今回は、静岡県清水市(現在は静岡市清水区)にある業務用通信機メーカー「小林無線製作所」が製造した受信機の話です。
このブログに登場させた理由は、国内の小さな企業が、手づくりで独自に部品から一つ一つ丁寧に作り上げ、大変優秀な製品を世に送り出して、世界にその名を知られる性能を発揮したことを紹介したかったからです。
無線機に興味がある方は、この会社についていろいろな方がHPに掲載されていますので検索してみたください。
1973年、わたしは清水市と焼津市で働いていました。船舶関係の電子機器メーカーでしたので仕事は主に港に入る船舶の入港にあわせてスケジュールを組んでいました。特に遠洋鮪の基地としていろいろな漁船が入港していた焼津港は鰹鮪の水揚げで賑わっていました。そのたびに、レーダー、魚群探知機、ロランシステム(船舶などの位置を測定する装置)、無線機などの修理や整備に携わっていました。
その遠洋鮪船などの漁業に携わる通信士から、絶賛されていた通信機メーカーが「小林無線製作所」です。当時は通信手段として、中・短波帯での「電信」(CW)や「SSB」での通信がまだ多く利用されていました。伝播効率もよく、条件がよければ地球の裏側でも楽に届きますので、遠くインド洋や大西洋方面まで鮪を取りに出かけていた船舶から、本国の基地や船主などに逐次連絡をすることが通信士の重要な任務でしたので、受信機の性能が大変重要でした。このメーカーの受信機は、受信性能も優れ、ドリフトも少なく業務用として大変信頼のおけるもので、特にそのスピーカーから流れる「CW」の音が聞きやすく独特のトーンで、通信士を虜にしていたようです。
この会社は、小さな町工場くらいの規模でしたが、製造していた受信機はすばらしいもので、漁業関係の通信士から絶賛されて、うわさが広まり、大型船の受信機としても採用されることも多かったようです。メインダイヤル附近の独特のパネルデザインは、すぐに「小林無線製作所」製の受信機とわかります。
少数精鋭で製造に取り組み、当時米国ではコリンズ、やドレークなどの一流メーカーが優秀な無線機を作っていましたが、その回路を研究し、部品なども自社で製作し、内部の機器の配置や、メンテナンスを考えた構成は、まさに芸術品です。
最初の写真は、商船の無線室に設置されていたF社製コンソール型通信設備です。
左上の窓の中に、1KWクラスの送信管が搭載されています。中央に二台の受信機が組み込まれていますが、左がメイン受信機「DH-66S」右がサブ受信機「DH-18S」ですが、当時JRCなど大手企業の通信設備でも受信機は「小林無線製作所」製にして欲しいと言う要望が多かったそうです。
「DH-66S」の特徴
「DH-66」(真空管式)をソリッドステート化した機種
大変聞きやすい音質と、自社製大型8連バリコンをモ-タ-ドライブでバンド切替 をするメカニカルな機構はすばらしいものです。切れの良いLCブロックフイルタ-による 0.5/2/4KHzの選択度3段切替、生産台数も少なく大変貴重です。
受信周波数 90KHz~32MHzで31バンド分割。
実は私の勤めていたメーカーは無線機を東京工場で作っていました。しかし受信機はこの「小林無線製作所」のOEMでした。当時私は入社したばかりでしたので、そのあたりのことは良くわからず、清水市のこの工場に、品物をとりにに行くように上司から指示があり、受信機を車に積んで帰った覚えがありました。数十年後になって、無線機コレクターのHPを見ていて、懐かしい機器が並んでいる中に、この会社の無線機のことが詳しく書かれていました。あれが伝説の受信機だったのかと気がついたしだいです。当時は真空管から、半導体に移行する過渡期でしたが、その機種は、トランジスター化されたばかりの「DH-66S」でした。その後さらにデジタル表示化された銘機「AS-76」が登場しますが、真空管時代(DH-66)のほうがよかったというファンもおられるようです。
実物は、手元にありませんが、当時この受信機(DH-66S)を取り付けた船の無線室で触ったことを覚えています。今この手の機種は、当時を知る方々ににとても人気があり数十万で取引されているようですね。業務用の機器は大変頑丈で、特に船舶用はしっかりと作られています。
先日、地元企業(岡山県内)の会社社長を紹介するテレビ番組で、ある企業の社長が、無線の趣味の話をされていましたが、その本人のすぐ後ろに、銘機「AS-76」が鎮座しているではありませんか。知る人ぞ知るこの受信機が今でも大切に使われているのに感動しました。
AS-76 性能
受信周波数90KHz~32MHzの32バンド。
デジタル0.1KHz直読で選択度は0.3/1/2.4/4.4KHz、
LSBはBFOを可変し受信可能。
AM受信時のプリチュ-ン、アンテナチューン搭載
スポット36CH(クリスタル)が実装できます。自動同調のメカニカル動作は感動物。
このブログに登場させた理由は、国内の小さな企業が、手づくりで独自に部品から一つ一つ丁寧に作り上げ、大変優秀な製品を世に送り出して、世界にその名を知られる性能を発揮したことを紹介したかったからです。
無線機に興味がある方は、この会社についていろいろな方がHPに掲載されていますので検索してみたください。
1973年、わたしは清水市と焼津市で働いていました。船舶関係の電子機器メーカーでしたので仕事は主に港に入る船舶の入港にあわせてスケジュールを組んでいました。特に遠洋鮪の基地としていろいろな漁船が入港していた焼津港は鰹鮪の水揚げで賑わっていました。そのたびに、レーダー、魚群探知機、ロランシステム(船舶などの位置を測定する装置)、無線機などの修理や整備に携わっていました。
その遠洋鮪船などの漁業に携わる通信士から、絶賛されていた通信機メーカーが「小林無線製作所」です。当時は通信手段として、中・短波帯での「電信」(CW)や「SSB」での通信がまだ多く利用されていました。伝播効率もよく、条件がよければ地球の裏側でも楽に届きますので、遠くインド洋や大西洋方面まで鮪を取りに出かけていた船舶から、本国の基地や船主などに逐次連絡をすることが通信士の重要な任務でしたので、受信機の性能が大変重要でした。このメーカーの受信機は、受信性能も優れ、ドリフトも少なく業務用として大変信頼のおけるもので、特にそのスピーカーから流れる「CW」の音が聞きやすく独特のトーンで、通信士を虜にしていたようです。
この会社は、小さな町工場くらいの規模でしたが、製造していた受信機はすばらしいもので、漁業関係の通信士から絶賛されて、うわさが広まり、大型船の受信機としても採用されることも多かったようです。メインダイヤル附近の独特のパネルデザインは、すぐに「小林無線製作所」製の受信機とわかります。
少数精鋭で製造に取り組み、当時米国ではコリンズ、やドレークなどの一流メーカーが優秀な無線機を作っていましたが、その回路を研究し、部品なども自社で製作し、内部の機器の配置や、メンテナンスを考えた構成は、まさに芸術品です。
最初の写真は、商船の無線室に設置されていたF社製コンソール型通信設備です。
左上の窓の中に、1KWクラスの送信管が搭載されています。中央に二台の受信機が組み込まれていますが、左がメイン受信機「DH-66S」右がサブ受信機「DH-18S」ですが、当時JRCなど大手企業の通信設備でも受信機は「小林無線製作所」製にして欲しいと言う要望が多かったそうです。
「DH-66S」の特徴
「DH-66」(真空管式)をソリッドステート化した機種
大変聞きやすい音質と、自社製大型8連バリコンをモ-タ-ドライブでバンド切替 をするメカニカルな機構はすばらしいものです。切れの良いLCブロックフイルタ-による 0.5/2/4KHzの選択度3段切替、生産台数も少なく大変貴重です。
受信周波数 90KHz~32MHzで31バンド分割。
実は私の勤めていたメーカーは無線機を東京工場で作っていました。しかし受信機はこの「小林無線製作所」のOEMでした。当時私は入社したばかりでしたので、そのあたりのことは良くわからず、清水市のこの工場に、品物をとりにに行くように上司から指示があり、受信機を車に積んで帰った覚えがありました。数十年後になって、無線機コレクターのHPを見ていて、懐かしい機器が並んでいる中に、この会社の無線機のことが詳しく書かれていました。あれが伝説の受信機だったのかと気がついたしだいです。当時は真空管から、半導体に移行する過渡期でしたが、その機種は、トランジスター化されたばかりの「DH-66S」でした。その後さらにデジタル表示化された銘機「AS-76」が登場しますが、真空管時代(DH-66)のほうがよかったというファンもおられるようです。
実物は、手元にありませんが、当時この受信機(DH-66S)を取り付けた船の無線室で触ったことを覚えています。今この手の機種は、当時を知る方々ににとても人気があり数十万で取引されているようですね。業務用の機器は大変頑丈で、特に船舶用はしっかりと作られています。
先日、地元企業(岡山県内)の会社社長を紹介するテレビ番組で、ある企業の社長が、無線の趣味の話をされていましたが、その本人のすぐ後ろに、銘機「AS-76」が鎮座しているではありませんか。知る人ぞ知るこの受信機が今でも大切に使われているのに感動しました。
AS-76 性能
受信周波数90KHz~32MHzの32バンド。
デジタル0.1KHz直読で選択度は0.3/1/2.4/4.4KHz、
LSBはBFOを可変し受信可能。
AM受信時のプリチュ-ン、アンテナチューン搭載
スポット36CH(クリスタル)が実装できます。自動同調のメカニカル動作は感動物。
懐かしい「沈黙時間帯」表示の時計。
お世話に成りました・・・
この時代ならようやく衛星通信が企画された頃?かな?
当時はJRC, KODEN,FURUNO、沖、協立など色々な
電気通信機器やレーダーメーカーがありましたね。