さいとうゆたか法律事務所(新潟県弁護士会) 労働災害(労災)ブログ

新潟市の弁護士齋藤裕のブログです。労働災害(労災)に関する記事を掲載しています。
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精神疾患り患の立証責任(労災、過労死)

2017-02-20 19:22:56 | 損害賠償

 過労が原因で精神病にり患し、自殺した場合、損害賠償責任が認められる前提として、被災労働者が精神疾患にり患していたことが原則として求められます。しかし、受診などしていない場合には精神疾患り患について立証するのは簡単ではありません。

 東京高裁平成21年7月28日判決は、交代制勤務によりクリーンルーム作業に従事する労働者の過労死における立証責任について判断を示しています。

 裁判所は、被災労働者が使用者側の用意した寮で単身で生活していたことを踏まえ、近親者であっても健康状態等を把握することは困難だとしました。その上で、主張立証責任の上では原告が精神疾患にり患したことを主張立証しなければならないものの、原告側が精神疾患による自殺であることについて相当な疑いがあることを合理的な根拠をもって提示した場合、使用者において自殺の原因が精神疾患ではないことを明らかにしない限り、自殺は精神疾患を原因としてなされたものと推認されるとしました。そして、当該事案についても、うつ病にり患していたと認定しました。

 程度の差はあれ、被災労働者が大部分の生活時間を会社で過ごしているような場合には、遺族において被災労働者が精神疾患であったことを立証する責任はかなり軽減されるべきと考えられますし、そのような観点からは妥当な判決と思われます。

 

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解体工事における転落事故と使用者の賠償責任(労災)

2017-02-03 16:53:50 | 損害賠償

 東京地裁平成28年5月31日判決は、解体工事において屋根から転落した労災事故について、使用者に安全配慮義務違反を認め、賠償を認めました。

 裁判所は、まず、スレート葺の屋根にあがる際には踏み抜けによる落下事故の危険性があることが明らかであるから、作業に従事する者の安全帯を親綱にかけさせ、さらにその支柱などの上を移動させるなどの配慮が必要だとしました。

 しかし、職長は、被災労働者が安全帯に親綱を通していないにも関わらず特段の注意をせず、作業を指示した等として、安全配慮義務違反を認めました。

 他方、被災労働者にも2割の過失があるとしました。

 被災労働者は2年程度の勤務歴があり、それが2割の過失につながったと思われます。

 

 解体工事における転落事故は頻繁に発生する労災です。それについて参考となる裁判例かと思われます。

 

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過重な長時間労働による自殺と出向先・出向元の賠償責任(過労死)

2017-02-02 15:38:33 | 損害賠償

 東京地裁平成28年3月16日判決は、過重な長時間労働による自殺の事案において、出向先・出向元及び各代表者の賠償責任を認定しています。

 この事案では、被害者は、多い月には186時間の時間外労働をしています。

 裁判所は、出向先については、その事業遂行のために労働者を指揮命令下において使用する者として、業務の遂行に伴う疲労等が過度に蓄積して労働者の心身が損なわれないようにするよう注意する安全配慮義務があるとしました。その上で、出向先上司が被害者の労働時間を把握しておらず、そのため業務負担を軽減させる措置もとらなかったとして、安全配慮義務違反があったとしました。

 出向元については、人事部が長時間労働を把握していたことを前提に、人事部から代表者らに長時間労働について報告させる態勢を築くなどの義務を負っていたのにこれを怠り、長時間労働を放置したとして安全配慮義務違反を認めました。

 出向元については義務違反が認められにくいとされていますが、具体的事案をもとに責任を認定しており、被害者保護の観点から肯定的に評価できる裁判例かと思います。

 

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