以前、「ゴムのパンツ」という記事を載せた。 ここで書いた「パンツ」は、
アメリカで、pants
イギリスで、trousers
日本では、ズボンと言われるもので、下着のことではない。
だが今回の「パンツ」は日本でいう下着のことで、私が子供の頃、田舎の祖母はこれを「ズロース」と言った。 父の転勤に伴い、東京へ6歳の時に転校をしたが、甲州弁丸出しで、このズロースという言葉をクラスメートの前で使い、大笑いされた記憶がある。
「東京のボコ(子供)は、意地が悪いダ。」
と傷ついた。
あれから60年近く経つが、現在はアメリカのヴァージニアで暮らしている。 年を取ると、若かった頃にはどうでもよかった様な事が気に入らなくなる。 そのうちの一つは、下着の縫い目、縫い代。 それが直接肌にあたると、どうも嫌だ。 であるから、私は裏返して着用する。 パンツと言えば、作家で医学博士の故.北杜夫氏は、学生時代に寮生活をしていたが、洗濯をすることが億劫だった。 彼は自叙伝に記したが、何日も同じ下着を着続け、どうしようもなくなるとそれを裏返してまた数日間使う、ということをした。 当時(第二次世界大戦末期、直後の時代)の学生たちはみなこのような事をしていたらしい。
これも蛇足だが、昔私は水泳のインストラクターをしていた。 毎日のレッスンが終わると、更衣室でシャワーを浴びて帰宅するのだが、ある時熟女が度肝を抜くような下着をつけているのを見て、びっくりしたことがある。 上下ともギリギリの線で隠すほどしか布の面積が無く、痛々しかった。 若い女性たちがこのようなものをつけていたら、「あら、かっこいいわね。」と思うだろうが、彼女はどう見ても60を過ぎていた。 おばちゃんがセクシーな下着をつけてはならない、という法律はないのだが。
さて、話を戻そう。 であるから、私は下着を裏返して穿くようになった。 ある時友人宅を訪れたが、太ってしまったので私に服を何枚かくれるという。 彼女の寝室でワンピースを試着したが、目ざとく友人は言った。
「あら、フィービー。 裏返しになっているじゃない。 朝そんなに急いでいたの?」
「違う。 わざとこうしているのよ。 縫い目が肌に触れるのが嫌だから。」
数秒間黙っていたが、彼女は口を開いた。
「あのさ、言いたかないけど、私たちもう還暦過ぎてるよね。」
私は少々ムッとして答えた。
「So what?」(だから何なのよ?)
「いつ何が起こるかわからないじゃない。 救急室に運ばれた時に、身ぐるみ剥がされるのよ。」
「え...。」
もしパンツを裏返して穿いていたら恥をかく、ということだ。 かなり以前、雑誌で読んだことがあるが、ある家庭でおじいさんが脳卒中で倒れた。 意識はない。 当時はこの場合、患者を動かしてはならないというのが鉄則であった。 しかし救急車が到着する前に、家族総出で苦労をして、彼のパンツを新品の物に穿き替えさせたそうだ。 これを読んだのは私がまだ20代の頃で、不謹慎だが笑ってしまった。 だが現在、己自身がこの年になり、そういうことも無きにしもあらずとなった。 うーん、一理あると頷く。
その後もう一人の友人に電話をかけた。
「あのね、そういうことだから、パンツを裏返すのは止めたほうがいいかな?」
看護師である彼女は言った。
「Don't worry about it.」 (気にしなくてもいいわよ。)
以下は、長年救急室で働き続けたプロから聞いた話である。
裏返しのパンツ? フン、そんなもの何でもないわ。 朝から晩まで救急患者の世話をしていると、いろいろな場面に出くわすけど。 ある日、すごく体格のいいおばちゃんが運ばれてきてね、意識がなかった。 私たちは猛スピードで服を脱がせたけど、パンティーを取った後でみんなの手が止まっちゃったのよ。 なんでかわかる? この人、男だったの。 ブラジャーの中に、たくさんパンストとティッシュペーパーが詰まっていたわ。
安心した。
アメリカで、pants
イギリスで、trousers
日本では、ズボンと言われるもので、下着のことではない。
だが今回の「パンツ」は日本でいう下着のことで、私が子供の頃、田舎の祖母はこれを「ズロース」と言った。 父の転勤に伴い、東京へ6歳の時に転校をしたが、甲州弁丸出しで、このズロースという言葉をクラスメートの前で使い、大笑いされた記憶がある。
「東京のボコ(子供)は、意地が悪いダ。」
と傷ついた。
あれから60年近く経つが、現在はアメリカのヴァージニアで暮らしている。 年を取ると、若かった頃にはどうでもよかった様な事が気に入らなくなる。 そのうちの一つは、下着の縫い目、縫い代。 それが直接肌にあたると、どうも嫌だ。 であるから、私は裏返して着用する。 パンツと言えば、作家で医学博士の故.北杜夫氏は、学生時代に寮生活をしていたが、洗濯をすることが億劫だった。 彼は自叙伝に記したが、何日も同じ下着を着続け、どうしようもなくなるとそれを裏返してまた数日間使う、ということをした。 当時(第二次世界大戦末期、直後の時代)の学生たちはみなこのような事をしていたらしい。
これも蛇足だが、昔私は水泳のインストラクターをしていた。 毎日のレッスンが終わると、更衣室でシャワーを浴びて帰宅するのだが、ある時熟女が度肝を抜くような下着をつけているのを見て、びっくりしたことがある。 上下ともギリギリの線で隠すほどしか布の面積が無く、痛々しかった。 若い女性たちがこのようなものをつけていたら、「あら、かっこいいわね。」と思うだろうが、彼女はどう見ても60を過ぎていた。 おばちゃんがセクシーな下着をつけてはならない、という法律はないのだが。
さて、話を戻そう。 であるから、私は下着を裏返して穿くようになった。 ある時友人宅を訪れたが、太ってしまったので私に服を何枚かくれるという。 彼女の寝室でワンピースを試着したが、目ざとく友人は言った。
「あら、フィービー。 裏返しになっているじゃない。 朝そんなに急いでいたの?」
「違う。 わざとこうしているのよ。 縫い目が肌に触れるのが嫌だから。」
数秒間黙っていたが、彼女は口を開いた。
「あのさ、言いたかないけど、私たちもう還暦過ぎてるよね。」
私は少々ムッとして答えた。
「So what?」(だから何なのよ?)
「いつ何が起こるかわからないじゃない。 救急室に運ばれた時に、身ぐるみ剥がされるのよ。」
「え...。」
もしパンツを裏返して穿いていたら恥をかく、ということだ。 かなり以前、雑誌で読んだことがあるが、ある家庭でおじいさんが脳卒中で倒れた。 意識はない。 当時はこの場合、患者を動かしてはならないというのが鉄則であった。 しかし救急車が到着する前に、家族総出で苦労をして、彼のパンツを新品の物に穿き替えさせたそうだ。 これを読んだのは私がまだ20代の頃で、不謹慎だが笑ってしまった。 だが現在、己自身がこの年になり、そういうことも無きにしもあらずとなった。 うーん、一理あると頷く。
その後もう一人の友人に電話をかけた。
「あのね、そういうことだから、パンツを裏返すのは止めたほうがいいかな?」
看護師である彼女は言った。
「Don't worry about it.」 (気にしなくてもいいわよ。)
以下は、長年救急室で働き続けたプロから聞いた話である。
裏返しのパンツ? フン、そんなもの何でもないわ。 朝から晩まで救急患者の世話をしていると、いろいろな場面に出くわすけど。 ある日、すごく体格のいいおばちゃんが運ばれてきてね、意識がなかった。 私たちは猛スピードで服を脱がせたけど、パンティーを取った後でみんなの手が止まっちゃったのよ。 なんでかわかる? この人、男だったの。 ブラジャーの中に、たくさんパンストとティッシュペーパーが詰まっていたわ。
安心した。