夏喜のものろーぐのべる。

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久遠の縁~八犬伝物語~ 第38話 不動恋心

2012-10-26 17:39:32 | 久遠の縁~八犬伝シリーズ~
「よかった・・・ほんとに・・・」
大は座り込む。
「先輩・・・これで、断ち切ることが出来たんですね。」
孝も一緒に座り、話しかける。
「ああ・・・ほんとに・・・よかった・・・父さん・・」

大は因果を断ち切ったが、まだすべて終わってはいなかった。

「昨日いなかったが、何をしていたんですかね?」
放課後。
智香が練習場所のホールの入り口の前に立ちふさがる。
仁王立ちで、じっと孝をにらむ。
「ここじゃ大きな声で話せないんだけど・・・」
「言ってください。主役が本番前にいないと困るんです。」

ぐいっ。
「え?」
智香の腕をひっぱり、耳元で話す。
「な・・なにを・・・」
「玉梓の手下を倒してた。大先輩の父親が化け猫で、義理の弟も。二人とも玉梓と同類だったから、先輩方と倒していた」
「・・・ほんとう?」
声が震え、顔が赤い。
「ほんとだ・・・って、どうしたの?顔が赤いけど・・・」
「なんでもない!!」
孝の腕を振り払う。

「とにかく本番前だ。なんとしてでも最優秀を狙う。覚悟はいいですよね?」
智香がまだ赤い顔のまま、にらんでくる。
「は、はい・・・お手柔らかに・・・」

そのころ。
「やばいんだよ・・・」
「何がです?」
大輔先生が、荘太と一緒に教室で思案していた。
誰もいないので、声が筒抜けではあるが・・・
「玉梓本体の気配をここ最近全く感じない。何か潜めているんじゃないかと・・・」
「でも、孝に聞きましたが、大さんの父親が化け猫で、そいつを退治していたって。」
孝は、荘太に昨日の時点でメールをしていたようだ。

「関係あるかもしれないけど・・・何か、また大きなことがあるに違いないが・・・」
「それを俺だけと一緒に話しても、効果ないんじゃないですか?」
バッサリ切り捨てるように言う。

「いや・・・でも大会とか、予備校とかみんな忙しいし、でも玉梓の手下が来たらって思うと・・・あー!!俺はどうしたらいい!!犬士たちの力になりたいのにー!!」
叫ぶ大輔。
「伏姫が、きっと助けてくれますって。」
「・・・う、うん・・・」
生徒に励まされていた。

部活も終わり、孝はたまたま方向が一緒だった智香と駅まで歩くことに。
「野本さんの敵・・・は、もう大丈夫なんでしょ?」
「・・・あなたが色々したから・・・もう、いい。」
「あ、そうだったね・・・でも、まだまだ敵は出てくるし、なんとかしないとね!」
「・・・わかってる・・・」

また顔が赤い。
そのときだった。
駅に着いたとき、改札の近くに見覚えのある女子が。

「路香?」
「待ってたんだけど・・・ねえ、なんでまたその子と一緒なの?」