世界三大美女 (その3 小野小町)

2023-02-02 07:14:22 | 随筆
クレオパトラとヤンは、私を見るなり口をそろえて問う。

「フィービー、あの女の人、誰なの?」

私は答えた。

「あなた達のように、世界三大美女のうちの一人、小野小町よ。 知らないの?」

「知らない。」
「知らないわ。 聞いたことない...。」

女王は言った。

「あんな糸のように細い目をした人が、美人なの? 一体、人の話を聞いているのか、目をつむって眠っているのかわからなかったわ。」

察するに、小野小町の知名度は日本だけにあり、世界では彼女のことを知る人はまずいないようだ。 ここで私は説明をする。

「平安時代の日本では、ほっぺたが膨れて目が細い人が美人とされたのよ。」

二人が、ふ~んと不思議そうな顔をした時に、私の次男がやって来た。 洗面所の蛇口からぽたぽたと漏れるので、新しいものに付け替えてくれるようにと頼んでおいたのだ。 やぁ、いらっしゃいと客たちに会釈をし、彼はバスルームへ行こうとした。 私はそれを引き留め、質問をする。

「息子よ、ちょっと聞きたいことがある。 人類史上、最も美しい三人の女性と言ったら、あんたはなんと答えるかね?」

気が付くと、着替えが済んだコマっちゃんが居間へ戻っていた。 三人とも耳を澄ませて、し~んとしている。 シェインは答えた。

「ビヨンセ と 故ダイアナ妃。 そして一番の美人は俺の女房だな。(彼女の名前もダイアナと言う。)」

それを聞いて、客たちは皆一斉に、え~っと叫んだ。 その「え~っ!」には、かなり抗議感がこもっていた。 そうして気を悪くした美女たちは、各々ホテルへ引き上げて行ってしまったのだ。

「俺、何か悪いこと言った?」と息子は聞いたが、私は答えた。

「いやいや、心配せんでよろしい。 自分のヨメが世界一の美人であると言ったのは、正解だ。 息子よ、よう言うた。」 

ここで、日本とアメリカの文化の違いを一つ説明しよう。 日本では、他人に妻を紹介する時、

「これが私の愚妻、アキコです。」

などと言うが、日本人男性諸君、まかり間違っても、英語で

「This is my stupid wife, Akiko.」

なんぞと言ってはならない。 下手をすると離婚寸前の夫婦だとか、もっと下手をすると、あなたは妻を虐待する ろくでなし男だと誤解される。 欧米人に妻を紹介する時は、my beautiful wife とか、 my gorgeous wife などの様に、何でもいいから wonderful  だの、 sweet だのと奥さんが喜ぶような形容詞をくっつける事を忘れてはならない。 そうすることによって、欧米人たちは、「あぁ、彼は奥さんを大切にしているのだな。」とあなたの事をジャッジするのである。

ちなみに、女性たちがダンナを紹介する時は、簡単に This is my husband, Ichiro. でよろしい。 どうしても形容詞をくっつけたかったら、wonderful  とでも言えば十分だ。

残念なことに、客たちは仏頂面で帰ってしまったが、息子が洗面所でガタガタ音をたてている間に、私は嫁のダイアナにラインを送った。

「ハーイ、ダイアナ。 今お宅のダンナが蛇口の付け替えをしてくれているんだけど。 さっき、彼が言ってたよ。 あなたが世界一の美人だって。 じゃあね。」

数分後に、とても大きなハートのマークが返信されてきた。










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