goo blog サービス終了のお知らせ 

ミケ猫の菌星探査機(きのこ日誌)

全力で飛んでく・きのこブログ

ロクショウグサレキンで染めたいねん(3)脱線時々本線

2018-05-12 23:44:00 | 日記

(続き)


まあ、そうやわな。

まだまだあるんやなやっぱり、今、まさに消えそうになってるキノコ利用の歴史。

なんのキノコを利用していたのかわかる人が、また高齢になってわかる方が残り少なくなってる。

こんな身近にもあったのか。能登川博物館としても古い農村の農具や民具を積極的に保存しているが、

生活文化は形が残らない、伝承の隔絶が60代と70代の間くらいにありそうだ。

ギャラン、ヌッポリの言葉だけ残っても、何のキノコなのかはわからない。





多めにNAOHを投入、2回目のものは完全に布が茶色に染まった。これって木染めやーんヽ(´▽`)/
・・・今回はもう無理なんちゃう?的な空気が広がる。




ギャランってどんなキノコなんですか?と聞くとああほら、別名でネズミノアシよ!わかる?

すいません、わかりませんw

白くってわしゃわしゃっとしてるやつ、普通の形のキノコじゃないやつ。生えてる場所は下の方。

ヤマブシタケ?ハナビラタケ???

図鑑をペラっとめくるとカレエダタケやフサヒメホウキタケを指差して、これ似てる、と言い出した。

((((;゚Д゚))))!!!

それって・・・それって・・・ホウキタケってこと?

図鑑のホウキタケを見せると曖昧な返事。カレエダ・フサヒメは固くて食べられない。

バイタケのように本物を持ってきて、次々見てもらおうかと思ったが、この選択肢ちょっとハードル高すぎねw

ちょっと調べたら、ネズミノアシだけ出てきた。やはりホウキタケだ!数十年前までは出てたんだ!

じつは松茸はちょこちょこ採集されているのだが、ホウキタケはまったく聞いたことがない。





洗濯ネットを開けてみる。こんなに真っ黒の液が出たのにまだこんな色をしている。
これってまだキノコ本来の色が出てきてないってことなんじゃないですかと聞いてみるが
じゃあこの黒い煮汁はなんなの?とのこと。・・・木由来の染料が先に出たってこと?そうか、タンニンだ!!!




さて、ヌッポリ。ヌメリイグチちゃうかな?図鑑を見せると、全然違うという。

そうやわな、こんな勘が全く通用しないことはバイタケの時にさんざん経験した。秋、地べた。ふうむ。

そこでFBでぼやいてみたら、私と同じ市内に住む方にぬっぽりを頂いたことがある!とコメントをいただきました。

『愛東町の方、おじいちゃんが採って来られて、お嫁さんが下さいました。愛東、小倉の辺りには、入会の山があり、そこで採れるようです。お嫁さんは、50代後半です!』

いちばん驚いたのがそのキノコの名前 『オオイチョウタケ』!

ありがとうございましたヽ(´▽`)/、もう解決できた~





2回目のはタンニンで染まってたってことですやん。2回目のやつがあまりに絶望的すぎて3回目のを忘れてた。
あれ?さっきより茶色が薄い。タンニンが2回目ので結構出尽くしたってこと?布、布~!




・・・解決ちゃうねんな、これが。

じつはこの染色家さんからぬっぽりのことを聞いていた。

あーぬっぽり?茶色くて丸くて、傘の裏はひだひだしたやつ、と両手の親指と人差し指で4cmほどの丸を作る。

図鑑を見せた時も、シバフタケやウバノカサなんかを指差して似てる~と。

しかし、ぬっぽりが採れるという時期も生えている場所(松林で松茸の頃)もシバフタケやウバノカサと違う、

しかし茶色くてひだのある丸いきのこなんて山のようにあるよ~と思っていたら、

教えていただいたキノコはそれすら外してきた。

オオイチョウタケはとても大きくて白い、もしこれなら染色家さんのような表現は絶対にしないはずだ。



バイタケの時もそうだった、近づいたと思ったら突き放され、また近づいたと思ったら引き離され・・・

そんな簡単に懐ろに入れてもらえるとは思っていない( ・`ω・´)



しかし、FBの方の場合、お嫁さんづてに頂いたとはいえおじいさまが直接採ってこられたキノコなので

しかもかなり特徴のあるキノコなので、現在のぬっぽりはこれでいいんじゃないかな。

いちおう、現地で確かめてみよう。

じゃあ、茶色くて小さくて丸い、松林に生える利用歴史のあるキノコはなんじゃらほいヽ(  ̄Д ̄;)ノ?

採集して塩漬けにして食べてたのは間違いない。

現地の当時の名前もわからない、謎の茶色いキノコかw。くやしい、絶対調べてやるっ!!!



10月に間に合うかなあ・・・今回の期限はけっこう早い。間に合わないとまた来年~。それも悔しい。







1回目の液。色がかなり薄い。想像するに、この段階ではタンニンもキノコの色も出ていない。



2回目の液。色が濃い、この茶色はロクショウグサレキンが染み込んでる木そのものに含まれているタンニンの色だ!



3回目の液。色が再び薄くなってきた。2回目でタンニンが多く煮出されてしまったようだ。
ロクショウグサレキンの本領はじつはここから以降だったんだ。



あ、話が染色当日に戻りますね(本線はここです)

なんとここでタイムアップ!始めてから4時間も経過してたんですね~(^_^;)

で、ほんとうはここからがロウショウグサレキン染めだったんだ、ということに気がついたんです!



しばらく時間を頂いて、またロクショウグサレキン採集してきます。

同じ山でたくさん採るのは良くないと思うので、ちょっとずつ、あちこちで頂いてきますね。

さあ、今度はどうしようかな。キノコの色はそうそう出てこない、逆にタンニンは一気に出てくる。

この時間差を利用すればロクショウグサレキン染めは可能だと思われる。



ここで皆さんをあっと言わせるんだ。

がんばるぞーヽ(´▽`)/!




そしてぬっぽりもギャランもね(^_^;)。





コメント

ロクショウグサレキンで染めたいねん(2)夢なのか

2018-05-12 19:04:01 | 日記


(続き)


染色のことは何もわからないので、彼女から染色そのもののことを色々教えていただいた。

代わり自分はキノコ、菌類のよもやま話を彼女に伝える。まあ、お互いぺっちゃらくっちゃら賑やかなこと。

お互い全く初めての分野、新鮮~(´▽`)♪



青系の染色なので藍染のやり方でやってみよう、ということでまず寸胴で熱湯を沸かした。

ただし80度を超えないこと、と何度も注意を受ける。

温度計を使って70度台であることを確認しながら、洗濯ネットに詰められたロクショウグサレキンを入れる。







藍染なら、10分くらい80度につけたら1度目のものは灰汁なので捨てるそうです。

2回目、3回目、4回目のものを混ぜて染色するらしい。

ちょとまてちょとまて、怖い!1回目のも残しておきません?てか、これで一度染めてみません?

と提案して1回目のものに布を付ける。



今回は、綿・麻・絹を用意した。

彦根にある大量の種類の布を販売する生地屋さんで相談したら、

今回の綿布はすでに生綿の布を白に染色してあるものだそうで、全く染色していないものは手に入らなかった

生地のお店の方も相談に乗ってくれて、いろいろ電話してくださったりしたがダメだった。

きれいに染まったら持ってくるね~と宣言したが、さて持っていくことはできるのだろうか(^_^;)。



染料はねタンパク質と結びつくのよ、とのこと。じゃあ絹はよし、でも綿や麻はタンパク質はない。

そこで植物繊維に染料と結びつくタンパク質をつけておくとのこと、その薬品が『はいどろ』というらしい。

私はてっきり『灰泥』だと思い込んで、動物の毛でも焼いたものなのかと思ってた。




カタカナか、てか英語かw



一度空にした鍋で新たに湯を沸かし、もう一度さっきのロクショウグサレキンを投入。
バケツに移した1回目の液にNAOHを投入中。染色性が上がるということらしい。



布を入れたあとは空気にさらしてはいけないそうなので、ラップで水面を蓋する



まず20分くらい布を入れて、そのあと取り出して絞る。

そのあと逆に空気にさらすことで化学反応が起き色が変わるらしい。




布をぶんぶん振り回して空気にさらす。どうだ!・・・_| ̄|○。。。



染まったのか、ゴミのような粒子が付着しただけなのか・・・(・ε・)ムムム



このあと1時間以上布を漬け込んだ・・・(大して変わらなかった気がする)

さて次の2回目の煮出した液が、藍染なら重要な液になる。

煮出した液を見ると・・・なんじゃあこりゃあ?




鍋の中の液の色が濃い!!!黒褐色、緑はどこいった~(;ω;)?



これも煮出しは10分、漬け込みは1時間以上(染まりがイマイチだったので)。

その間に液を移してまた新しいお湯を沸かして3回目の煮出し。これも藍染なら重要な液になる。



1時間後、2回目の液でめっちゃ染まった、茶色に_| ̄|○。。。緑ぃーどこ??


※ここから染色から話が脱線しますが

意外と重要な話になっていきます



3回目の煮出し(10分)の火もとめて2回目の1時間の漬け込みの間、染色家さんにキノコのことを聞いてみた

『昔はね。うちの持ってた山でも松茸が採れておばあちゃんと取りに行ったわ。今はまったくダメね』

『昔は採れたんですね、いいですね~』

この辺に住んでいらっしゃる方、育ちもこのあたりなのでこのあたりの山なんだろうな。

うんうん、このあたりの山持ちさんはみんなそう言わはる。

『おばあちゃんに松茸取りに行くで~って声かけられて、お婆ちゃんにくっついていったわ』

『他のキノコは?』

『他ねえ...ギャランとかヌッポリを一緒に採ったねえ、それは塩漬けにして冬の食料にするのよ』

『・・・ノート取ってきますっ!!!詳しく教えてください!!!』

うわあ、バイタケ以来久しぶりに血が騒ぐ話やん!

そのキノコのこと教えてくださいと言うと、もう昔のことだから今は全く山に入っていない、とのこと。

集落の人もほとんど山に入っていない、でも高齢の彼女のお母様ならわかるとのこと。

集落の方ならわかるかなあ・・・どうかなあ、と首をかしげる。実際に行ってみないとわからんなこりゃ。



(続く)
コメント

ロクショウグサレキンで染めたいねん(1)夢を語る

2018-05-12 01:36:56 | 日記


いやね、キノコをネットで調べていたときキノコで染物をやっていらっしゃるページを見つけたんです。

(参考:金沢大学里山里海自然学校富山きのこの会

私は生まれてこのかた、一度も染色なんてやったことがない。

素直にキノコで染色なんて出来るんやーと感動したわけです、染色の世界の奥深さも知らずに。

しかも私が見たページはロクショウグサレキンで染めてる。









これがロクショウグサレキン、小さなつぶつぶがキノコ(子実体)なんですが、

気になるのは木が深い緑色に染まってますよね。これはキノコ自身がだした色素なんです。

たぶんほかの菌に対して抗菌作用を持つ成分なんだと思います。


この深緑の色素を持つものにロクショウグサレキンモドキなんていうのもあります。



子実体が偏心性・柄が真ん中につかない


子実体の形が違いますが、同じように木が染まります。

いいやないですか、キノコで緑に布が染まるなんて素敵すぎてワクワクする!


すぐに古くからの知り合いの染色家の方に連絡して、ロクショウグサレキン染めしたい!と伝えました。

その方は自然素材の色素を抽出し、さらに、

自然の素材・例えば野草などから繊維を取って布を織り、それを染める染色をやっていらっしゃる方なんです。

残念ながらそんな人がそばにいながら飲み仲間としてしか付き合ってなかった(^_^;)。


ろろろ・・・ロクショ?何?

舌を噛みながら早口言葉のようなキノコの名前を必死で言いながら、まあ、試してみるのも面白いかも

と言ってくださいました。よかったヽ(´▽`)/



はっきり言います、

わたしも彼女(染色家)も物事を深く考えません。

染色できることは見たのですが、2人ともちゃんとやり方を読んでいません(きっぱり

ここから先は弥次喜多珍道中やと思って読んでください(ちゃんとした情報は上のリンクを読んでください)



で山に採りに行ったわけですよ。このキノコはほぼどこの山でもあります。

見なかった山なんてあるかなあ、記憶にないくらいどこの山でもあります。






1つの山でこのくらいづつ頂いて、3つの山で拾ってきました。なので量はこれ×3ですね。

多いのか少ないのか・・・バケツ2杯くらいですかね。

この日が来るまで、庭に放置し、上から落ち葉をかけて毎日ジョウロで水をかけて・・・

だってどうしたらいいのかわからんのやもん(^_^;)。結果的に落ち葉をかけていたのは良かったようです。

※紫外線を意図的に当てた実験では、動物細胞への抗菌作用が落ち、野外では緑色が赤褐色になるそうです。
ロクショウグサレキン(Chlorociboria aeruginosa complex)由来の色素(Xylindein)の抽出とその生理学的特性

森にボタっと落ちているんですが、水辺の近くなどの方が緑が深く染み込んでいます ※個人の感想です



能登川博物館の場所を借りてスタート!



この博物館で20年観察会をさせてもらっています。飲み会で人生相談?にのってもらっているパイセン


とりあえず、色が青系統なんで藍染のやり方をベースにやってみよっかーと始めていきました。







緑の部分をホジホジしながら、あと硬いものは細かくしてポイポイっと洗濯ネットに入れていきました。



(続く)
コメント

溶けるヒトヨタケ(原因編)・キノコの生と死

2018-05-07 15:23:52 | 日記



前回写真で見ていただいたとおり、ヒトヨタケは傘が開いたのと同時に傘が溶け始める

溶けることのメリットを考えたのが前回だったが

今回はその原因を考えたい




ヒトヨタケ・持って帰った次の日・・・一夜にして溶けた



いろいろきのこにまつわる本を読んでいると、

ヒトヨタケは溶けることで胞子を散布する、と一言で書かれていることが多い

胞子の散布様式のひとつだ、と



キノコの子実体について


ご存知の方も多いと思うが、菌類はほとんど菌糸で出来ている(酵母は単細胞で生きている菌類で菌糸を作らない)

一列に並んだ菌糸のひとつひとつが場所によって形を変え、菌糸列の組み合わせで適宜場所に応じた形になる

特に子実体は、土の中や分解している植物体の中から空中に飛び出し、大きな構造物を作り出している

その構造物の中を顕微鏡で見ると傘の表面やひだの中身やひだの外側、柄、e.t.c...

菌糸がいろいろな形や並びをして子実体という構造物を作り出していることがわかる







土の中ではほかの菌類、バクテリアや細菌類などと戦いながら成長を続け、勢力を拡大させている

空中に出た子実体はどうだろうか

菌糸が成長して勢力を拡大させる場ではない、胞子を散布させる場で

それが終わった空の子実体は、それ自体を大きく成長させる必要のないものだ



胞子を除く子実体は、終わるために生まれてきたのだ



世界最大の生き物はなんだ?という問いにきのこの名前が上がる

2kmにも及ぶオニナラタケの仲間、もちろん土の中の菌糸のDNAが同一個体だとわかったからだ

生きている=成長を余儀なくされる 今も生きているオニナラタケは成長し続けているのかな

分解する⇒養分を吸収する⇒養分を蓄える⇒成長する⇒養分が減る⇒分解する⇒養分を吸収する⇒・・・

この流れが途絶えた時、1つの生命が終わるのだ




世界で一番大きなきのこと検索してると出てくる・・・決してオニナラタケではない。
大きいといっても子実体が永遠に大きくなるのではなく、成長する部分=地中の菌糸体 が2kmあるのだ



大人になった人間は成長せずともとりあえず生きている(磨り減ってはいるが・・・)

成長していないのに生きている・・・のではない

常に私たちの体は新しく生み出され、古いものが消えているのだ

これがぴったり維持されれば個体として同じ形を保ちつつ毎日を生きることができる

つまり、昨日と同じ形や機能を有しているということは、新しく生み出されている証拠なのだ



このような現象は菌類にも起きている。菌糸の再構築だ

菌類の多くは自分で栄養を作り出すことができず、植物体の細胞壁を自身の体から出した酵素で分解し、

細胞壁の中の栄養を吸収しエネルギー源にしたり成長の糧としている

この時、菌類が分泌した、植物の細胞壁を構成する多糖類を分解するための酵素で、

やはり多糖類で出来ているキノコ自身の細胞壁を分解することができることが明らかになってきた

キノコ自身の酵素で自分の体を融解し、再構築することでその形態を安定させ、変化させている

『きのこ類が生産する糖質加水分解酵素・木材保存Vol39-2 2013』



(この総説に上記の内容の記述があるが、残念ながらその情報については出典の記載がない

この総説には木材腐朽菌の持つ複数の糖質分解酵素を紹介し、

ゲノム解析の終わった菌類を使ってそれぞれの酵素を特定する遺伝子などについて詳しく、

比較的わかりやすい言葉で解説されている)







ヒトヨタケの場合

溶けるスピードが妙に早い、ほかの子実体はいらなくなったあとしなびて消えていくが

そもそも傘が開いたあと、風で胞子を飛ばすのであれば子実体の形をキープしないと飛んでいかない

そこで溶かすのは胞子を風で飛ばすのではなく別の目的だと前回考えた

胞子を飛ばし終えたあと、あの勢いで溶けるやつはほかには見たことがない

生きることを放棄するだけでいいのだろう



さて、溶ける原因を探るのに溶けた液体をいろいろ観察した

溶けてできた液体は透明の水分の中に黒褐色の胞子が浮いている状態なのだが

水を1滴も加えていないにも関わらず発生したその透明の液体に入っているものが原因を考える上で大事だと思った







はてさて、微生物の専門家ではないので透明の水に浮かぶこれが何なのかはわからない

ただ親切な方にPDF培地を作っていただいたので、この間からカビだのなんだの身近なものを培養しているのだが

その中に顕微鏡下での観察上、一番大きさ形がそっくりなのが納豆を培養して得た枯草菌(バチルス sp.)だ

その可能性もあるようなないような。。。

まあ、これが一気にヒトヨタケを腐らせたとは思わないが常在菌ではあるんだろうな



溶け切る寸前のゼリー状のものも見てみた




菌糸の細胞壁の影が尋常じゃなく薄い。菌糸の細胞壁が徐々に薄くなっている



柄に近いところのひだの菌糸の細胞壁はもうちょっと残っている



放っておいて溶けたので、菌によるものか、あとは自己融解か

自己融解は本来生命体が死んだあと、自身の体から出てきた酵素により死体が分解されていくことである。

放棄されてはいるが死んではいない、この言葉を使っていいものかどうか。

これを見る限りオートファジーで細胞小器官が関わって無くなっていくのでもなさそうだ

とにかく自身が出した糖質加水分解酵素で細胞壁が薄くなっていっているのだろう

当然、この酵素で胞子はなんのマイナスの影響も受けていないと思われる



この時点で、私は子実体を折ってしまっている

本来なら分解して溶けだした栄養は柄や土の中の菌糸が回収するはずのものだったのではないだろうか

それがあの紙コップの中に溜まっているのではなかろうか




2日後、紙コップの中から溶け残ったものを回収して洗ったもの、柄はまるまる残っている
丸いものは傘の中央部にあった肉そのもの。菌糸などの構造は一切ない、なんだろう?



柄にはあの酵素が働いていない、やはり直接胞子かかわる傘の菌糸だけだ

子実体の高さは最後までキープしておきたいのか・・・なぜだ?ここは原因を突き止める方でまた考えてみよう

当然これ以上のことを調べようと思うと、あの液体から分解酵素や分解されたあとの多糖類を分析することになる

こういう生態をもとに、サンプルを採集し研究が進むといいな(どこかにあるんだろうか)



今回、新しい発見があったわけではないのだが、

ヒトヨタケの融解を紐解こうとしていろいろ調べたら、キノコ本来の持つ能力を知ることができた

じつはヒトヨタケを調べていたら、菌糸の融解以外のことでヒトヨタケの持つ能力(虫を喰う)や

菌類自体にやはりオートファジーの能力が備わっていて、攻撃にも守備にも使えるという面白い話がごろごろ出てきた

またどこかで書きたいな




そのうち、では。


コメント

溶けるヒトヨタケ(目的編)・腐くてナンボ

2018-04-15 10:52:55 | 日記





ヒトヨタケ


不思議なキノコ。

溶けるキノコ。


どうして溶けるんだろう、目的、原因、その他・・・


今回は 『目的編』

往々にして生き物の目的って人間が頭の中で自分が納得のいくように都合よく解釈したもの

説得力があるとその説が次の説得力のある説がでてくるまで生き残る


そんなこんなで自分の納得のいくように解釈してみよう。





採集してきたヒトヨタケを紙コップに入れていたら、案の定、一晩で溶けた。

生えたまま溶けている写真を見ると、どろっとしている感じがするが

柔らかくなった傘と、黒いサラサラの液体に分かれている。


この黒い水がどのくらいサラサラかというと・・・




こんなことができるくらい♪


実は墨汁も透明の水に黒くて細かい粒子が混ざって出来ている(この前の投稿参照)。

書いた紙を確認してみると、肉眼でははっきり確認できないが、

黒い水確認した時にはわからなかった、粉っぽいものが確認できる。


さて、ここで黒い水を顕微鏡で確認してみる。





水で一切薄めていません、やはり水分は透明ですね。

黒い粒子に見えていたものは濃い褐色の胞子、サイズは4μmほど、

墨汁の粒子の約十倍の大きさ、それでも真っ黒な水に見えるんですね。


この水は100%ヒトヨタケ起源。

だから雨が降らなくても、勝手にヒトヨタケから水がでてきて、

その水に胞子が溶け込んで黒い水になって流れていくという構図が見える。


原因も気になるところだが、ここは目的編なのでひとまず置いとく。





どうしてこんなことをするんだろう。

胞子が熟したら溶ける、水分中に大量の胞子があることから、胞子の散布のためだということはわかる。

風に乗って飛ばす気なんてさらっさらない、

むしろ胞子が飛ばないように水に閉じ込めて流している感じ。

でも水に流すのなら、ツチグリのように雨のタイミングに胞子が出る仕組みがいいんじゃないかな。


このヒトヨタケを最終した日の土はからっからに乾いていた。

なのに、あたりのヒトヨタケも既に溶けていて流れ出していた。

何がしたいねん、こんな天気のいい日に(^_^;)





顕微鏡で見た次の日、ごろっと自宅の床に転がってそんなことを考えていた

・・・腐い

なにこれ、どこから?あれまあ、紙コップから異臭がする。

うわあ、結構な異臭だ。ヒトヨタケやりよる~と紙コップを覗いていてふと思った。


ヒトヨタケと同じ日に採集したハルシメジやその前に採集したウラベニガサなどは、

そんなに匂いがしていない。ヒトヨタケだけ猛烈な異臭を放っている。ということは・・・



『もしこの液体化が胞子の散布と大きく関わっているのなら、

 胞子の散布に結びつく可能性があるのはこの腐さかもしれない』



スッポンタケやキヌガサタケのように腐さで虫を集めて、胞子を散布するキノコもいる。

匂いで虫を集めて、次どないするのん?そこで文献を探してみた。

菌食性双翅目幼虫の消化管内担子菌胞子

日本菌学会掲載の論文だ。

『ハラタケ亜門の複数の子実体から菌食性の幼虫を取り出し、幼虫の消化管の中を調べられた。そこで胞子双翅目昆虫の幼虫による子実体中での胞子摂食が高頻度で起きていること、幼虫の消化管内の胞子の多くはほとんど物理的損傷を受けていないことが示された』

胞子を食べる虫が胞子を運ぶ可能性は十分に検証されていると思う。


液体化しなくても菌食性の幼虫は存在する。むしろ幼虫は成虫になるまで子実体の中に長く滞在したいはずだ。

ではヒトヨタケの胞子の運び屋は誰か?


『分かりません』


ここでようやく、次、自分がしないといけないことが見えてきたぞ!!

胞子食であること、匂いでいち早くその存在に気づいて虫の側から積極的にやってきてくれること。

その前提で観察すれば、また、新たなことが見えてくるんじゃないかな。


そこがキノコ観察の楽しいとこやね!みなさんも何かわかったら教えてくださいヽ(´▽`)/!

コメント