Flour of Life

煩悩のおもむくままな日々を、だらだらと綴っております。

映画「君の名前で僕を呼んで」感想

2018-05-11 16:28:48 | 映画


「君の名前で僕を呼んで」を、TOHOシネマズシャンテで見ました。TOHOシネマズはネットで空席状況が確認できるので、出かける前にまだ席があることを確かめてから行くことが出来ました。それでも朝イチの回が半分以上埋まっていたので、話題の映画なんだなと実感しました。地方の映画館だと、子供向けアニメ映画でもなければそんなに人が入らないのに…それはそれで気楽に見に行けるから、いいっちゃいいんですけど。

映画「君の名前で僕を呼んで」は、1983年の夏、北イタリアの避暑地で出会った、17歳の少年エリオと24歳の青年オリヴァーが出会って別れるまでを描いたラブストーリーです。エリオの父親は大学教授で、オリヴァーはエリオの父親の助手として、エリオの家族とともにひと夏を過ごします。最初はオリヴァーの態度に反発していたエリオですが、2人はやがて惹かれ合うようになり、ついには互いの気持ちを認め結ばれます。しかし、夏の終わりとともにオリヴァーが別荘を去る日が近づいてきて…

※ここから先はネタバレがあります。未見の方はご注意ください。


というのがエリオとオリヴァーについてのあらすじですが、映画にはエリオとオリヴァー、エリオの家族以外にも登場人物がいて、まあそんな単純に「2人のために世界はあるの」みたいなピュアなラブストーリーではありませんでした。恋愛の甘美さの裏にある残酷さもしっかり描かれていて、美少年と美青年がいちゃいちゃしてるのを見ても、「素敵…!」と震えてるだけじゃいられない現実味がありました。

予告で見た、エリオを演じるティモシー・シャラメがあまりに美少年だったので、なんとなくオリヴァーのほうが先に恋に落ちるのかなと想像していたのですが、映画は基本エリオの目線で描かれていて、オリヴァーが何を考えているのかはあまり具体的に描かれませんでした。おそらく、オリヴァーがエリオに語った通り、オリヴァーもまたエリオと同時に恋に落ちたのでしょうが。2人の間で“恋”に対する価値観が違っただけで。

オリヴァーと出会って恋に落ちたからと言って、エリオがゲイだというわけではないのが、私にとっては意外で新鮮でした。もしこれがスペイン映画だったら、「そういうこともあるよねー」で気にしなかったかもしれないけど(なぜか私の見るスペイン映画はそういうのばっかり)。オリヴァーと出会う前、エリオにはマルシアというベッドを共にする同世代の女の子がいて、オリヴァーを意識するようになってからもエリオは彼女と関係を続けます。オリヴァーへの許されない欲望を、マルシアで満たそうとしていたのでしょうか。映像で見ると美しいので許してしまいそうですが、こうやって文章にすると結構エリオもクソですね。いくら17歳とはいえ。

ただ、これまで見た欧米の映画では、出会ったその日の夜にベッドインしたり、体の関係があるのにまだ「付き合って」なかったりすることがよくあったので、この映画もそれが常識になってるのかなと思いながら見てました。でも、映画の中盤、エリオとマルシアの関係が破綻して、彼女が傷ついて立ち去る場面から、この映画が描こうとしているのは、同性愛という“禁じられた恋”の美しさではないんだなと気づいて、はっとさせられました。

エリオとオリヴァーのひと夏の恋の様子は、美しいけれどどこか儚くて空回りしているように見えて、もどかしく感じることもありました。それとは対照的に、マルシアがエリオを許す場面と、エリオの父親がオリヴァーとの別れを悲しむエリオを諭す場面は、ひとつひとつの言葉が胸に響いて、深く刻み込まれました。この先の人生、どんなにつらいことがあっても、この言葉を思い出せば生きていけるんじゃないかと思えるくらいに。

映画の最後で、エリオがマルシアを裏切ったように、エリオもまたオリヴァーからつらい仕打ちを受けることになるのですが、そのことはきっと彼を成長させるのだろうな、と思わせる終わり方だったのがよかったです。オリヴァーがいなくなっても、エリオには彼を愛し見守る両親がいるし、何より彼はまだ若いのだから。

ところで、オリヴァーを演じたアーミー・ハマーは身長が2メートル近くあるのですが、ティモシー・シャラメも結構身長が高いため、2人が並んで経ってもあまり違和感がありませんでした。なので途中までアーミー・ハマーのでかさを忘れて映画を見ていたのですが、映画の後半、酔っぱらったオリヴァーが広場に停まっていた車の横に立った途端、遠近感のあまりの狂いっぷりに、それまではまって見ていた映画の世界からすっと引き戻されました。

あと、細かい話ですが避暑地の夏が舞台なので、エリオもオリヴァーも上半身裸だったり半ズボンだったりと肌を露出している場面が多くて、目のやり場に困るわ~って戸惑うより先に「あんなかっこしてて蚊に食われないんだろうか」と心配してしまいました。北イタリアって蚊がいないの?それとも気合で我慢してるの?庭に出したテーブルで食事をしてるのも、虫が寄ってこないのかとか配膳と掃除がめんどくさそうとか、優雅じゃないことばっかり考えて気が散りました。まあ、自分がそんな生活をする可能性はゼロなので、気にしなくていいのですが。

エリオもオリヴァーもユダヤ人で、彼らの人となりにはユダヤ人ゆえのものもあるのだと思いますが、残念ながら私には予備知識がなくてよくわからなかったのがもったいなかったです。1983年という時代も意味があるのでしょうか。劇場でパンフレットが買えなかったのが、返す返すも口惜しい…。

避暑地の来訪者であるオリヴァーは、彼が何を考えているのか、何を隠しているのかわからなくて謎めいた人物でしたが、映画の終盤、ミラノで酔って吐くエリオを見た時の、酔いが覚めて素面に戻ったような表情が、ほんの一瞬ですが、オリヴァーの本心が見えたような気がしました。大人の自分が、17歳の子供にしてしまったことの罪悪感、後ろめたさのようなものが。まあ、これは私の想像にすぎませんが。

ネットで続編が作られるという噂を耳にしましたが、もし実現したらどういうストーリーになるのでしょうね。オリヴァーは再登場しなくても構わないけど、マルシアがどうなったのかは気になるから入れてほしい。。。エリオとは友達でいつつ、素敵な恋人を見つけていてほしいなぁ。


最後に。

ここまで、2人の恋について割と突き放したようなことを書いてますが、エリオが、真昼間の広場でオリヴァーに自分の気持ちを打ち明けそうになる場面はドキドキしたよ!きっとその時、スクリーンを見つめる私の目はダイアモンドみたいにキラキラ輝いていたと思うよ!うん!(結局それかよ)


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