A.N.A.L. Co., Ltd. Executive Office of the President

“ 嵐が吹き消した 恵みのろうそくを 再び取り上げ、それに新しい明かりを灯さなければならぬ。” 教皇ヨハネ二十三世

file.no-110 『 ガイアの復讐 』 parte02

2011-03-21 23:01:17 | 書籍

生物にとっての生存可能環境を、自動的に調節するシステムを『ガイア』 とするのなら、顔の近くをまとわりつくハエや蚊を、我々人間が無意識に潰すように、システム上の異物として ガイアが人間を排除する。
いつかは、そうなる可能性があることに警鐘を鳴らすのも、本書の内容の一部です。

例えが変だったろうか。
―― 体内に入ったウイルスを、人間が免疫力で殺すように。 あるいは、風邪になっても、自動的に発汗・発熱して体を治そうとするように。
―― 自動的に、異物を排除するように、ガイアの「調節システム」 が動くのも論理に飛躍はないのだということ。

近年、人間が地球の生物圏を大混乱に陥れているのは、周知の事実。
北朝鮮のブロッコリ頭やカダフィ大佐が、国際平和と国民の生活を脅かす―― とかなんとか言っていますが。
それ以前に、人間がいなくなったほうが、人間以外の動物や微生物にとっては よほど有益だということも、誰もが分かっていても、けして議論しない 「不都合な真実」。
ただ、人間は、動物ではないし、いなくなったほうが良いと分かっていても。
あるいは、いかに論理的に正しくても、倫理的に 粛々と死を受け入れる人間もいないでしょう。

ラブロック氏は、現在 自動的に動くガイアが、人間の生存に困難な気候変動をもたらす前に。
あるいは、調節システムそれ自体が、取り返しのつかない「自壊」を迎える前に、破局を回避するよう 人間は より努力するべきだ と説く。

火力発電や、各種生産プラント、快適なライフスタイルというものは、有害かつ甚大な量の二酸化炭素を吐き出し続け、過剰な環境負荷を強い続ける。
ならば、それを抑制させるよう、原子力・風力・水力といったクリーンまたはグリーン・エネルギー導入を推し進める。二酸化炭素除去処理を徹底させる。
そう、人間は、「持続可能な撤退」 を いま少し真剣に考えるべきではある。 前回も取り上げましたが、それはかなり困難ですが……。

氏は、エネルギー問題については、核融合炉の実現化という手段で持って、現在のいかなるエネルギープラントより効率が良く、また安全性も高いゆえに ( どこまでを基準にするかは、ヒトそれぞれでしょうけれど )、最も現実的で 現時点で最良だと 解決手段を提示している。

しかし、食糧問題については、楽観的ではあるが 自嘲しながら、強烈な皮肉をきかせて、大気中や発電所の排出ガスからの化学物質、水や微量元素からの「合成」手段 を述べるに留める。 皮肉ではなく、これは、いかなる実用化の目途も立っていない。
もちろん、SFの世界でなら実用化されてますけどね!

人口は、すでに70億人に手が届きつつある。
そして、その少なからぬ割合の人間は、我々日本人のライフスタイルとはかけ離れた生活を送る。飢えや貧しさ―― それにHIVで、死ぬ。
胡散臭いヒューマニストは、彼らを 「救え」 という。 どうやれば、よいと?
―― 自身、一生涯 貧しさと栄養失調とで死んでいく人たちと共に生きていくことを選んだマザー・テレサは、その身で応えた。彼女は、「イエスのため」 とはいえ、偽りなく誠実に生きた。
忌憚なく言えば、貧しく飢える人々すべてが、日本人並のライフスタイルを送れる様にする―― それは不可能であり、現在の人類社会にそんな能力はない。 何をどうやっても、破綻する。

ラブロック氏は、激烈な言葉ではあるけれど―― 人口の理想値は「5億から10億」だとする。
読む人が読めば、氏はジェノサイドを容認するのか、と強く批難するかもしれない。
しかし、である。
「全員を助けようとして、結果 全員が死ぬことを選択する」 ことと、「最良の選択だと信じ、憎悪されることを覚悟の上で、苦渋の選択をする」 こととを考えてみた時、どうだろうか。
そもそも、氏は ただ選択肢を提示したにすぎない。

上辺だけ、耳触りのよい言葉で飾った まやかしの偽善を好むのか。
恨まれることを顧みず発せられた、率直な 誠実を好むのか。

本書を貫いて語られるものは、氏の真摯な信念と社会への意見陳述であり、論敵リチャード・ドーキンスも 激論こそすれ、その人柄は敬服する 科学者としての強い意志です。

 ***

邦題を、『ガイアの復讐』 とした本書だが、訳を いささかセンセーショナルにし過ぎた感がある。
ガイアそのものに、「唯一神」 のようなサディスティックな意志などがあるわけはないのだから、『ガイアのしっぺ返し』 くらいが適当だったかも知れない。

原発の議論が、いままた再燃しつつある。 それへの大切な示唆が、ここにはある。
図書館ででも、借りて読んでいただきたい書籍ではある。

今回は、原発開発・稼働停止を唱えるメディアが、不必要に 多くなったこと。
また、たとえ、ブログであっても あまりに現実を顧みないものが 多いと感じたこと。
それで、滔々と、真面目に書きました。
( ホントは、最近メールの遣り取りをするようになった人から薦められた、FF7CC同人誌について書くつもりだったのですけれど。 ああ、萌え~と叫びたい。 )

所詮は、ブログ。 たかが 匿名のブログです。
何を書こうと書くまいと、何かが どうなるわけではない。
実際に、現実で、人々の前で意見陳述を行わなければ意味がない。 しかし、それは、現実での職を危うくする。
それが分かっていながらも、なお 云いたい。

何を云おうと云うまいと、何かが 変わるわけではない。
それが分かっていながらも、なお 書くのですから。 ―― 滑稽だと、笑わざるを得ません。
  

この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« file.no-110 『 ガイアの復讐... | TOP | 震災被害額 最大25兆円 »
最新の画像もっと見る

Recent Entries | 書籍