「アニメと生命と放浪と ~「アトム」「タッチ」「銀河鉄道の夜」を流れる表現の系譜~ (ワニブックスPLUS新書) [新書]」杉井サブローを読みました。
杉井さんのアニメ制作に対する姿勢、哲学が読めて非常に面白かったです。
杉井さんの「情感のある映画をつくる」フィルム作りに対する哲学はすごく熱く、アニメ作品をみるうえで大変勉強になりました。
視覚が「動き」を認識する基本要素である「速度、軌道、変形」というものが、様々な組み合わで、様々な心理的効果、状況を生み出すお話は面白かったです。
アニメーションの動きというものについて大変考えさせられました。
アニメの本質となる動きの三要素はアニメ作品をみるうえでいい指標となりました。
監督、演出家のフィルムに対する哲学・思想を読み解く上で非常に役立ちそうですね。
東映動画、虫プロ時代のお話、アニメから離れて、放浪の時代のエピソード、現場復帰のお話、当時当時のいろいろなエピソードは面白かったです。
私の大好きな作品「銀河鉄道の夜」「タッチ」の制作についてのエピソードは凄く面白かったです。
「銀河鉄道の夜」は、普遍的で抽象的な物語の為、演出する上で猫をキャラクターに用いて、猫というフィルターを通して抽象性を損なわれず演出したエピソードは面白かったです。
「タッチ」では、キャラクターの心理面の内面を演出するために、説明的な動きをすべてみせるのではなく、コマ割りを駆使した演出をみせることで心の内面を演出したお話は面白かったです。
カメラの長まわしみたいなゆっくりした速度で絵を動かすことで情感がこもる演出。
背景の白飛ばし(背景を全部描くのではなく、主要な要素だけ描いて、それ以外を露出オーバーように白く描く方法)
あだち充作品を映像化した杉井氏の手法の凄さに感服致しました。
この本は、杉井さんの人生観、アニメーション作りの哲学、人間の視聴覚にうったえる映像言語について、テクニカル面、哲学的面が述べられていて大変勉強になりました。
この本を読んでアニメ作品の見方が変わりました。オススメです。