夏喜のものろーぐのべる。

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久遠の縁~八犬伝物語~第23話 疑似愛情

2011-05-30 22:35:32 | 久遠の縁~八犬伝シリーズ~
「はあ・・・」
公演はなんとか無事に終わったものの、また数日経てば春の大会に出る孝。しかも主役で。
休み時間も、台本とにらめっこし、必死でいいものを作ろうとしている。
そのとき。
「よっ!孝!」
信が孝の教室まで来ている。3年生だが、2年にも評判は高い。
「あ・・・すぐ呼びますね!!」
近くにいた女子が孝を呼んでるのだと気付いたようだ。
「あ・・・ありがと。・・・つか信先輩、いきなりなんですか?」
スタスタと向かう孝。
「いや~、ちゃんとやってるかなって思って。とりあえず、犬士の方もなんとかしないとだし。」
やや小声で言う。
「わかってますよ・・・サッカー部にだって顔出さないといけないし、犬士のこともあるし・・・」
「あと一人。なんだけどな・・・気になることがあって。」
「何ですか?」
「あのオバサン。船田先生だよ。しつこいあの先生をなんとかしなきゃだろ?玉梓は出てきたけど・・・まずは子分から倒さないと、だろ?」
「子分って・・・」
「まあ、大輔先生とまた会議だな。」
「うん。」

船田には用心せよ。
これは信が他の犬士にもちゃんと伝えたようだ。
一方・・・

「何ですか、これは・・・」
古典的な、放課後大が予備校へ行こうとするとき、靴箱の中に手紙が入っていたのだった。
四つ折りの白い紙。
「ん?」
話がある 私の大切な 息子へ

「あの人は・・・!」
すぐさま大は、呼び出された国語科研究室へ向かう。

バン!!
勢いよくドアを開ける。
「あら、待ってた。」
足を組みながら、奥の応接スペースに母はいた。

「どういうつもりですか・・・?学校ではこのことは内密にしろと・・・」
「だから内密にしたんじゃないか。手紙を入れて。」
「でも・・・」
「それより。もうお前、犬士なんだろ?礼門家がそんなことしていていいのかい?」
「これは・・・私の意志です。それに、もう息子じゃありませんから。」
「ハハハ!何を言うか。」
突然立ち上がり、大に近づく。
「あんたの父親に近づいて術をかけたのは私だよ。それに、父親の心は既に私の手の内。わかってるんだろ?」
「うるさい・・・父はあんたのせいでおかしくなったんだ・・・会社は経営危機、なんとか社員さんたちが頑張っているけど・・・でもそれも限界だ・・・」
「あんたが犬士じゃなければねえ・・・ねえ、私と一緒に来ない?玉梓様はきっとよくしてくれるわ。その麗しい美貌をもってこそ。」

「断る!!」
「何?」
大は母・・・もとい船田を突き飛ばした。
「あんたが余計なことをしなければ・・・父は・・所詮財産目当てなんだろ!!」
「わかってるんじゃないか。でもねえ、時には嘘でも愛情ってもんが必要なんだろうよ!!」
「黙れ!!」
穏やかな大の性格が一変した。
「家庭を壊された子どもの気持ちが、お前に分かるか!!」
「くっ・・・もう、やるしかないようね。」
船田が大に手をかざす。
「は!!」
「うわっ・・・経よ!!」
すぐさま大は経を出す。
経文は船田を縛った。
「うっ・・・また腕を上げたか。」
「みんな・・・来てくれるかな・・・」

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