東近江市五個荘竜田町の工事現場で、旧日本陸軍の三式戦闘機「 飛燕 」のものとみられるエンジンが見つかった。
市民グループ「東近江市戦争遺跡の会」と東近江市が詳しい調査を行う方針で、2月25日、エンジンが東近江市内の別の場所に移された。

飛燕は川崎航空機工業(現・川崎重工業)が開発し、1941~45年、約3000機が製造された。旧日本軍の飛行機の多くが「空冷式」のエンジンを搭載する中、飛燕は「液冷式」を採用する数少ない飛行機だという。
東近江市内で掘り出されたエンジンは、前方から見た奥行きが約150cm、高さと幅は各約80cm。1月下旬頃、地中30~40cmに埋まっていたのを工事中の作業員が発見し、地元住民が東近江市に連絡した。
東近江市戦争遺跡の会のメンバーが現物を確認し、「飛燕のエンジンでは」と指摘。修復した飛燕の機体を展示する岐阜かかみがはら航空宇宙博物館(岐阜県各務原市)や、日本航空協会(東京都)が写真を分析した。
その結果、特徴的な箱形の形状、金属加工した住友金属工業の社章や、穴を塞ぐ六角形のキャップ、機体とエンジンをつなぐ独特の形の金具などが飛燕の特徴と一致した。
発見現場の約7km南東にはかつて、旧陸軍八日市飛行場があり、飛燕が配備されていたという。
日本航空協会文化情報室の苅田重賀専任部長は「現存する飛燕のエンジンは少なく、貴重な発見だ」としたうえで、「エンジンは比較的良い状態で残っており、墜落や不時着したとは考えにくい。なぜここにあったのかは謎だが、戦後の混乱期に何らかの理由で持ち出されたものではないか」と指摘した。
エンジンは当面、東近江市戦争遺跡の会で保管する。同会の山本享志会長は「実物が見つかると、この地域に昔、軍の飛行場があったという歴史をより強く実感できる。今後、東近江市民ら多くの人に見てもらえるようにしたい」と語った。
<読売新聞より>