バレエ&音楽日記

舞台は一期一会。素敵な舞台にまた出会えますように…。

NNTT, L'Elisir d'Amore, Apr 25, 2010

2010-04-25 23:01:47 | イタリア・オペラ
ドニゼッティの愛すべき『愛の妙薬』、意外なことに、新国では初演だそうで。
4月15日から5公演が行われ、その最終日を見て参りました。
なお、写真は終演後にステージ・ドアにて撮影させていただきました
ベルコーレ役、与那城敬さんです。

客席に入ると、緞帳ではなく、アルファベットをパッチワークのように
並べたおしゃれなデザインの紗幕がかけられていました。
客席の照明が落ちると、その紗幕の向こうからELISIRの文字が
浮かび上がってきます。そのELISIRという文字、これは劇中でセットの一部として
用いられます。
序曲が終わると紗幕が上がり、両サイドに『トリスタンとイゾルテ』の
巨大な本が3セット。この、巨大な本が真ん中に寄せられ、その間に
場面転換が行われている模様…まるで、本のページをめくっているかに
思われてなかなか楽しかった。

そして、面白いのはキャストの衣装とカツラ。
ネモリーノは緑の衣装に赤い髪。パパゲーノみたい。
アディーナは白い衣装にシルバーの髪。マリリン・モンローの髪型イメージ?
ドゥルカマーラはなんと、全身オレンジで髪が緑。
ジャンネッタはブルーを基調とした衣装。
そしてベルコーレ。
・・・。
・・・・・・。
白い軍服に白い帽子なのですが、その中に隠れているのが紫の髪!!!

妙薬の新演出でチェックしたいポイントとしては、まずは
ドゥルカマーラがどうやって登場するか?でしょう。
それに、ベルコーレのキャラクター設定にも注目したいところ。

そんな感じで・・・。
まず、オケが上手いなぁ、と。関西にいると、ピットに入るのは関西フィルか
センチュリー、京響あたりでしょうか。
金管にはヒヤヒヤしていつも聴いているのですが、今回の東フィルは上手かったです。
続いて合唱。かなり上手いです。アインザッツがびしーっ!と揃っていて、
かなりの迫力。
合唱団の動きが止まり、ネモリーノにスポットライトが当たって・・・
カレーヤのソロ。上手い。評判通りの美声。
なんとなく、喉の奥に引っ込んだように感じる部分もあり、独自の
ビブラート?がかかったような声なのですが、私はカレーヤの声、
好きです。ただ、ネモリーノとしては?どうなんでしょう。
若干、重い気が。「パヴァロッティの再来」とか書かれていますが、
かなり違いますね。来年にはMET公演でロドルフォとエドガルドを歌うことに
なっていますが、これもどうなんでしょう・・・。
今回、カレーヤについては、ソロよりも重唱にその力を見ました。
その時、その時のパートナーにピターッと合わせる力!
妙薬で私が好きな場面としては、ベルコーレがネモリーノに軍隊入りを迫る
二重唱がありますが、すーっごく聴きごたえがあってよかった。
ですが、アディーナとの二重唱、ベルコーレ、アディーナとの三重唱では、
三人の声量の差が出てしまっていたかな、と。明らかにカレーヤは
ボリュームを絞っていたと思いました。

もう一人の主役、アディーナ。すごくキレイな声で、高音もキレイ。
ですが、今一つ伸びてこなくて、ネモリーノやベルコーレに負けるだけでなく
合唱に埋もれてしまう部分も。やはり主役には、合唱を突き抜けて
飛んでくるだけの歌を聴かせてほしいもの。

第二ソプラノ、ジャンネッタ。九嶋さん、なかなかの美声です。初めて
聴いたのですが、ネモリーノが大金持ちになったとたんにすり寄る
したたかさをよく表現できていたのではないかな、と思います。
10月に『アラベッラ』にご出演のようですので、楽しみです。

お楽しみのドゥルカマーラ。プロペラ機を操縦して、赤い衣装の美女二人を
連れてのご登場。おぉ~!
この美女二人、休憩後に客席に降りてきて、オケに妙薬を売りに行きます。
野球場でビールを売ってる売り子さんに見えた。
指揮者とコンマスが、お金を払って妙薬を買っていました。
白いフライト・スーツを脱ぎ去ったら、なんとオレンジの衣装。
もっと胡散臭いエセ薬屋になってくれてもいいのですが、
十分に怪しいです。アジリタはよく転がり、上手いです。
アディーナとの、「あんたは美人・・・」という二重唱では、
歯をスカスカさせて歌うというお決まり。この場面、ドゥルカマーラと
アディーナが余興として歌うのですが、他の面々は拍手喝さいなのですが、
ベルコーレだけはぶすーっとしてたなぁ・・・。

さて、大トリですが我がベルコーレ様。
オケがあのマーチを演奏し始めた時からオペラグラスでスタンバイ。
白い軍服&帽子が決まっています・・・と、兵隊たちは好き勝手
動くので軍曹どのはどなり散らしています。意外と小物なのかしら、この
軍曹様?
ですが、アディーナの顔を見て投げキスをしたり、かなり変。
女性にはひたすら甘い、典型イタリア男?!
そんな中、アリア「かつてパリスがしたように」。
3月のリサイタルでも聴きましたが、少しアプローチが違っていました。
ひたすら無邪気に恋をするおバカな軍曹さんだったのですが、
今回は「僕って素敵でしょ?」かなりナルシスト。
場面変わって、Bar Osteria。ジャケットの前を開けて、なんと中には紫のシャツ。
白=純潔、紫=傲慢
という色言葉に従うならば、純真なように見せかけて実は・・・というメタファー
なのかしら。
ともあれ、少し酔ってご機嫌にBarから出てきます。
そこに、将軍からの指令を受け取ったベルコーレ、愛を忘れないでほしいという
ベルコーレに、アディーナは「だったらすぐに結婚しましょう」と。
そこに、今日だけはやめてくれ・・・とすがるネモリーノ。
ここの三重唱、三人が同等に力があれば丁々発止で面白いのですが、
アディーナが少し隠れてしまっていたような。
「お金がなくて困っている」というネモリーノに、軍隊入りを迫るベルコーレ。
「20スクーディ!」
ここでのベルコーレは、恋敵を軍隊に入れて自分の監視下に置いてやろうという
悪魔のささやき、でしたね。表情やしぐさ、声、メフィストそのものでした。
一つ一つの表情がおかしくって、思わずオペラグラスで追いかけてしまいました!
カレーヤの声はよく響くのですが、ベルコーレの与那城さんの声との相性は
悪くないかなぁ、と。ネモリーノとしてはどうか?なのですが、
他の作品でもぜひ共演してみてほしいと思いました。
『ドン・カルロ』で、タイトルロールとポーザなどいかがでしょう。

最後の聴きどころ、アリア「人知れぬ涙」。
ここにきて、いきなり気合いの入ったフル・ボリューム。
美声ではあるのですが、なんとなく立派すぎる感が。
ネモリーノなんだから、もっと切ない恋心を切々と歌ってほしいな、と。
単なる歌い回しの好みの問題、なのですが、ここだけ突然
全力歌唱で違和感を感じてしまいました。

最後にネモリーノとアディーナが互いに愛を告白する場面、
ここでのアディーナは悪くなかった。高音もよく抜けていて、
高飛車なクール・ビューティが恋に悩む乙女に変わっていく流れが
見えてよかった。
そして、出発していく軍隊。アディーナにフられたベルコーレ、
「女なんて数多」というクセに、ドゥルカマーラにそそのかされて
妙薬を買わされるオチ。
そしてドゥルカマーラは・・・
売れるだけ売って、天井から降りてきた縄梯子にぶら下がったところで幕。
チャンチャン♪


1階席後方センターにて鑑賞

企画 :若杉弘 Hiroshi Wakasugi
芸術監督代行 :尾高忠明 Tadaaki Otaka
演出 :チェーザレ・リエヴィ Cesare Lievi
美術 :ルイジ・ペーレゴ Luigi Perego
衣装 :マリーナ・ルクサルド Marina Luxardo
照明 :立田雄士 Yuji Tatsuta
舞台監督 :村田健輔 Kensuke Murata

指揮 :パオロ・オルミ Paolo Olmi
アディーナ :タチアナ・リスニック Tatiana Lisnic
ネモリーノ :ジョセフ・カレヤ Joseph Calleja
ベルコーレ :与那城敬 Kei Yonashiro
ドゥルカマーラ :ブルーノ・デ・シモーネ Bruno de Simone
ジャンネッタ :九嶋香奈枝 Kanae Kushima

合唱指揮 :三澤洋史 Hirofumi Misawa

東京フィルハーモニー管弦楽団&新国立劇場合唱団

ドニゼッティ『愛の妙薬』新国立劇場

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8 コメント

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新聞のレビュー (keyaki)
2010-05-01 01:49:34
Madokakipさんのブログに出没しているkeyakiです。
朝日新聞に簡単なレビューが掲載されましたが、ご覧になりましたか?
けっこう辛口レビューですが、ベルコーレの与那城敬さんだけは誉めてましたのでお知らせにきました。
私の感想記事に切り抜きをリンクしましたので、よろしかったらどうぞご覧下さい。下の方の「新聞レビュー」をクリックして下さい。
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拝見しました (Odette)
2010-05-01 15:48:14
keyakiさん、ようこそ。
我が家は「毎日」しか購読していないので、他紙の情報を逃してしまうことが多いんです。
「朝日」「読売」「京都新聞」あたりは図書館で目を通しているのですが、この記事は
見落としておりました。
お知らせくださって、ありがとうございます!
連休が明けたら図書館に行ってコピーを取って永久保存版にします♪


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与那城さんのベルコーレ (つるりんこ)
2010-05-07 15:17:39
「愛の妙薬」、楽しい舞台でした。
与那城さんは他の歌手に呑まれない存在感と演技力のある歌手として注目しています、
6月にはまた新国立劇場で「鹿鳴館」に出演しますね。
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与那城さん (edc)
2010-05-07 21:53:22
こんばんは
TBありがとうございます。
先ほど気がつきました。
承認が遅れて済みません。

ブログには書きませんでしたけど、
与那城さんは今年のNHKニューイヤーで初めて知りました。とても印象的でした。ファウストの劫罰のメフィストでカッコいい悪魔ぶり。与那城さんと銀髪?で渋く決めた佐野さんがよかったです。舞台映えのする押し出しの良い歌役者さんとして記憶に残りました。

今回はまったく逆の役でしたね。こちらもなかなかのコメディアンぶり。また違ったコッコよさで、楽しかったです。

鹿鳴館には行きませんが、今後も度々新国に出演してほしいです。
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こんばんは (Odette)
2010-05-16 22:04:34
つるりんこさん

こんばんは。返信が遅れてしまってすみません。TBを放置しておきながら・・・。
確かな存在感を示せる、しかも一声聴いただけでそれとわかる魅力の持ち主と信じて
追っかけを始めました~。
6月の鹿鳴館、ご覧になられますか?私は日曜日に参戦予定です。
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Unknown (Odette)
2010-05-16 22:09:04
edcさん

こんばんは。TBを放置してしまった上にコメントの返信が遅れてしまってゴメンナサイ。
コメントを残させていただこうと思ったのですが、画像認証がうまくいかないのです・・・。

与那城さん、私もNHKニューイヤーで堕ちました。それ以前にも端役でいい声、と記憶に
留めてはいたのですが、あのメフィストフェレスに魂持ってかれてしまいました(苦笑)!
6月の鹿鳴館以降、次はどこへ行けばいいの・・・ってスケジュールをにらんでいる
毎日です。
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はじめまして (steph)
2010-05-16 22:44:17
Madokakipさんのハムレットの記事のコメントから、こちらに来ました。与那城さん、よかったですね。今後も活躍に期待ですね。
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Unknown (Odette)
2010-05-17 01:37:35
stephさん

はじめまして。
新国登場を機に、一気に認知されたようで嬉しいです!鹿鳴館の後の予定が待ち遠しい、
Odetteです。ルックスもなかなかでございますよ~。
近日中に、お写真もこっそりと載せてみようか、などと思っておりますー。
またいらしてくださいね。
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