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仏語、英語学習者。アイザック・アシモフのファン。ノース・ホワイトヘッド思想信奉。縄文志向、仏陀志向。

ファウンデーションの夢 第八部 アルカディアの遺言 第10話 甦りの水

2022-09-06 20:59:12 | ミーターの大冒険
67第10話甦りの水
ファウンデーションの夢
第八部 
アルカディアの遺言 
第10話 

りの



あらすじ

「ファウンデーションの夢」の最終部になります。次作「ミーターの大冒険」を橋渡しする部分になる。
 アルカディアは81歳で天寿を全うしようとしていた。暦はターミナス443年。
 アルカディア農園はほぼラヴェンダーの畑。第二期のポエニッツ仕様のラヴェンダーのエキスがもうひとつの主役。
 アルカディアは全身全霊をかけて14歳から共に歩んできたミーター(ミーター・マロウ アルカディアの命名でダレル家が名門マロウに繋がることを重んじたから。)に訥々と遺言を語る。
 ハリ・セルダンとガール・ドーニックによって導かれた銀河復興の希望をミーターに賭けるアルカディアの切実さと真摯さとが最後の息までもその輝きがラヴェンダー畑に染み渡る。

 彼女はまず、「反ミュール」の現象から話しはじめる。

 そしてアルカディアは銀河の歴史に何度も人類を脅かした政治体制の全体主義の恐怖に話しを移す。銀河の暗黒と混沌の原因もこの全体主義が元凶であり、銀河復興はこれからの解放をも意味していることをつまびらかにする。

 アルカディアは尚も気丈夫に最後の気力を振り絞って宇宙最大の謎について語る。それはアタカナ(地球)の悲惨さ状況についてであり、放射能の悲惨さについてであった。
 
 かつてダニールは、ジャーナリスト、チェッター・ヒューミンと名乗って、ハリ・セルダンに接近し、彼の第零の法則に沿って、ハリを誘導した、またハリの盟友、ユーゴ・アマリルの亡きあと、ハリを助ける人材ともう一つの補助手段を構築するために、シンナックス星で若きガール・ドーニックを見いだした。ガールは彼の生涯かけて、この二つの課題を完全に成し遂げ、なおかつ地球復興と銀河復興の糸口を500年後のために用意した。

 アルカディアのとくとくとミーターに語る語り口は、まるでガールの魂が、彼女をして語らせているようであった。




67
アルカディア 私の家系はね、代々の女性たちを通してこの紫色の液体の入ったシリンダーを伝えてきたのよ。
 透明(外は白)のシリンダーはお母様(トランター)からのもの。トランターの初代のウォンダさんには娘さんがいなかったので、ウォンダさんが亡くなる前に直接、妹のベリスの娘ドース( R・ドース・ヴェナビリとは別人)に渡されたの。そして、そのシリンダーは、私の先祖ジータさんが、またトランターのウォンダ・ジータさんに返したの。それから何代かは、お母様にまで伝わって、今、私が二つ、持っているということです。
 このシリンダーを持つべき人があなたの前に現れるわ。その場面を想像するだけでワクワクするの。

ミーター アルカディー、言っとくけど、僕の頭脳は明晰だけど、めっぽう込み入ってるんだなあ!

アルカディア ミーター、いいわね、そして、私がまた見たことのない黄色い液体のシリンダーがあるはずなの。あなたはそれを持ってる女性にきっと会えるわ!

 三色のペンダントはね!甦りのシンボルなの。混沌と衰退からの復興のしるし。

 ウォンダが「ふるさとの星」のある島から湧き出す、泉の水から採られた「甦りの水」ですからね!ふるさとの星も自浄作用で、完全に汚染から復興することを願ってるっていう証拠よ。その時、ウォンダはその「ふるさとの星」さんの涙を感じたんだわ。そして心を通じあわせたんだわ、きっと。

https://youtu.be/D5KulDGThJw

yatcha john s. 「甦りの水 」


ファウンデーションの夢  第七部  アルカディア・ダレル   第9話  蛸部屋の名探偵と一台

2022-08-21 19:00:46 | ミーターの大冒険
55第9話
ファウンデーションの夢 
第七部 
アルカディア・ダレル
第9話

蛸部屋の名探偵と一台

あらすじ

 アルカディアの長い家出の休暇が始まろうとしていた。それはモーヴ市に隣接するアルティメット空港からの出来事であった。が、それが全銀河を揺り動かすことになる。

 はたして、アルカディアの密航の目的とは?

 アルカディアは、カルガンで叔母のカリアに出逢う。しかしカリア・パルヴァーは、第2ファウンデーションのエージェントだった。
 しかし、アルカディアは、非感応者であるアルカディアの目の奥を見つめるカリアの眼差しを、拒絶する。

 カルガンがダゼンダを襲撃した。
 一農業星に凋落したトランター(400年前は天の川銀河の中心)の農業組合長のプリーム・パルヴァーは、カルガンとの取引の交渉のため、また娘のカリアに久びさに会うためカルガンに来ていた。
 戦争の勃発で商談は中止。やむ無くトランターに帰ろうとして、宇宙空港にいたとき、カリアから逃げてきたアルカディアと遭遇、彼ら老夫妻はアルカディアをトランターに連れていくことにした。

 すでにパルヴァーは、この少女が自身の孫であることは承知していた。

55

アルカディア 久しぶりの音写、頼むわね、ミーター。

ミーター やれやれ、やっと、狭いバッグから出られたと思ったら、今度は蛸部屋だなんて、普通切符じゃなかったんですか?

アルカディア しょうがないわよ。戦争ですから。非常事態で、やっとワゴンに乗れただけで幸運なんですから。カルガンから逃げる人で、スペースポートもごった返してたわね!

 えへん、このリポートは『何度も何度も繰り返されて』が表題。何度も重なりあった事実を纏めると、次のような推論が成り立つ。

 まず、祖母ベイタとエブリング・ミスの意見が微妙に違ってた、ということ。ミス博士は第二ファウンデーションを第一ファウンデーションに対する脅威と考えていた。ベイタおばあちゃんは、ミュールが敗北しても、第一ファウンデーションが、次の銀河帝国の担い手は自分だけだという自惚れとその反対に、第二ファウンデーションに頼っていればいい、という甘えの状態を予期して、ダレル家だけの秘密にしておこうと考えて、トランターに残った。知っていることと公にすることは全く別なんだわ。偉いおばあちゃんだったんだわ!

 ミーター、次が問題なのよ!よく聞いて!なぜ、アンソーアがクラウゼの弟子と称して突然、お父さんの前に現れたか?
 おそらくね、クラウゼ博士の発明した脳波測定器より、お父さんの発明した機械の方が高性能だったんだわ。
 お父さんは、アンソーアが第二ファウンデーション員だと初めから見抜いていたんだわ。
 お父さん、案外やるわね!

 そして、次の問題が最も大事で、難解だわ!
ベイタおばあちゃんはなぜ、トランターで子供を生んだか、私もそこで生まれたのか?

 きっと、こういうことよ。カリア叔母様の目が二回光ったわ。一回目は悲しそうな瞳。二回目は驚愕の瞳。わかるミーター。

ミーター お嬢様、私も及ばずながら、バッグに隠れたままで気が付きました。

 そうなのよ。ホマー叔父さんも、あの目にやられたんだわ。でもカリアさんの目は私には効かなかったんだわ!
 ですから、お父さんもきっとやられてないわ。二人に共通すること。トランターで生まれたという事実、なのよ!
 ベイタおばあちゃんはわかっていたんだわ!

 そこで推論は、終わり。次は、今後の展開よ。ミーター、聞いている?トランターは大農業の星なのよね?

ミーター データではターミナス農業生産力の百倍、となっています。よー、名探偵コナン・ドイル!

アルカディア ミーター、いやワトソン君、私は名探偵、アルカディア・ダレルよ!

https://youtu.be/B9hc-gNBU2A

yatcha john s. 「蛸部屋の名探偵と一台」


ファウンデーションの夢  第七部  アルカディア・ダレル  第6話  自惚れ殿下

2022-08-15 21:20:43 | ミーターの大冒険
52第6話
ファウンデーションの夢 
第七部 
アルカディア・ダレル
第6話
自惚れ殿下



あらすじ

 ジータ・マロウの娘ロアには、極めて聡明な娘ベイタがいた。

 ベイタとミュールの壮絶なる物語は、ファウンデーション設立から300年後に起こる。ベイタの物語はこうして始まる。

 ベイタの両親がガール・ドーニックの農園を再び買い取り、住み始めた。ベイタもモーヴ(ターミナスの首都)に住んでいたのでしばしば泊まりに来ていた。

 時代は、ターミナスも徐々に往時の精彩を欠いて来たインドバーの世襲政権のもと、時代の暗雲に気付いていた数名の人々がいた。
 一人は心理学者、エブリング・ミス。もう一人は貿易商人のランデュ・ダレル、そしてベイタ・マロウもその一人に加えなければいけない。
 
 ベイタ・マロウはトラン・ダレルと結婚し、トランの出身星ヘイブンに赴く。そこで、トランの叔父のランデュに新婚旅行にカルガン行きを勧められる。ハネムーンは数日で今後の銀河を揺り動かす大事件に移行する。

 ミュールの宮殿から道化師がハネムーン中の両人に助けを求めて来た。

 その道化師はボボと名乗った。彼らは早々宇宙船の格納庫に戻る。

 そこに第三者がまた登場する。
 二重スパイ!?

 そのハン・プリッチャー大尉は、すでにミュール(ボボ)によって、洗脳されていた。

 さらにミュールはトラン・ベイタの宇宙船でターミナスまで同乗し、モーヴ市に降り立ち、ファウンデーション軍の宇宙戦艦軍に喪失感を与え、ハリ・セルダンの出現する時間霊廟に集う人々を降伏感へ誘導し、一日に、完全占領してしまった。

 最後の救いの砦であったファウンデーションの遊軍、独立貿易商人協議会連合の星々も、戦意を喪失。ミュールの圧倒的な感応力の前ではなすすべもなかった。ヘイブンに一時避難したベイタ夫婦とボボとエブリング・ミスは、トランターに赴くことになった。ランデュはボボの存在に何かを察するようになったが、ランデュは残った。

 トランターでは、旧ストーリーリング大学付近の自称コンポレロン人たちの農村共同体が300年祭の催し物の準備で忙しくしていた。そこの村長、リー・センターは彼ら4人を丁重に向かい入れてくれた。

 彼ら4人を、トランターの農村指導者家族は丁重に、ファウンデーション300年祭の晩餐会に、趣向を凝らして招き入れた。その席には同じくネオトランターから来ていた(?)、一応議会議長と言う立場の、ヴェナ・ビリ女史がいた。

 エブリング・ミスはボボと一緒にストーリーリング大学の一室に籠って、当のミス博士は食事も絶って一心不乱に調べものに没頭していた。
 
 事件が突然起きたのは、そんなやさきだった。エブリング・ミスは、何かを発見して、訪ねて来たベイタに口を開こうとした瞬間のことだった。

 ヴェナ・ビリ女史も程なく息を引き取る(停止する)。

 そのエブリング・ミスとボボがいた場所が、300年前のハリ・セルダンの心理歴史学の研究室であったことがわかるのは、ベイタ・ダレルの孫アルカディアがトランターを訪れてからのことであるのだが。

 結局、ミュールはエブリング・ミスに密着することによって、第2ファウンデーションを探り当てて、撲滅を計ったのだが、ベイタと第2ファウンデーションに阻まれたことになった。

 ミュールはかねてから目論んでいた第2ファウンデーションの在処をダゼンダと振り替えることにする。

 のちにこの一連のミュールに対する誘導には、ベイタ、第2ファウンデーションの他に、反ミュールの勢力が関わっていたことが明らかとなる。

 こうしてベイタの活躍は終わり、次の舞台に替わる。ベイタの孫、アルカディアの舞台である。

 読者は『ファウンデーションの夢』の続編『ミーターの大冒険』の主人公、ミーターの姓が、マロウであることはご存知であろう。
 要するに、ミーターの主人、アルカディアが、このロボットにマロウの姓をつけた理由が、祖母であるベイタの旧姓がマロウであって、そのベイタをこよなく尊敬していたからであったことがお分かりになったでありましょう。

 一方、ミュールを抑えたはずであった片方のファウンデーションは、新たな次の難局が起ころうとしていた。それに備えることになる。

 その時の第2ファウンデーションの指導者、いわゆる第1発言者は、次期発言者会議の候補者であるペアレス・アンソーアにその任を委ねる。

 夜な夜なの会合がトラン・ダレルの屋敷で行われていた。父の名前を頂いたトラン・ダレルに元研究所の同僚の弟子と名乗るペアレス・アンソーアが訪れる。

 ところがペアレス・アンソーアは、一階の玄関のドアを叩いたが、生憎家政婦が休暇中で、中に入れなかった。仕方なく彼は二階の窓を叩いて、中にいるアルカディアに開けてくれるように頼むしかなかった。

 彼もその会合に加わり、モーヴの出身と偽って、電子脳写装置を四人にかけたいと申し出る。

 始めから彼を怪しんだのは、トランの従兄弟で、図書館員であるホバー・マンであった。

 もう一つの議決がされようとしていた。カルガンに第2ファウンデーションの基地がある、という。そこにマンが単独で潜入するという使命だった。
 
 アルカディアの長い家出の休暇が始まろうとしていた。それはモーヴ市に隣接するアルティメット空港からの出来事であった。が、それが全銀河を揺り動かすことになる。

 はたして、アルカディアの密航の目的とは?
52

ステッティン カリア、いつも言ってるだろう!勝手にわしの執務室に入るなって!それにわしの機密の話、聞いてどうする。国家機密なんだぞ。
 
カリア ごめんなさい、プーチー。入り口のボサッて立ってる警備兵が敬礼して、通してくれたんですから。ファウンデーションからの来賓ですって。可愛らしい女の子、アルカディアちゃんて言うんですか。後で、プーチー、お願い。会わせてね。楽しみだわ!

ステッティン カリア、いつも言ってるだろう。人の前では、プーチーなんて呼ぶなって。れっきとした称号があるんだからな。銀河連邦、第一市民、ステッティン卿だ。えへん、閣下と呼べ。

カリア わかりましたよ、プーチー。いえ、閣下。

 わかったら、レヴ・メイルス第一大臣と話中だ。さっさと出ていってくれないか!

ステッティン メイルス、それにしても、とんだ鴨が葱を背負(しょ)って、舞い込んで来たもんだ。
 あの諜報部のハン・プリッチャー将軍から昔、聞かされた話なんだがな。ミュールが亡くなる前に言ってたそうだ。「もう少しで、この銀河を手入れられた。もう少し、俺の寿命があれば、そしてあのベイタ。ベイタ・ダレルを手に入れられていたとしたら!」と。ミュールが出来なかったことを、わしが出来るかも知れん。あのベイタの孫が来ているのだな?
 名門の。ハーディーやマロウの子孫のな。
 そいつの婿になれば、ミュールの後継者のわしが銀河の支配者になれるってもんだ。メイルス、ファウンデーションをもう一度、ぶっ潰すんだ。ははは!
 
メイルス 閣下、先代ミュール様は、普通の人間ではありませんでした。軽く考えてはなりません。それに第二ファウンデーションの所在さえ判ればいいのですが?でもやって損なことはないかも知れません。

カリア プーチー、貴方って、私を単なるミストレス(愛人)のままにしておくつもりなんですか?悔しい!

ステッティン カリア、まだそこにいたのか?出て行ってくれって言ってるだろう!

yatcha john s. 「自惚れ閣下」


ファウンデーションの夢  第七部  アルカディア・ダレル  第1話  ミュール破局後の危機

2022-08-12 04:13:01 | ミーターの大冒険
47第1話ファウンデーションの夢 
第七部 
アルカディア・ダレル
第1話
ミュール破局後の危機


あらすじ

 ジータ・マロウの娘ロアには、極めて聡明な娘ベイタがいた。

 ベイタとミュールの壮絶なる物語は、ファウンデーション設立から300年後に起こる。ベイタの物語はこうして始まる。

 ベイタの両親がガール・ドーニックの農園を再び買い取り、住み始めた。ベイタもモーヴ(ターミナスの首都)に住んでいたのでしばしば泊まりに来ていた。

 時代は、ターミナスも徐々に往時の精彩を欠いて来たインドバーの世襲政権のもと、時代の暗雲に気付いていた数名の人々がいた。
 一人は心理学者、エブリング・ミス。もう一人は貿易商人のランデュ・ダレル、そしてベイタ・マロウもその一人に加えなければいけない。
 
 ベイタ・マロウはトラン・ダレルと結婚し、トランの出身星ヘイブンに赴く。そこで、トランの叔父のランデュに新婚旅行にカルガン行きを勧められる。ハネムーンは数日で今後の銀河を揺り動かす大事件に移行する。

 ミュールの宮殿から道化師がハネムーン中の両人に助けを求めて来た。

 その道化師はボボと名乗った。彼らは早々宇宙船の格納庫に戻る。

 そこに第三者がまた登場する。
 二重スパイ!?

 そのハン・プリッチャー大尉は、すでにミュール(ボボ)によって、洗脳されていた。

 さらにミュールはトラン・ベイタの宇宙船でターミナスまで同乗し、モーヴ市に降り立ち、ファウンデーション軍の宇宙戦艦軍に喪失感を与え、ハリ・セルダンの出現する時間霊廟に集う人々を降伏感へ誘導し、一日に、完全占領してしまった。

 最後の救いの砦であったファウンデーションの遊軍、独立貿易商人協議会連合の星々も、戦意を喪失。ミュールの圧倒的な感応力の前ではなすすべもなかった。ヘイブンに一時避難したベイタ夫婦とボボとエブリング・ミスは、トランターに赴くことになった。ランデュはボボの存在に何かを察するようになったが、ランデュは残った。

 トランターでは、旧ストーリーリング大学付近の自称コンポレロン人たちの農村共同体が300年祭の催し物の準備で忙しくしていた。そこの村長、リー・センターは彼ら4人を丁重に向かい入れてくれた。

 彼ら4人を、トランターの農村指導者家族は丁重に、ファウンデーション300年祭の晩餐会に、趣向を凝らして招き入れた。その席には同じくネオトランターから来ていた(?)、一応議会議長と言う立場の、ヴェナ・ビリ女史がいた。

 エブリング・ミスはボボと一緒にストーリーリング大学の一室に籠って、当のミス博士は食事も絶って一心不乱に調べものに没頭していた。
 
 事件が突然起きたのは、そんなやさきだった。エブリング・ミスは、何かを発見して、訪ねて来たベイタに口を開こうとした瞬間のことだった。

 ヴェナ・ビリ女史も程なく息を引き取る(停止する)。

 そのエブリング・ミスとボボがいた場所が、300年前のハリ・セルダンの心理歴史学の研究室であったことがわかるのは、ベイタ・ダレルの孫アルカディアがトランターを訪れてからのことであるのだが。

 結局、ミュールはエブリング・ミスに密着することによって、第2ファウンデーションを探り当てて、撲滅を計ったのだが、ベイタと第2ファウンデーションに阻まれたことになった。

 ミュールはかねてから目論んでいた第2ファウンデーションの在処をダゼンダと振り替えることにする。

 のちにこの一連のミュールに対する誘導には、ベイタ、第2ファウンデーションの他に、反ミュールの勢力が関わっていたことが明らかとなる。

 こうしてベイタの活躍は終わり、次の舞台に替わる。ベイタの孫、アルカディアの舞台である。

 読者は『ファウンデーションの夢』の続編『ミーターの大冒険』の主人公、ミーターの姓が、マロウであることはご存知であろう。
 要するに、ミーターの主人、アルカディアが、このロボットにマロウの姓をつけた理由が、祖母であるベイタの旧姓がマロウであって、そのベイタをこよなく尊敬していたからであったことがお分かりになったでありましょう。

 一方、ミュールを抑えたはずであった片方のファウンデーションは、新たな次の難局が起ころうとしていた。それに備えることになる。
 

47
ナロビ(プリーム・パルヴァー) 見習い候補生、ペレアス・アンソーア。
 君を呼んだのには訳がある。
 君にはもうそろそろ見習いから卒業して貰いたい。
 そして現場に赴く前の最後の口頭試問をしたい。といってもほとんどは私が喋る。喋るといっても、口、言葉ではないがね。
 
ペアレス・アンソーア ええ結構です。よく感応できてます。ナロビ長老、いや第一発言者。
 
ナロビ それでは、まず、五十年前に第二ファウンデーションにミュールを誘き寄せるのに成功した、辛うじてトランターのことを秘密にできた。捨て身の戦法が功を奏した第一の要因はなんであったかね?

ペアレス それはミュールの自尊心を利用できたことです。一度、ターミナスを征服できた、次は残る第二ファウンデーションのみだという過信から、焦りすぎたのを逆手にとったからです。

ナロビ それでいい。そして彼にプリッチャーを通して、ダゼンダ( the end of stars )が本当の第二ファウンデーションだと思わせた。ダゼンダがミュールに征服される前に、我々は、ダゼンダ人をコントロールして、ミュールのいないカルガンを支配下に置いた。彼の帰る場所をなくした。彼をカルガン星系のロッセムに誘き寄せたのも私だった。そして彼の寿命とともに、彼の全銀河支配の野望も費失せた。
 
ペアレス 彼の自信を徹底的に挫いたからの成功だったのですね。

ナロビ ところが、それが次の大問題を引き寄せてしまった。セルダンにでも読めなかった事態に突入してしまった。新たなセルダン危機の到来なのだよ。アンソーア君。

 第一ファウンデーションが復活するに及んで第二ファウンデーションを快く思わなくなった、という事態なのだ。

 次の銀河で覇を唱えるのは、第一ファウンデーションのみだという第二ファウンデーションに対する警戒を生んでしまった。

 両者は飽くまで補完関係であり続けなければならないのだが!
 そこで君にはターミナスに潜入して貰いたいのだ。


ファウンデーションの夢  第六部  ベイタ・ダレル 第11話 300年目の晩餐会

2022-08-07 15:18:21 | ミーターの大冒険
44第11話ファウンデーションの夢 
第六部 
ベイタ・ダレル
第11話
300年目の晩餐会


あらすじ

 死んだと思われていた、オナム・バーの愛娘ジータ・マルレイネ・バーは生きていた。マルレイネは、彼女の星、シウェナにジータ・ベリス・マロウを招き入れ、おまけにトランターから、パルヴァー家の娘、ジータ・ウォンダ・パルヴァーを一緒に連れて来た。ジータ・ウォンダ・パルヴァーは、パルヴァー家の初の女の子であった。
 ジータ・ベリス・マロウは、二つあったペンダントの一つをトランターから来た女の子に渡す。
 このことは、いよいよ第2ファウンデーションの出る幕が近づいて来たとの予感を与える。

 ジータ・マロウの娘ロアには、極めて聡明な娘ベイタがいた。

 ベイタとミュールの壮絶なる物語は、ファウンデーション設立から300年後に起こる。ベイタの物語はこうして始まる。

 ベイタの両親がガール・ドーニックの農園を再び買い取り、住み始めた。ベイタもモーヴ(ターミナスの首都)からしばしば泊まりに来ていた。
 近くには、朽ち果てたガールの屋敷があった。

 ベイタはコッソリと、そのガール屋敷の地下深くにあった『故郷星探査報告書』を手に取るのであった。

 そこにはファウンデーション設立当時、ガール・ドーニックの秘密の特別任務の記録が記されてあった。後に、アルカディアが、ジスカルド・ハニスからそれを譲り受ける。その内容の繙きについては続いて読者の努力に委ねます。

 時代は、ターミナスも徐々に往時の精彩を欠いて来たインドバーの世襲政権のもと、時代の暗雲に気付いていた数名の人々がいた。
 一人は心理学者、エブリング・ミス。もう一人は貿易商人のランデュ・ダレル、そしてベイタ・マロウもその一人に加えなければいけない。
 
 ベイタ・マロウはトラン・ダレルと結婚し、トランの出身星ヘイブンに赴く。そこで、トランの叔父のランデュに新婚旅行にカルガン行きを勧められる。ハネムーンは数日で今後の銀河を揺り動かす大事件に移行する。

 ミュールの宮殿から道化師がハネムーン中の両人に助けを求めて来た。

 その道化師はボボと名乗った。彼らは早々宇宙船の格納庫に戻る。

 そこに第三者がまた登場する。
 二重スパイ!?

 そのハン・プリッチャー大尉は、すでにミュール(ボボ)によって、洗脳されていた。

 さらにミュールはトラン・ベイタの宇宙船でターミナスまで同乗し、モーヴ市に降り立ち、ファウンデーション軍の宇宙戦艦軍に喪失感を与え、ハリ・セルダンの出現する時間霊廟に集う人々を降伏感へ誘導し、一日に、完全占領してしまった。

 最後の救いの砦であったファウンデーションの遊軍、独立貿易商人協議会連合の星々も、戦意を喪失。ミュールの圧倒的な感応力の前ではなすすべもなかった。ヘイブンに一時避難したベイタ夫婦とボボとエブリング・ミスは、トランターに赴くことになった。ランデュはボボの存在に何かを察するようになったが、ランデュは残った。

 トランターでは、旧ストーリーリング大学付近の自称コンポレロン人たちの農村共同体が300年祭の催し物の準備で忙しくしていた。そこの村長、リー・センターは彼ら4人を丁重に向かい入れてくれた。

44
ウォンダ お父さん、しっかりして、私がついてますから。こういう時にお母さんが元気だったらよかったのにね。
 
リー・センター まさしくその通りだ、ウォンダ。なにもかも揃いすぎてる。
 時も役者も、宇宙はじまって以来だ!
 丁度セルダンの三百年祭と毎年の祭りも重なった。ターミナスからのお客様の歓迎会を兼ねてね。
 出し物はプリマドンナのお前の披露だ。今晩だけは、毎年恒例の「星界の涯」ではなく、「宰相デマーゼル」だな。
 ネオトランターからも絶世の貴婦人もいらしている。ターミナスからはセルダン(縁)ゆかりのベイタ・ダレルさんばかりでなく、心理歴史学者、それに驚いたことに、あのランデュの甥っ子も来てる。
 この時が今まで隠して来た我がグループの最初の仕事となる。
 気が狂うほどだ!
 第1ファウンデーションの歴代英雄のご子孫のベイタさんが我が屋敷にね。

ウォンダ 大袈裟ね。しっかりして。セルダンの名にかけて!
 とうとういらしたわね。

・・・

リー・センター ダレル夫妻。こちらが私の娘、ウォンダ・センター。こちらがネオトランターのヴェナ・ビリさん。
 
ベイタダレル リー・センターさん。この方(ヴェナ・ビリを指して)、ターミナスの我が家にある肖像画の先祖様のセルダンの奥さんだったドース・ママとそっくりですこと。
 驚いたわ!それにお嬢様のそのドレス、私の三色のペンダントと同じデザインだわ!
 
ウォンダ ベイタさん。驚くのは、こちらですよ。母のペンダントと何で、同じものを?

リー ベイタさん。私も驚いている。妻のペンダントを大変気に入った若者が昔いた。不時着して妻に看病された男、独立貿易商人協議会のランデュ・ダレルがいた。その甥っ子がトランさん、あなただったんですね?
 
ベイタ トラン、あなた、ランデュ叔父さんが若い頃、ここに来たのを何故内緒にしたか、分かったわ!
 叔父さん(ランデュ・ダレル)が私に最初に会ったとき、じっとこのペンダントを見ていたわ。私の美貌でなく!
 
ウォンダ お父さん。私も気が変になりそう!

yatcha john s. 「三百年目の晩餐会」