近江八幡市桜宮町の元新聞記者・大村稀一さんがこのほど、旧の近江八幡市と安土町の市町合併の歩みを検証する著書「難産 近江・安土の平成大合併」を出版した。
大村さんは、新聞記者として2000年4月から全国で始まった国の市町村合併政策と各市町の取り組みを見つめ、その過程で沸き起こった住民間の問題や政策を進めた首長のリーダーシップ、合併までの経緯を最前線で取材してきた。
滋賀県内でも粛々と合併協議が進んだ市町があれば、取り組みは早かったが破綻の道を歩んだ町、合併市町の相手探しに奔走した市町、単独自治を貫徹した市町、合併したくても出来なかった市町など、様々な進路を歩んだ。
その中でも、近江八幡市と安土町は、滋賀県内でも数奇な合併の道を進んだ。とりわけ安土町は、能登川町、五個荘町と進めた3町合併は近畿第1号の先駆けだったが、新市の名称や新市庁舎の位置等で意見が合わず五個荘町の離脱で破綻。
その後、能登川町との2町合併の話が浮上する中、町長選が行われ、東近江地域2市7町の広域合併を訴えた候補者が新町長に選ばれた。しかし、能登川町は五個荘町と歩調をあわせ八日市市を中心とした合併の枠組みに参入したため、取り残された安土町は、近江八幡市との合併に舵を切ったが、あと一歩と言うところで合併競技は破綻。再び合併の枠組みに翻弄される難時代をさまよった。
その後、全国で合併が進まない市町への対応策として、期限が延長された合併新法が策定され、安土町と近江八幡市は、再び合併を目指すが、度重なる枠組み協議に振り回された合併問題に反旗を揚げた住民運動が活発化。近江八幡市との2度目の合併に前向きだった町長はリコールにより失職。しかし、2市町の合併議決が済んでいたため、協議は粛々と進められ、近江八幡市との合併が実った。
本では、こうした2市町の合併の経緯を詳しく解説するとともに合併協議が破綻した理由やその政治的な背景、住民運動等にふれ、今から約10年前の合併とは何だったのか、当時の東近江地域の市町長や行政担当者らのインタビューを加え、市町合併を客観的に振り返る記録本になっている。東近江地域のほか、中主町と野洲町の合併についてもそれぞれの年表とともに掲載している。
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「難産 近江・安土の平成大合併」は500部自費出版。経緯を年表にまとめ、首長経験者ら15人にインタビューした労作だ。マスコミと距離を置く元首長の懐に入り込み、核心を聞き出した。「原発と一緒で、光があれば影もある。両論併記を心掛けた」と話す。執筆だけでなく、編集もミニコミ紙発行のノウハウを生かし、パソコンを駆使して仕上げた。
A5判全126ページ。定価1500円(税込)。
A5判全126ページ。定価1500円(税込)。
近江八幡、東近江、野洲の市立図書館に配本済み。
購読の希望は、大村稀一さん(TEL 090ー8939ー1026)へ。
<滋賀報知新聞より>