ミケ猫の菌星探査機(きのこ日誌)

全力で飛んでく・きのこブログ

オオセミタケ

2018-05-26 22:51:59 | 日記

冬虫夏草の表面をこそいで胞子をカバーグラスの上に落とし、

のんびり顕微鏡を覗いていた

外で走り回るテンの足音以外これといって虫の声もしない

風の音も雨の音もしない

ちいさな生き物の気配、目の前の冬虫夏草からか





オオセミタケの胞子 糸状の胞子だと聞いていたので見るのがとても楽しみだった




違う、顕微鏡の中からだ

水で封入しているので今のところ、この胞子生きているのだろう

わたしのお気に入りの虫屋(マニアのことを私は~屋と呼ぶ)とおしゃべりしてたとき

生き物が好きだ、だから生き物に影響を与えるような撮影はしたくないんだと言っていた

虫屋の写真はその愛の対象物にどう向き合っているのかよくわかる



彼は背後からの写真が多い

同じ大学出身なのだが、彼は文学部、私は海洋学部

海洋学部でなんでキノコ屋なんすか?いやいや文学部でなんで虫屋なん?

お互いないものねだりなところが似ているのだろうか





アスファルトの下からキノコが顔を出していた




私はこの冬虫夏草を土から掘り出し

生を繋ぐはずのこの胞子をプレパラートに閉じ込めて私だけにしか見えない世界を眺めている

ただ、こんなにはっきり見えているのに触れることができない世界

そう、まるで映画のようだ





胞子の両端に丸いものが2つ...なんだろう?




2つの生き物が目の前にいたとする、あなたならどうする?

どこが違うのか細かく観察してみる、それが今までの自分の生き方だったような気がする

次は2つの生き物を目の前にして同じところを探してみよう

さっきあんなに観察したのに、自分は何を見ていたんだろうと思うくらい様々な一面が見えてくる

いやでもなぜだか私はそれを既に知っている、見る前から知っている



ちょっとわかった気がする

違いは目で見て発見し

同じところは心で感じて発見しているのだ

素直になると見えることが増えるのはそういうことか





私はてっきり、2つのセミが眠っているのだとばかり思ってた。1つのセミから2つのキノコが出ていた




高校1年生の時、あの科学系のクラブにいたころ顕微鏡にはまった

朝7時ごろ部室に行き、顕微鏡を使って植物化石を覗いてHRが始まる頃教室に行った

朝早く部室に行き、あのガラガラっと顕微鏡の入った引き出しを開ける時の爽快感!

毎朝一人で見ていると、そのうち他の同級生の部員が朝、部室に来て化石を見るようになった

私は面白くてただがむしゃらに顕微鏡を覗いていたが、彼はセンスがよく、

検鏡した結果をキレイにまとめて、スマートに考察をしていた



いろいろ植物化石を分析した結果をまとめて近畿の理系クラブ研究発表会なんかで発表したが、

まー研究者にボロクソ言われて、自分たちの研究者としての甘さを痛感した

悔しかった、そのとおりなだけに思いっきり泣けた

そんな激しい自分の感情を手当たり次第ぶちまけてもさらっと受け止めてくれた、

あの朝一緒に顕微鏡を覗いていた同級生とさらに距離が近くなった





このカビのような白いものが糸状の子嚢胞子。動画で見てると飛び出してくるらしい。




ある日、将来の進路について彼と話していた

自分は成績がイマイチだったのでなんとかどっかの私立にでも引っかかって、

自力で研究者のもとに通って研究を続ける気でいた

彼は頭が良かったので、某有名国立大学の地学科へ行くものだと思っていた

しかし私と同じ大学へ行くと言い出した

よく聞くと朝の顕微鏡タイムも研究の発表も私がいたからやっていたのだという





家に帰ってきれいにしてみた。生き物の輝きが増した気がした




次の日からその子と口をきかなくなった、なんだろう、どうしても許せなかった

私が勝手に彼が真剣に研究に没頭しているのだと思っていて

そのうえで私も真剣に植物化石のことで彼にぶつかっていった、それができなくなった

私の友達たちはみんな、『おまえが悪い』と言って呆れていた





菌類に感染した虫は、ただの死体と比べてその姿を留めていることが多い




・・・懐かしい昔話や(^_^;)

顕微鏡好きはその頃からずっとなんやな、久しぶりに手に入れて実感した

バカもほとんど治っていない

6年くらい前に初めて出来たキノコ友達、キノコのことはものすごく詳しいのに、

学者は嫌い、という立場を私の前で貫いてくれている

嘘をつかれるよりずっと安心できる、でもあまり笑わないので自分が退屈させているのかと思ったら

感情が表情に出にくい(多分障害)だけで、本当は楽しい、と真剣な顔で言った

そのぶきっちょな一言は何よりも自分を安心させてくれた




不思議なことに、私はじっとしている虫を撮るのが苦手だ

走り回っている虫を追いかけながら撮ったほうが、なぜかピントが合う

友達の虫屋が聞いたら怒りそうだ、だから撮影のために虫に負担をかけちゃダメでしょ!と

スタジオでカメラマンをやっていたから分かる、

ただ立って笑ってもらうより、心に入り込んで心をくすぐったほうがいい写真になる

そんなこといくら言ってもわかってくれへんねやろうな、

どこかの文学から切り取ってきた名言で切り返されるんだろうな...それも勉強なら、ま、いいか。




ではでは。


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