『双角カンケイ。』第1巻 感想
ミラク読者にはおなじみ『桜Trick』のタチ先生が描く新作『双角カンケイ。』の第1巻がついに発売されました。『桜Trick』を知っている方なら、もうわかるでしょう...?ドキドキニヤニヤの百合シチュエーションに定評のあるタチ先生が描いていらっしゃるんですからね...。『双角カンケイ。』、控えめに言って超百合です。(断言)頬の筋肉が痙攣しそうになるぐらいニヤニヤしてしまう。そう、これが最高の百合漫画というものですよ....。
そっくりな双子の姉妹・あいりとひまりは、髪型も服も持ち物もお揃いなのが当たり前。ところが高校に入学してからというもの、ひまりは髪型を変え、あいりに相談なくバイトを始めていた。そんな状況に落ち込むあいりだが、ある日足を痛めながらも「先輩との約束があるから」とバイトに向かおうとするひまり。そこで、あいりは代わりに自分がバイトに行く!と提案をして...。
告白
いやはやビックリ仰天ですね。初っ端から全力全開である。さすがはタチ先生、ガンガン来るじゃないの。自分たちの顔を見分けられるのは両親と幼馴染のイチカちゃんだけだからと姉の代わりにバイトに来てみたら、姉のひまりちゃんと勘違いをされたままバイト先の先輩・朝霧ちさきさんからまさかまさかの本気の愛の告白をされてしまうってんだからド肝を抜かれる。しかも、おんなのこがおんなのこにですからね。なんだ、タチ先生天才じゃん!これは全国の百合スキー大佐たちが待望していた漫画の香りがぷんぷんしてきたぜ!
勘違いによって告白をされた妹のあいりちゃんは「まずはお友達から...!」と答え、メールアドレスを交換するのだけど、姉のアドレスではなく、うっかり自分のアドレスを教えてしまうというね...。
想いの行方は絡まりあう
切ないじぇ....。姉に告白の件を伝えようとするも、姉のひまりちゃんはバイト先の友達と朝霧先輩が両想いになるように後押しをしていることを知ってしまう。つまりは脈はゼロだったと。朝霧先輩が姉のひまりちゃんに告白をしていたら.....きっと一つの恋が終わってしまっていたんじゃないかと.....。
そんな風に考えているのか、この時のあいりちゃんの表情が実に素晴らしかった.....。この時にあいりちゃんが感じた複雑な感情に名前を付けるとしたら、なんと呼べばいいんだろうね...?両想いではないことへの同情?それとも、両想いでないことへの安堵....?まだこの時は半々....いや、前者だったかもしない。嘘が招いてしまった人違いの告白だ。この時ならまだ戻れたかもしれない....。でも、彼女の選択がもたらすものは.....。表情ひとつでそんなことを考えさせられてしまうほどの切なさを含んだ一コマだった。これだからタチ先生は恐ろしいのよ。
ただの百合漫画ではないのだ。百合作品のキモはおんなのことおんなのこの距離感や気持ちの動きにありますからね。おんなのこの感情の機微がコマの一つ一つに映し出される。そこをキッチリ抑えてこられたら、読者は最高の幸福を持って、降伏せざるを得ないってもんです。
朝霧先輩には自身の正体を告げられないまま、ひまりちゃんには告白の事実を隠したまま、あいりちゃんは朝霧先輩とメールのやり取りを始めてしまう。最初は朝霧先輩の恋心を守るためにひまりちゃんの影武者を演じていたはずのあいりちゃん。だが、嘘に嘘を重ねていくうちに「本物」の恋心が芽生えてきてしまうっていうんだからもうニヤけるしかない....。少女たちを待ち受けるのはハマれば抜け出せない「恋の沼」です。えぇ、最高に燃えるじゃないですか。
この気持ちは・・・
「恋は爆弾」である。バレたら終わり。それなのに2人のカンケイはどんどん親密になっていって....。気持ちが膨らめば膨らむほどふとした衝撃で爆発した時の衝撃も大きくなる。「この幸せ」はいつまで続くのだろうと....。そんなドキドキハラハラな緊張感とおんなことおんなのこのキャッキャウフフ空間の幸福感が絶妙にマッチしていておもしろい世界観を作り出しているのが上手いね。
純粋な想いをぶつけてくる朝霧先輩のかわいさに悶絶し、嘘をついていることへの後ろめたさを感じるあいりちゃんの表情にほろ苦さを感じる。胸キュンと胸イタを上手い塩梅でブレンドしてくるタチ先生の話作りにはただただ感服するのみ。
ごめんなさい・・・
そして、越えてしまった・・・。マジか・・・。メールだけでは留まらず朝霧先輩と遊園地デートまで決行し、そのままの勢いでホテルまでゴーイングメリーゴーである。朝霧先輩をもっと知りたい....。朝霧先輩と一緒にいられる幸せをもっと感じていたい......。突き動かされる感情が嘘への罪悪感を越え、2人は一夜を共にしてしまいました。
その「嘘」は、誰のためか?朝霧先輩の恋心を守るためか...?いや、違う。今ならハッキリ言える。「自分の恋心」のためだと。だからこそ、もう戻れない――。実に上手い「恋心」の変遷である。完全に心の琴線をわし掴みにされましたわ...。
ヤバイです。とてもヤバイですよ...。数々の百合作品を嗜んできましたが、圧倒的にドロドロになりそうな予感がぷんぷんするぜ!僕のキャッキャウフフカウンターが告げている...。この作品は危険だと....。『桜Trick』にも修羅場的展開がないわけではない。でも『双角カンケイ。』のそれは桁が違う。何がヤバイって、もちろんあいりちゃんの嘘がバレることなんだけど、問題はどっちかと言うと朝霧先輩ではなく、姉のひまりちゃんにバレることだよなぁ...と。
裏を読みすぎている感はあるけど朝霧先輩はもしかしたら薄々気付いているんじゃないかなって思う節もあるんですよ。姉妹の見分けをわかりやすくするための漫画的演出ではあるかもしないけれど、あいりちゃんはひまりちゃんが付けている「ヘアピン」を普段付けていないですし、そういった伏線がないわけでもない。「髪のこと」に関するエピソードもまだ語られてないですからね...。
それに、外見こそ似ているけれどひまりちゃん・あいりちゃん双子姉妹はそれぞれに違うところがあって、たとえ嘘から始まったとしても、あいりちゃんと朝霧先輩が積み重ねてきた時間は、――その時に感じた幸せは――そして、お互いの気持ちには「嘘」はないじゃないですか。だから、朝霧先輩が「嘘」を知ったとしてもきっと乗り越えられると思うんです。
問題は髪型も洋服も持ち物も何でもお揃いだった双子姉妹のカンケイが高校に入学して少し変わってしまったのは、ひまりちゃんがあいりちゃんの事を密かに好きになってしまったからではないか...と匂わせてくるところです。5話でのここみんとひまりちゃんの会話を聞いていると、「私...すぐ近くにいるのに何にもわかってないや」「大丈夫だよ!ひまりちゃんの恋 きっと叶うよ!」って、もうさ確定じゃない!完全に脈アリじゃない!さぁ、ドロドロ修羅場ルートが僕らを待ってる!
姉妹
尊い・・・・・・。『双角カンケイ。』、どれだけ恐ろしい作品なんだ・・・。朝霧先輩とのキャッキャウフフをこれでもかと見せつけておいて、双子姉妹のキャッキャウフフも用意していたとは・・・。「前みたい」に仲良くしたいと言うあいりちゃんの言葉を受けて、神妙な表情を浮かべるひまりちゃんがなかなかどうしてよ・・・。「前みたいな」姉妹のカンケイではダメなのだ。きっと、ここにもひまりちゃんがあいりちゃんにずっと隠してきた想い――「嘘」があるんじゃないかなと思うとニヤニヤが止まらない。
いやね、朝霧先輩もブッチぎりでかわいいですよ。その純真無垢で真っ直ぐなかわいさを愛でるのは至高である。でもね、姉妹百合は最高!姉妹と言うのはそれだけで神格化されるべき対象です。(※個人の感想です。)これが、双子の姉妹っていうんだから世界で最も尊いおんなのことおんなのことのカタチです。オラ、ワクワクしてきたぞ....!(※個人の感想です。)
さて、あいりちゃんの「嘘」がバレたとき、果たして物語はどう動くのか...。ひまりちゃんの正体が双子の妹だったと知った時、朝霧先輩は何を想うのか・・・。あいりちゃんが朝霧先輩のことを好きだと知った時、ひまりちゃんは何を想うのか・・・。想いの行方が絡まり合う『双角カンケイ。』、今後の展開にも目が離せません....!
いやもっと見たいんだけどね