過労が原因で精神病にり患し、自殺した場合、損害賠償責任が認められる前提として、被災労働者が精神疾患にり患していたことが原則として求められます。しかし、受診などしていない場合には精神疾患り患について立証するのは簡単ではありません。
東京高裁平成21年7月28日判決は、交代制勤務によりクリーンルーム作業に従事する労働者の過労死における立証責任について判断を示しています。
裁判所は、被災労働者が使用者側の用意した寮で単身で生活していたことを踏まえ、近親者であっても健康状態等を把握することは困難だとしました。その上で、主張立証責任の上では原告が精神疾患にり患したことを主張立証しなければならないものの、原告側が精神疾患による自殺であることについて相当な疑いがあることを合理的な根拠をもって提示した場合、使用者において自殺の原因が精神疾患ではないことを明らかにしない限り、自殺は精神疾患を原因としてなされたものと推認されるとしました。そして、当該事案についても、うつ病にり患していたと認定しました。
程度の差はあれ、被災労働者が大部分の生活時間を会社で過ごしているような場合には、遺族において被災労働者が精神疾患であったことを立証する責任はかなり軽減されるべきと考えられますし、そのような観点からは妥当な判決と思われます。
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弁護士 齋藤裕(新潟県弁護士会所属)
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