手塚様親子の旅の記録です。前回からの続きですのでお楽しみください。
【2日目・大晦日】
5:30薄明るくなり目覚め、シャワーを浴びそそくさと出発準備をする。
まだ涼しい空気の中、東の空がオレンジ色に燃え、潅木の間から朝日がのぞく。今日はどんな一日になるのだろう。大好きな時間だ。
暖機を終えスチュアートハイウエイを南下、少し遠回りをして100kmほどダートを走る予定だ。潤はしばらく後ろのベッドで寝かせながら走る。さすがに私と同じ睡眠時間では体が持たないだろう。
140km走行した所で西へ、アーネスト・ジルスロードに入る。未舗装でラフな部分やワインディングもあるが、道幅は広くおおむね平坦だ。安全に注意してだいたい80~100km/h位で巡航する。硬い赤土の路面は、おおむね砂利道と同じ位の感覚だろうか。
車は快調だ。スピードメーターが200kmまでなのと、サブバッテリー用にアイドルアップスイッチがある他は、インパネもスイッチも国内仕様と同じなので操作に戸惑いはない。もともと車体は乗り心地重視の設計でないし、架装もあるので振動は大きく、ガタピシとそこら中激しくキシミまくっているが、エンジンはスムースで吹け上がりにも余裕がある。
こういうホコリっぽい所を走り回る場合は、地面から少しでも離れて清浄な空気を取り入れられるシュノーケルは、必需装備なのだろう。
赤くまっすぐなダート、激しい振動音、バックミラーには通過した瞬間から立ち上がる、赤く大きな砂煙で後ろは見えない。
「おー、いいねぇー。」その景色はどこかで体験した事があるが、オーストラリアで車を運転した事はない。・・・運転しながらぼんやり記憶をたどり思い出した。
・・・それはTV画面の中に見た、あの光景だった。
そういう劣悪な環境でも潤は、振動の中で何事もないように眠っている。脳みそが混ざらないか少し心配だが、頼もしい限りだ。(笑)
まもなく「ん?・・・メトロライト?・・・クレーター・・・?」の看板を見る。よくわからないが、なんだろ~?と興味津々に寄り道を決める。
5kmほど走るとレストエリアと共に現れたのは、なんと本物のクレーターだった。宇宙からの隕石が衝突して出来るあれだ。
直径150m位だろうか、規模が小さいがゆえに全景を見渡すことが容易だ。息子を起こし二人で驚きながら周囲を歩いた。「すげ~!!」こういうシーニック・ポイントには必ず絵入りの説明ボードがいくつかあるので、見ているとだいたい何が説明してあるか想像できる。
大抵の場合、こういうものは自然環境や人間の手などで、消滅してしまうのが通常の流れなのだろうが、現存できたのは、数百km以内に人間が住んでいないという地形も幸いしているのだろう。
過去の気の遠くなるよう前に起きた宇宙の営みの、その痕跡がそのまま残っているという事実に驚く。
再び走り続け、「フィンクリバー・4WDルート」の入口に近づく。
その道にとても興味があった。一台や子供と二人では危険だと言われ、レスキューに4千㌦の、あの道である。
「・・行こうぜ。」せっかくなので大丈夫な所だけ、入ってみる事にした。(笑)
地図では全行程でも100km程しかないのだが、現地で貰った地図にも「ローカルアドバイスと注意が必要な道、最深部分はレンタル車進入禁止」として載っていた。(帰国後の資料整理で気づいた)
荒れた道を20kmほど入った場所にグリット(動物は通れないゲート)があり、その近くに道の説明ボードがあった。
ん?中央付近に弾痕がある。走りながら退屈しのぎに狙うのだ。(笑)
オーストラリアの一般社会に銃は無い事になっているが、奥地のこういう看板などでたまにその存在を感じる。
その看板をよく見ると「一台では入るな。増水に注意して、通れる時だけ行け」と書いてある。ルート図を見て、なぜ容易にスタックするのか理解した。
・・・河を交差しながら走る道なのである。恐らく、何度も渡河があるが当然のように橋はないし、川底を通ったり、横切ったりする部分があるだろう。こういう内陸奥地の川に通常、水はない事が多い。何年も枯れたままの時だってある。雨季やまれに雨が降った時だけに水が流れ、その流れは低地に流れ込み、水たまりが蒸発した後に成分の塩分などが残り塩湖になる。
乾いた川底は一見、歩いてみると平坦だし硬く締まって走り易そうだが、川砂の堆積なので自動車の重みでタイヤを空転させたりすると、あっさり掘れる。そしてその層は自動車のタイヤよりはずっと深い。ハッと気づくと、そこは大きなアリ地獄の真ん中だったりするのだ。
水が流れている時には柔らかい砂は流されて、底は締まっている場合が多いが、それでもまず、最初に自分が歩いて安全に渡りきれるか確認する。それが出来ないような所は、怖くて車など入れられない。
小さな塩湖をいくつか通過し、ゲートからさらに10km位入ったあたりで砂が深い所が目立ち始める、だいたい2WDでスタックする位。「お父さん、引き返そう。」潤の表情がだんだん不安に曇る。
潤とは日本で何度か一緒にスタックを経験しているので、彼はセルフリカバリーグッズを装備しない重量級のランクルが単独で深刻にスタックすると、どうなるか知っている。
まだまだ行けるが、今日の行程も考え引き返す。夕方までにあと35Okmは走らねばならない。
恐らくここが、今回の旅で一番の奥地になるだろうし、再び訪れるかもわからない。彼のアドバイスに従い空いたペットボトルに路肩の赤い砂を詰める。夏の甲子園球児はこういう気持ちだろうか。(笑)
寄り道も含め150kmほどダートを走ったのち、ラスターハイウエイに出てひたすら西へ走る。低い潅木しかないので景色の見通しはよい。数百km間隔でロードハウスがある他に人の気配はない。時間優先で快調に飛ばす。マウントコーナーが見えてくると、エアーズロックまではもう一息だ。
途中道端のレストエリアで小休憩。東屋の日陰でパンをかじっていると、ランクル80が大きなキャンピングトレーラーを引いて入ってきた。なんと後輪が2軸で6輪!どこでも走れそうだ。荷台はパネルバンに改造されている。日本の改造車の感覚は遥かに上回る。トレーラーには日本メーカーの「Daiwa」の大きなロゴ文字。釣りをしながら旅しているのだろう。
これから私たちと同じ、エアーズロックに向かうと言う中年の夫婦だった。
【2日目・大晦日】
5:30薄明るくなり目覚め、シャワーを浴びそそくさと出発準備をする。
まだ涼しい空気の中、東の空がオレンジ色に燃え、潅木の間から朝日がのぞく。今日はどんな一日になるのだろう。大好きな時間だ。
暖機を終えスチュアートハイウエイを南下、少し遠回りをして100kmほどダートを走る予定だ。潤はしばらく後ろのベッドで寝かせながら走る。さすがに私と同じ睡眠時間では体が持たないだろう。
140km走行した所で西へ、アーネスト・ジルスロードに入る。未舗装でラフな部分やワインディングもあるが、道幅は広くおおむね平坦だ。安全に注意してだいたい80~100km/h位で巡航する。硬い赤土の路面は、おおむね砂利道と同じ位の感覚だろうか。
車は快調だ。スピードメーターが200kmまでなのと、サブバッテリー用にアイドルアップスイッチがある他は、インパネもスイッチも国内仕様と同じなので操作に戸惑いはない。もともと車体は乗り心地重視の設計でないし、架装もあるので振動は大きく、ガタピシとそこら中激しくキシミまくっているが、エンジンはスムースで吹け上がりにも余裕がある。
こういうホコリっぽい所を走り回る場合は、地面から少しでも離れて清浄な空気を取り入れられるシュノーケルは、必需装備なのだろう。
赤くまっすぐなダート、激しい振動音、バックミラーには通過した瞬間から立ち上がる、赤く大きな砂煙で後ろは見えない。
「おー、いいねぇー。」その景色はどこかで体験した事があるが、オーストラリアで車を運転した事はない。・・・運転しながらぼんやり記憶をたどり思い出した。
・・・それはTV画面の中に見た、あの光景だった。
そういう劣悪な環境でも潤は、振動の中で何事もないように眠っている。脳みそが混ざらないか少し心配だが、頼もしい限りだ。(笑)
まもなく「ん?・・・メトロライト?・・・クレーター・・・?」の看板を見る。よくわからないが、なんだろ~?と興味津々に寄り道を決める。
5kmほど走るとレストエリアと共に現れたのは、なんと本物のクレーターだった。宇宙からの隕石が衝突して出来るあれだ。
直径150m位だろうか、規模が小さいがゆえに全景を見渡すことが容易だ。息子を起こし二人で驚きながら周囲を歩いた。「すげ~!!」こういうシーニック・ポイントには必ず絵入りの説明ボードがいくつかあるので、見ているとだいたい何が説明してあるか想像できる。
大抵の場合、こういうものは自然環境や人間の手などで、消滅してしまうのが通常の流れなのだろうが、現存できたのは、数百km以内に人間が住んでいないという地形も幸いしているのだろう。
過去の気の遠くなるよう前に起きた宇宙の営みの、その痕跡がそのまま残っているという事実に驚く。
再び走り続け、「フィンクリバー・4WDルート」の入口に近づく。
その道にとても興味があった。一台や子供と二人では危険だと言われ、レスキューに4千㌦の、あの道である。
「・・行こうぜ。」せっかくなので大丈夫な所だけ、入ってみる事にした。(笑)
地図では全行程でも100km程しかないのだが、現地で貰った地図にも「ローカルアドバイスと注意が必要な道、最深部分はレンタル車進入禁止」として載っていた。(帰国後の資料整理で気づいた)
荒れた道を20kmほど入った場所にグリット(動物は通れないゲート)があり、その近くに道の説明ボードがあった。
ん?中央付近に弾痕がある。走りながら退屈しのぎに狙うのだ。(笑)
オーストラリアの一般社会に銃は無い事になっているが、奥地のこういう看板などでたまにその存在を感じる。
その看板をよく見ると「一台では入るな。増水に注意して、通れる時だけ行け」と書いてある。ルート図を見て、なぜ容易にスタックするのか理解した。
・・・河を交差しながら走る道なのである。恐らく、何度も渡河があるが当然のように橋はないし、川底を通ったり、横切ったりする部分があるだろう。こういう内陸奥地の川に通常、水はない事が多い。何年も枯れたままの時だってある。雨季やまれに雨が降った時だけに水が流れ、その流れは低地に流れ込み、水たまりが蒸発した後に成分の塩分などが残り塩湖になる。
乾いた川底は一見、歩いてみると平坦だし硬く締まって走り易そうだが、川砂の堆積なので自動車の重みでタイヤを空転させたりすると、あっさり掘れる。そしてその層は自動車のタイヤよりはずっと深い。ハッと気づくと、そこは大きなアリ地獄の真ん中だったりするのだ。
水が流れている時には柔らかい砂は流されて、底は締まっている場合が多いが、それでもまず、最初に自分が歩いて安全に渡りきれるか確認する。それが出来ないような所は、怖くて車など入れられない。
小さな塩湖をいくつか通過し、ゲートからさらに10km位入ったあたりで砂が深い所が目立ち始める、だいたい2WDでスタックする位。「お父さん、引き返そう。」潤の表情がだんだん不安に曇る。
潤とは日本で何度か一緒にスタックを経験しているので、彼はセルフリカバリーグッズを装備しない重量級のランクルが単独で深刻にスタックすると、どうなるか知っている。
まだまだ行けるが、今日の行程も考え引き返す。夕方までにあと35Okmは走らねばならない。
恐らくここが、今回の旅で一番の奥地になるだろうし、再び訪れるかもわからない。彼のアドバイスに従い空いたペットボトルに路肩の赤い砂を詰める。夏の甲子園球児はこういう気持ちだろうか。(笑)
寄り道も含め150kmほどダートを走ったのち、ラスターハイウエイに出てひたすら西へ走る。低い潅木しかないので景色の見通しはよい。数百km間隔でロードハウスがある他に人の気配はない。時間優先で快調に飛ばす。マウントコーナーが見えてくると、エアーズロックまではもう一息だ。
途中道端のレストエリアで小休憩。東屋の日陰でパンをかじっていると、ランクル80が大きなキャンピングトレーラーを引いて入ってきた。なんと後輪が2軸で6輪!どこでも走れそうだ。荷台はパネルバンに改造されている。日本の改造車の感覚は遥かに上回る。トレーラーには日本メーカーの「Daiwa」の大きなロゴ文字。釣りをしながら旅しているのだろう。
これから私たちと同じ、エアーズロックに向かうと言う中年の夫婦だった。