少しだけ One for All

公的病院の勤務医です。新型コロナウイルスをテーマの中心として、医療現場から率直に綴りたいと思います。

新型コロナウイルス ---見えてきたかもしれない光--- 2

2021-10-15 00:16:16 | 日記
 あえて希望的な側面から今回の急激な感染者数の減少を考察してみたいと思います。少なくとも急激に感染者が減じられたことは希望ある事象ですから。
 
 大前提として、新型コロナウイルス対策の最終的な目標(ゴール)は「感染の終息」です。「感染の終息」にすすむとき、どのような経過となるでしょうか。それを明らかにした上で、予測される終息の形から逆算して見てみたいと思います。
 
 ※「感染の終息」があるのかないのか、ウイルスのすべての変異の動きが想定できないので、実のところ判断はできません。でも、そんなことを言っていたら、身も蓋もなく話も進まないので、「感染の終息」はある、と仮定します。
 
 これだけ広がったウイルスが、地上から消え去るという形での終息はまず考えられません。そのため、いわゆるウィズコロナの状態で社会に大きな影響を与えなくなる、という形での終息が最も考えられています。すなわち、歴代のいわゆる4種類のコロナウイルスのように、現代では風邪症状を引き起こすものとなっているコロナウイルスたち(HCoV-229E、HCoV-OC43、HCoV-NL63、HCoV-HKU1)のように、病原性が弱毒化したものだけが残るという形でのウィズコロナです。そのとき、完全に世の中からCOVID-19 (SARS-CoV-2) はなくなっていませんが人類に危機をもたらすという形のパンデミックは終息していると言えるでしょう。これが目指す終息の形と予測されています。
 
 そうなると、ウィズコロナの状態で「感染の終息」を得るために必要なものは、「感染力は強いけれども、毒性は弱い変異株」です。
 「感染力は強いけれども、毒性は弱い変異株」は、感染力で上回ることで他の変異株を淘汰して世界を席巻します。でも毒性は弱くて、入院に至る人は少なくて、集中治療室が占拠されるようなこともなく、社会を混乱させません。そんな変異株が誕生したら、感染者はたくさん生じたとしても、人類にコントロール不可能な脅威を与えるという意味でのパンデミックは終息に向かうことになります。
 
 ※ちなみに「感染力が強くて、毒性が極めて強い変異株ができた場合も、感染した宿主が他に感染させる間も無くみんな死んでしまうので終息する。SARSはそうやって一旦終息した。」との意見もあるかもしれませんが、これだけ人類に広く行き渡ったあとでは、その終息パターンは成立しないと思われます。強毒の変異株は確かになくなっていくでしょうが、宿主が亡くなることを伴うために、医療機関に隔離もされるため、どうしても感染は限定的になり、例えばいくら一国でその強毒株で終息したところで、他の国で流行っている他の変異株は生き残り、広がり続けるだろうからです。すなわち、いくら武漢や中国国内で完璧に抑えたところで、他国で燃え広がり続けているのと同じようなことです。それはパンデミックの終息ではありません。閑話休題。
 
 ですから、私たちが今、耐えて耐えて耐え忍んでいるのは、ある意味では、「感染力は強いけれども、毒性は弱い変異株」の出現を待っているとも言えます。その変異株が(変な例えですが)救世主みたいなものになるわけです。ウイルスが変異することは厄介ですが、変異することで終息への期待を持てる、という逆説的な側面もあるわけです。(不謹慎かもしれませんが、少しおもしろく感じませんか?)
 
 では、今回のデルタ株はどうでしょうか?救世主たりうる「感染力は強いけれども、毒性は弱い変異株」にあたるでしょうか?ちょっと考えると、毒性は強いはずですが、、、
  
 堅苦しくて理屈っぽくて申し訳なく思います。ここから、少しでもわかりやすくなることを願って、少し会話形式をとらせてもらいたいと思います。CくんとRさんの会話形式としました。
 まずは「感染力は強いけれども、毒性は弱い変異株」の前半、「感染力が強い」かどうかの検証です。コ、、、えへん、おほん、、、Cく〜ん!
 
Cくん:あれれ?そういえばR姉ちゃん、デルタ株って感染力がすごく強いんじゃなかったっけ?ウイルス量がアルファ株(初期の従来株)の1000倍以上あって、「すれ違っただけでも感染する」って、すごい危険性を報告する研究機関があったよ。今回の第5波だって、爆発的に増加したのは、このデルタ株だったからでしょ?感染力が強くて、家庭内感染がほぼほぼ免れなかったことが感染爆発の大きな要因のひとつだったってテレビで言ってたよ。だったら、「感染力が強い」のは間違いないよね。、、、ということは、救世主になる変異株の候補だってことじゃない?
 
 希望が膨らむ感じに思えませんか?
 ここ(デルタ株の感染力が強いこと)には異論はないように思えますがいかがでしょうか。
 次は「感染力は強いけれども、毒性は弱い変異株」の文言の後半、「毒性が弱い」かどうかを検証します。これが「毒性が弱い」と出れば、デルタ株は実は救世主の変異株なのかも、ということになるわけです。少し考えると、デルタ株は凶悪な変異株だったはずですが、、、
 
 この検証がこのテーマの最も大切なキモになります。
 続きます。


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