Flour of Life

煩悩のおもむくままな日々を、だらだらと綴っております。

G.M.フォード「毒魔」

2008-11-09 14:25:26 | 読書感想文(海外ミステリー)



シアトルのバスターミナルで謎のウィルスが空中散布され、被害者は口や鼻から血を流して死んでいった。その数116名。たまたま現場近くの画廊で恋人のメグ・ドアティの写真展に来ていたフィクション作家のフランク・コーソは、ドアティの反対を押し切って独自の捜査を開始する。アメリカ政府はこの事件をテロと断定し、イスラム過激派グループの洗い出しにかかるが…。


ノンフィクション作家のフランク・コーソとその恋人(?)で全身刺青美女のメグ・ドアティのシリーズ第4作。3作目はシアトルから遠く離れた場所が舞台でしたが、4作目の「毒魔」で2人はシアトルに帰ってきてました。やっぱ「おうちがいちばん」なのかな?

「ブラッディ・マンディ」でもウィルスに苦しむ人たちの映像を見て、
「あーこういうの『毒魔』にもあったなぁ」
と思い、久しぶりに読み返したのですが…
すいません、こっちのほうが断然エグかったです。
謎のウィルスが体に入った途端、全身の血管が溶けて、体が血のいっぱいつまった風船みたいになる…って恐すぎです。またこれが感染した人間の視点で描かれるから恐ざ倍増です。ウィルスが撒かれた後の、あたり一面が血の海になっている凄まじい様子はまさに原題の"RED TIDE"そのもの。なのになんで邦題は「毒魔」なんでしょうね~?迫力に欠けます。

主人公のコーソは、自発的な行動&たまたまの偶然で犯人に近づき、最後には黒幕のもとにたどり着く、とこれまで同様大活躍していたのですが、今回は影が薄かったです。テロの首謀者をはじめ、個性的なキャラが大勢いたし、いくら主人公とはいえ、少し都合のよすぎる場面がいくつもあったので。

その「個性的なキャラ」の中で、今回特に目立っていたのが地元テレビ局のレポーターのジム・セクストン。生活に疲れ、夢も野心も失ってしまった地味なレポーターのジムがどんどん事件に巻き込まれて、最後には報道の歴史に名を残す(かもしれない)ニュースを配信する…と、ジムが主人公でもおかしくないくらい活躍してました。次回作以降彼は出てこないでしょうが、この事件の後彼がどうなったのかとても気になります。

また、テロリストのリーダーのロデリック・ホームズも強烈で、彼のナイフさばきの描写もウィルスに負けず劣らずエグいです。もしこの小説が映画化されて、この場面が再現されたら…と思うと背筋がゾゾーっと縮こまっちゃいました。でもこんな恐ろしいことするホームズでも、その過酷な人生を知ると単純に「悪いヤツ!」と思えないんですよねぇ。。。ウィルスに感染して死んだ人たちには、何の罪もないんだけれど。

個性的な脇キャラのおかげで影が薄くなったのは主人公のコーソだけではありませんでした。コーソの恋人で全身刺青美女のドアティも、自分を刺青だらけにした元恋人が自宅のキッチンで殺されてたっていうのに、大して出番もないまま途中退場するハメに。ウィルステロ騒動でせっかくの個展も台無しになるし、踏んだり蹴ったりです。今までも散々な目にあってるし、彼女が最後にコーソの元を去るのも当然かも。でもまたしばらくしたら登場しそうな気もしますけどね。

出来すぎだろ、と思うところもありましたが、ストーリーのテンポがよくてムダがなくて面白かったです。最後はちょっと尻切れトンボな気がしたけど、シリーズものだからこれでいいのかな?絵的に派手だし、いつか映画化しないかな~と期待しているのですが、もしコーソ役がスティーブン・セガール(似ているという設定)だったら、ちょっと…





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