さいとうゆたか法律事務所(新潟県弁護士会) 労働災害(労災)ブログ

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労災での療養中の労働者の解雇についての最高裁判決

2015-06-09 15:50:51 | 労災保険
 最高裁平成27年6月8日判決は、労災での療養中の労働者に対する解雇についての判断を示しています。

 この最高裁判決の意味合いを考える前に、関係する条文を見ておきましょう。

 労働基準法19条は、使用者は労働者が労災のために休業する期間及びその後30日間は解雇をしてはならないとします。例外として、81条の規定により打ち切り補償を行う場合等には解雇をなし得るとしています。

 労働基準法81条は、75条の規定によって補償を受ける労働者について、療養開始後3年を経過しても負傷などが治らない場合には、使用者は平均賃金の1200日分の打ち切り補償をすべきとしています。

 労働基準法75条は、労災において使用者が療養の費用を負担しなければならないとしています。

 以上より、労働基準法は、使用者が療養の費用を負担し、かつ、療養開始後3年後に1200日分の打ち切り補償をした場合には解雇が許されるとしています。

 問題は、現実には労災保険制度があるため、使用者が療養の費用を負担することが想定しにくいということです。

 最高裁は、この点、労災保険から補償がされている場合には、実質的に使用者が療養の費用を負担しているのと同視しうるとして、打ちきり補償があれば解雇しうるとしているのです。

 最高裁のような解釈は形式論理としては成り立ち得るでしょう。

 問題は、このような判決がもたらすものです。

 打ち切り補償さえ払えば解雇できるということになると、使用者は簡単に労働者の首を切ることができることになります。そこでは労災をなくそうというインセンティブが働かないようになる懸念があります。労災が発生しても、労働者を抱え続ける必要はなく、追い出すことができるのですから。

 ですから、このような最高裁判決については強く批判されるべきだと思います。

 また、この事件については、労働基準法19条による規制は働かないとの結論となってしまいましたが、それとは別に労働契約法16条により解雇が無効となる可能性も残っています。弁護団には是非その論点で頑張ってもらって、労災の被災者を簡単に解雇できるような風潮を阻止してもらいたいと思います。


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                    弁護士 齋藤裕(新潟県弁護士会所属)

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