物語を盛り上げるため、暴力・セックスシーンが、適度に必要。 それは分かる。
けれど、ホモホモしいというか… BLシーンは、必要なのか?
PTAも困惑するんじゃないかな…。
今回は、少年のキッスがあるので、抵抗がある方は、全力でブラウザバック!
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『NO.6 ( ナンバー・シックス )』―― あさのあつこ著の、近未来SF小説。 ライトノベルよりは、やや アダルト向けのテーマ。
全9巻で、本年6月にシリーズ最終巻が刊行。 同月、文庫版第6巻も、2年ぶりに刊行。
アニメ化されたものが、フジテレビ・ノイタミナ枠で放送されており―― 今回は、このレヴュー。
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最初にお断りしますが、原作は読んでおりません!!
女史の、代表作のひとつ『バッテリー』 も、映画を観て、コミックも1巻は読みましたが―― 原作小説は、読んでおりません!!
つまらなくはなかったのですが―― 読んでおりません!!
今回の、『NO.6』も、おそらく原作は読まないでしょう。 このままなら、まず読まない。
なぜか。
答えは、アニメがおもしろすぎるからです。
原作が単行本9巻分ある。 それを、全11話のアニメで消化するとなると―― 尺が足りない。
基本的なところは、原作と同じでも、大なり小なり削り、アニメ版オリジナルでシナリオを組む必要があるでしょう。
原作は、行間に、セリフと台詞の間に、かなり描き込みがある様子。
失礼ながら、昨今のライトノベルは、ページにセリフしかないものが多い。 なにかの、『台本』 であるかのように。 違った意味で、読者は セリフの間にあるものを想像することに 注力せねばなりません。
( と云っても、私も、ライトノベルは、3、4作程度しか書棚に入れていませんので、ラノベ好きの方に言わせれば、門外漢、ということになるでしょうか… )
あさの女史の原作は、ラノベと云うには、分量があり過ぎ、アニメ化の際には 取捨選択したところがあるよう。
それは、いまのところ成功している様子。
捨てていない部分の、寄与するところも多いようです。
捨てていない部分―― それは、いわゆるホモ(ry …… BL的な描写です。
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実は、ツイッタで、本作主人公 紫苑、ネズミの二人の絡み合いについて、知ったのです。
腐なる人々の、腐レヴューで 汚染されてしまったので、「本作をそうみてしまいがち」… というきらいはあります。
“―― 戦禍で荒廃した近未来。 世界再生と生存圏確保のために、創られた理想都市『NO.6』。
そこでは、ヒトは、強力に管理・統制され生きている。 また、適者でない人間は、都市外のスラムに追いやられ、人間の選別が行なわれる世界。
16歳の少年2人によって、世界が変わる。”
―― と書いたら、まぁ、普通のラノベなんですね。 実際、原作は、講談社の『YA!ENTERTAINMENT』 という、ヤングアダルト向けレーベルから出されているので、まぁ―― そういった読者層向け です。
「管理社会」 ですとか、「閉塞感」、「一部権力者の野望」 といったものは、定番のものばかりですし、さして目を引くものではない。 古い話ですが―― 15年ほども前になるのでしょうか、藤崎竜氏の 短編『TIGHT ROPE』( ジャンプコミック『WORLDS』所収 ) の、管理者群エイ・ディーズの設定を彷彿とさせます。
「じゃあ、面白くないのか」 と問われれば、「面白いよ、BL好きには、絶対」 と答えましょう。
ツイッタでは、「原作者がBL小説だって言ってた」 とつぶやかれていたそうですが、原作にも 少年2人の同士のキッス程度の描写はナチュラルに描かれており―― BL臭紛々。 ラノベ好きが読むには、BL臭が やや強いし、SF好きが読むには、設定が使い古されている。
BL臭―― BL、というかヤオイスキーというか。
「やおい」 というのは、「ヤマナシ・オチナシ・イミナシ」 の頭文字をとって、「ヤオイ」 と謂うとのこと。
意味などがない、というのは言い得て妙。
ヒトが誰かを好きになる( 恋愛か、友愛か家族愛か… ) ―― というのは、たしかに論理で説明しきれるものではない。
「一目会った、その時から…」 との文句にもあるように、好きになることに理由はいるのか?
「どうして、そんな相手と結婚するの?」 と、耳にします。 答えは、「好きになってしまったから」 とも。
ただし、「好きになる」 と「愛する」 とは、異なる感情であり、行為であると思います。
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BL―― 同人誌・商業誌問わず、読む私ですが、読んでいて「得心がいった!」 というモノは、きわめて少ない。
恋愛―― 同性同士( 少年・青年 ) とで、惚れた腫れたを遣り取りするのは良いのですが、「なぜ、その相手なのか」。
物語の中には、他にも 知性・教養、好ましい性格など 魅力的な人物がいるのに、なぜ、その相手なのか。
例えば――、
なぜ、アスランとキラとが、キャッキャウフフとなるのか。
なぜ、ヒバリとツナが、キャッキャウフフとなるのか。
そこに至るまでに、なんらかの説明が、織り込まれているものが少ない。 ひどいものになると、エレベーターで、美形の社員(男性) を見染めた上司、社長あるいは課長(男性) が、その日の夜には、ホテルや自宅に連れ込んで、大人の一幕を実践している―― そんなストーリーも多い。
恋の駆け引きなどもなく、唐突過ぎる えっち本。
「虚実皮膜の間」 とはいいますが、リアリティもなく、ただただ心しぼむだけ。
ストーリーテラーとしての、作者の腕を疑うところですが―― 実のところ、これはゲイのヒトの性向からすると、問題ないようです。( 話がおぞましくなるので、これはまた、別の機会に… )
そう、あさの女史原作の、このアニメも、また同じ。
都市ナンバー・シックスから、市外のスラムへ脱出した 主人公・紫苑。 彼は、少年・ネズミと生活しながら、スラムの住人たちとも交流し、物語が進んでいく。
親しい少女が、矯正施設に囚われたと知った 紫苑は、助けに行くことを決意。 ネズミに、遠回しに別れを告げる。
( エピ7:『真実の嘘・虚構の真実』 より )
告げる―― のですが、その夜、二人で食事をとりながら会話した際に、
上記の、アクションに続いて、…… ちゅっ。
紫苑「…… おやすみのキスだ 」
(っ゜⊿゜)っ おやすみのキスって、唇にするんかいっ!!
なんというか… 確信犯ですね。
実際には、“お別れのキス” なので、その演出だと分かっては いますが…。
初期エピソードで、紫苑の彼女に、「あなたの精子が欲しいの。 SEXしたい。 私、あなたとSEXがしたい 」 と口にさせてましたし、あさの女史一流の 演出なのだと理解します。
紫苑の裸をみたネズミにも、「なかなか艶っぽいぞ」 と口にさせており、作者は、性的な境界線を張り直しておいでの様子。
恋愛として、性的に好きだというわけでなくても、キス程度なら 抵抗がないのが、紫苑のモノの考え方の様子。
主要キャラは、みんなどこか、物事の捉え方が、世間一般の範囲から逸れているようで―― 私は、嫌いじゃないですけどね。
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毒と薬は、遣いよう―― シオネズのキッスは、そりゃあ 腐スキーな人々の心の琴線を掻き乱したようで、先日のコミケのような場所でも、スペースのいくつかでは、原作小説NO.6を 持ち込んで読んでいた方たちもおいででした。 そんな場所でまで、読むなよ―― とは、一般人のモノの見方。 彼女たちの考え方は、なお 遠い。
そう、いくつかでは、シオネズだか、ネズシオだかの本も 創られており―― 買いはしなかったのですが。 オリジナルがBLですので、彼女あるいは彼らも、創りやすかったのかな。
問題なのは、放送予定エピの残り数が、わずか3つであること。
8月25日放送のエピ08も終わり、残りは 3つ。
24日に、ED曲「六等星の夜」の着うたフル・PCリリースが始まり、併せてエピ08のEDも、歌詞を一新。 クライマックス突入に向けた、似合いの歌でした。
激しくネタバレしますと、ネズミは、物語のラストで死ぬらしい。
主人公の片翼が、ラストで死ぬというのは、めずらしいと言えばめずらしい。
性的に、PTAへの地雷がある感もありますが―― バッテリーから、入った親御さんは気になるかも―― 、シナリオは、そんなに悪くは無いので、ラストまで見守りたい作品です。
DVD、BDを購入するかといえば、正直微妙なところ。
エンディングを、原作と同じにするのか、それとも微妙に変えるのか。 気になるところ。
それも、紫苑とネズミのBL要素があればこそ、ラストまで付き合うのです。
そういった意味では、たいへんおもしろい作品。 しかし、純粋に、SF作品としてみると―― 正直、微妙。
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最後に、原作者の、アニメ化に寄せたメッセージをご紹介。
“今回、アニメ化ということで アニメから入ってくれた方には、原作とは異質の『NO.6』 を存分に楽しんでいただきたい。”
( 『ダ・ヴィンチ』2011年8月号 davinci pick up )
“原作とは異質の『NO.6』”―― ? アナタが、それを言うのですか、女史一流のギャグ。
( 2011/09/03 一部修正 )