなふうに聞いてたわよね。やっぱりデルタ株は「毒性が弱い」なんてことはなくて、むしろ毒性も強い変異株で、たくさんの重症例の報告もあるわ。そういえば、外国では酸素不足までおきてたもの。残念だけど、デルタ株の毒性は強いとしか言えないみたい。デルタ株は、救世主の終息株候補にはなれないわね。
 
C:そうなんだね。残念。じゃあ、なんでこんなに急に減ったんだろう、、、

R:(スマホで検索)新型コロナウイルス、重症化率、第5波、、、あ、でも待って、第5波の重症化率と致死率を教えてくれてる記事があるわ。読んでみるね。
 
C:ねえねえ、R姉ちゃん。記事はきちんと選ばないといけないよ。その記事、誰が書いているの?いろんな人がいろんなことを書いてるから、はじめは眉唾で読まないといけないと思うよ(もちろんこのブログもですね。眉唾で読んでください(笑?)もちろん私は真剣ですけど)。
 
R:大丈夫よ。有名な大学の偉い先生が書いているわ。この先生、わたしテレビで観たことあるし、きっとCくんも知ってるよ。
 
C:どれどれ、、、あ、ほんとだ。テレビで観たことある人だ。この人が言うことなら信頼できそうだね(ちなみに私は本人ではありません。そんなえらい人でもありません。念のため。万が一、これをご本人が読まれることがあったらごめんなさい。どうかご勘弁ください。万が一にでもないとは思いますが念のため)。で、なんて書いてあるの?
 
R:待ってよ。今、読んでるところなんだから、、、あ!?第5波では重症化率・致死率が大きく下がっている、って書いてあるわ!
 
C:あれれ?さっきの話だと、デルタ株は従来株と変わらないかもっとひどいウイルスっていうことじゃなかった?
 
R:そのはずよ。
 
C:だったら変じゃない?本当に重症化率とかが下がったって書いてあるの?
 
R:本当よ。大阪のデータだけど、第4波の重症化率は3.2%だったのが、第5波では0.99%に下がったって書いていあるわ。致死率はもっと下がっていて、第4波では1.9%だったのが、第5波は0.2%だって。ええ!?なんと致死率は10分の1に低下したって書いてあるわ。どういうことかしら、、、
 
C:きっと理由も一緒に書いてあるよ。先を読んでみてよ。
 
R:そうね、、、あ、書いてある。最大の要因はワクチンによるものと考えられるそうよ。抗体カクテル療法が承認されたことも役立ったのではないかともあるわ。ワクチン接種者では重症化が起こりにくくなることが改めて示された、とも書いてあるわ。デルタ株には確実にワクチンが効いていたのね。そのことが一番の要因みたい。
 
C:ふーん(目つきがキラーンとして斜め上を見たCくん)、、、ねえねえ、R姉ちゃん。
 
R:なに?Cくん。
 
C:デルタ株って、重症化率も致死率も、ホントはそれまでのウイルスに比べて悪いウイルスだったんでしょ?
 
R:そうよ。
 
C:でも、ワクチンをうった人が増えたり、抗体カクテル療法ってのができるようになったから、重症化率と致死率が下がったわけだよね?
 
R:そうね。そう書いてあるわ。
 
C:だったら、デルタ株そのものはとっても悪い変異株かもしれないけど、ワクチンや治療法が効くことで、社会全体に対しては毒性が弱くなったとは考えられないかな?
 
R:なるほど、そうね。いくらウイルスの毒性が高くても、ワクチンや治療法を加えた結果致死率が下がったのなら、社会全体に対しては「毒性は低い」って言えるかもしれないわね。
 
C:だったらさ、見方によっては、終息株の条件である「毒性は弱い」というところも、ひょっとしたらデルタ株は満たしているって言えるんじゃない?
 
R:え、まさか。でも、確かに、、、
 
C:でしょ。それだったら、デルタ株は「感染力が強いけれども、毒性は弱い変異株」になっていた、とも言えることになるよ。だったら、救世主の終息株の候補にデルタ株は十分ノミネートされてもいいんじゃない?
 
R:うん、確かにそうだわ、、、ということは、、、何が言いたいの?Cくん。
 
C:だからさ、今回急に感染者が減ったのは、もしかして救世主の終息株が出てきたから、とは考えられないかな、ってことだよ。終息株が出てきたときの、社会的な感染防御が成立した過程を見ているのかもしれない、ってこと。
 
R:え、、、まさか。、、、デルタ株が救世主の終息株ってこと、、、?
 
C:それは、本当のところはわからないよ。でもね、現実に極端までに急速に感染者数が減ったよね。これは事実だよ。それで、終息株となれる条件を元にデルタ株を見直してみると、条件は満たしているってことだよ。可能性は十分にあるんじゃない?
  
R:そうね。そうなるわね。そうだとしたら、すごくうれしいかも。でも、そんなにうまくいくものかしら。
 
C:あくまで、デルタ株が終息株である可能性はある、ってことだよ。いくら実際にそうだったとしても、このままおさまるとは思ってはないよ。だって、ウイルス自体が弱毒化したわけではないからね。それにワクチン接種できない人や接種しない人もたくさんいるし。だけどね。一時的にせよ感染防御が社会的に成立する過程が見られていたかもしれないとしたら、どう?なんだか嬉しくならない?いつ来るかも、本当に来るかもわからなかった終息の実感を、もしかしたら今回みんなで感じることができたかもしれない、ってことなんだ。
 
R:そうかあ。そうよね。とてもうれしいことよね。まだわからない波が来るとしたって、終息の実感を感じられれば、もうひと頑張りもふた頑張りもできる力が湧いてくる気がするわ。
 
C:そうでしょ。たとえこの先にまた感染の波が来たって、ボクたちは確実に感染の終息に向かって歩いているってことが、今回わかったんじゃないかって思うよ。「いつまで続くかわからない。幸運にして第5波はおさまった。第6波に備えなさい」って言われるのと、「今回は第5波の収束だけではなく、この先に大波の減衰が得られる終息の第一歩だった可能性がある。確実に終息に向かって歩いていると思われるから、もうひと波、ふた波頑張りましょう」って言われるのとでは、随分と気持ちが違うと思うんだ。
 
R:ほんとにそうね。なんだか力が湧いてくる気がするわ。これまでのことが無駄じゃなかったってことだもんね。いつまでもこれが続くんじゃない、終わりがあるってことでもあるもの。そうか、、、だから急に感染者数が減ったのか、、、
 
C:へへへ、R姉ちゃんも人を信じやすいね。こんなこと、ほかに誰も言っていないことだよ。ボクが言ったことをそんなに素直に信じていいの?
 
R:もう、うるさいわね。でもね、Cくんの言ったとおりであってほしいって思ったわ。だってそれだったら、一時的にせよこれまでの努力が報われて、出口の一端が少し見えたわけだから。
 
C:そうだよね。やっと目に見える効果が出始めたのかもしれないって思えたら元気になるよね。これまでは出口の出の字も見えなかったんだから。
 
R:そうよね。わたしはCくんにだまされてみようかな。責任はちゃんととってよね。
 
C:大丈夫だよ。責任はSにいさんにとってもらうから(笑)
 
 最後まで読んでくださった方がおられましたら、ありがとうございます。
 続きます。



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