あ~る日記

あ~るな日々を綴っています。

この国に合う市場主義とは。

2006-01-24 | 残しておきたい記事・情報
 大勢の人が失望し、別の大勢の人は「当然」の気持ちを抱いたことだろう。
ライブドア社長の堀江貴文容疑者が23日東京地検特捜部に証券取引法違反の疑いで逮捕された。
市場重視に急激に移行しようとする日本経済は、大きく時代の振り子を揺り戻すことになった。

 バブル崩壊後の長い不況のトンネルを抜け出そうとする局面。日本は、株式の持ち合いや談合、
一部の官僚や企業経営者がデザインを描く官主導の経済から、自由で活発な効率的な経済への
転換を迫られている。官も民もこのままではいけないと危機感を持ち、
折からの小泉純一郎首相率いる構造改革路線がそれを後押ししてきた。

 改革の旗手として「ホリエモン」こと堀江容疑者は、プロ野球球団やメディアの買収を仕掛け、
そして衆院選立候補へと駆け抜けた。ある人はその姿を守旧派をやっつけるヒーローとして拍手を送った。
メディアも、最先端のインターネットビジネスで富を築き、自家用ジェット機でバカンスに出掛けるかっこよさ、
ホリエモン現象を追いかけた。

 原動力は、自社株をつり上げて株式の時価総額を膨らませ、それをてこに次の買収仕掛ける
「ファンド資本主義」だった。ライブドアをはじめ、六本木ヒルズに集まった新興勢力のマネーゲームは、
株式市場を急ピッチで押し上げ、素人の投資家が群がった。

 ライブドアのつまずきの軌跡は、江副浩正元リクルート会長を想起させる。
雇用の流動化という大きな日本経済の流れを先取りし、「とらばーゆ」という現象を演出しながら、
江副氏は政治家への未公開株提供によって自滅した。マネーに踊り、踊らされる失敗の色あせた軌跡は、
きれいに重なる。

 検察の捜査が入ったことで、浮かれたマネー崇拝の気分は今回も一気にしぼむだろう。
ホリエモン劇場を楽しんだ観客たちも「お金は汗水たらし働いて得るもの」の声にうなだれるしかない。
ライブドアグループもこれから経営の危機に直面するに違いない。

 だが、これを単に高みの安全地帯から眺めたくはない。ルールを逸脱して市場を混乱させた
堀江容疑者らの責任を問う一方で、反省は、大きく揺れる経済の振り子を、日本の社会に
ぴったりの改革の方向に落ち着かせるために生かしたい。

 日本は人口が減り、これまでのモノ作り中心から、知恵とお金を使って世界経済に貢献しなければならない。
今回思い知った市場のもろさ、株式市場や取引監査制度の不備を見直しながら、元気な新興企業が
活躍できる日本型の市場主義を確立する必要がある。  

            

                         共同経済部長 佐藤雄二郎
                         (2006.01.24 中国新聞)

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