本日は、この両吟半歌仙「水篶刈る」の巻の硯水翁と典比古の「短評コメント」を2回に分けて記事にいたします。尚、翁には要所において短評コメントをいただいております。
●典比古(黒) ★硯水翁(青)
両吟半歌仙「水篶刈る」の巻 矢崎硯水捌
水篶刈る信濃の宿の銀竹よ 矢崎硯水
●信濃の枕詞「水篶刈る(みすずかる)、季語は「銀竹」(氷柱の古称)、発句らしい静謐さと格調が漲っています。(冬・晩)
★地名。寒い時季ですが信濃へようこそ。ささ、どうぞ。挨拶句。
寄る人ありて灯す埋火 桜田一平
●寄る人という措辞(この秋は何で年寄る・・・という芭蕉句を連想!)が、人情と、また埋火のほのかなあたたかさを感じさせます。宿泊者の「旅心」が「埋火」によって象徴され、格調高き発句に脇句がピースを嵌め込むように寄り添っています。(冬三)
★「短評」は絶賛ものです。宿泊者の旅心、埋火のあたたかさ。挨拶へのお返し。自分でなく「寄る人」で旅人が彷彿。
出航の汽笛の音の聴こえきて 硯水
●場を転じ、港と海の空間の広がりを感じさせ、また聴覚から時の移ろいを誘導しています。汽笛の音が、なにか深い溜息の様にも聴こえる。次の句へ転じる余白があります。
★ここでも「短評」は第三の転じ、状況をえがく。連句は「三句の渡り」が肝で「発句・脇・第三」は文句がありません。
岡を登れば地の遥かなる 一平
●前句の「海」と対になる「岡」、そこから眺める地平の広がりに思いを馳せる
月の輪をよぎる翼のきらめきに 硯水
●視線を球面の空に転じ、その月と鳥影の交差が美しい!まるで一幅の絵画のようです。(秋三)
欅の機(はた)に凛と新絹 一平
●外から内への場面転換。欅素材の機織機による今年繭の「新絹」がまぶしい!「凛」という措辞が緊張感を出し、締まった印象を与えながら「裏」へ(秋・三)
★「四・五・折端」は状況情景を動かす。定座の月は絵画的で繊細ではあるが凝り過ぎて逆に印象が弱い。「凛と新絹」は立派過ぎ。折端は折立が付け易い、拘束しない何でもない句が求められる。
ウ エッシャーの騙し絵眺む美術展 硯水
●「エッシャー」の騙し絵に騙されながら、イリュージョンと現代性を導入。(秋・三)
階下へ誘うコーヒーの午後 一平
●そろそろ場がゆるむような「飲食」が欲しいと思っていたら・・・好きな「珈琲」の香りが階下より。 それではと友を誘っての語らいの場(雰囲気的には恋の呼び出しのような・・・)
嬉しげに毛先の揃え気づくまで 同
●しばらくうとうととして睡魔に誘われたが、ふと鏡を覗いたらもうすっかり髪は整っていて、なんだかうれしくなってしまった・・・誰かとの待ち合わせか、あるいは、もう春の風が頬を撫でていたのかもしれない。(一読、毛先を筆の先というイメージで読んでしまったが・・・読み直したら美容院が浮かんだ)
★「エッシャー」人名。外国。「階下へ」飲食。「嬉しげ」恋の呼び出し。折立に相応しい人名からコーヒー、そして女性の髪のデテール描写と三句の渡りは悪くありません。「睡魔に誘われたが、ふと鏡を覗いたら」の「短評」は若い女性の印象あざやか。
■次回は10句目「縄文顔のおもかげを抱き 硯水」からの「短評コメント」になります。
※典比古
尚、この「短評コメント」ですが、翁には次のようなお願い「メール」をいたしました。
「翁にお願いですが、この典比古の「短評」についての「添削」等々がございましたら、お手数をおかけしますが、お知らせくださいますか(後日、ブログに載せようかなとも思っていますので・・・)よろしくお願いいたします。(今回、分類においては、あえて記入しませんでした。とえば神祇釈尊・恋・光物等々・・・)それらもふくめてご指導お願いいたします。」と。
さてこの巻は冒頭から「水篶刈る信濃の宿の銀竹」という格調ある発句で始まりましたが、翁の短評「連句は「三句の渡り」が肝で「発句・脇・第三」は文句がありません。」ということで、ワタクシもこの「三句の渡り」には魅了されました。
ただし翁の「★「四・五・折端」は状況情景を動かす。定座の月は絵画的で繊細ではあるが凝り過ぎて逆に印象が弱い。「凛と新絹」は立派過ぎ。折端は折立が付け易い、拘束しない何でもない句が求められる。」というアドバイス短評も。
それにしても一平さんの感性には驚きました!
※典比古
高尾山のケーブルカー近くの蕎麦屋さんの店先に繋がれていた猫。見た瞬間、翁のところの「ギンちゃん」にそっくりだと思い、写真に撮りました。
lcv.ne.jp/~kens12/rerere/rerere.htm
■コラム857「銀ちゃん昇天」 リンク集