YOSHIの果てしない旅(人々との出会い、そして別れ)

ソ連、西欧列車の旅、英国滞在、欧州横断ヒッチ、イスラエルのキブツ生活、シルクロード、インド、豪州大陸横断ヒッチの旅の話。

シーラとの日々、そして、別れ~日本食レストランで食事を楽しむ

2021-10-18 20:27:45 |  「YOSHIの果てしない旅」 第6章 ロンドン滞在
                     △昭和44年か45年に送られてきたシーラの写真(イギリスへ        
     折角行ってシーラの写真は一枚しか撮れなかった、と言ったら)

・昭和43年9月30日(月)曇り(日本食レストランで食事を楽しむ)
 今日、仕事は休みの日であった。午後7時、ボンド ストリート駅でシーラと待ち合わせをして、日本レストランへ行く事になっていた。『いつもご馳走になって申し訳ないし、日本食を是非、彼女に食べさせてあげたい』と言う想いもあったのでした。
 駅を出て、オクッスフォード ストリートの向こう側、狭い道を入った所に日本レストランHiroko(ひろこ)があるのを前もって調べておいた。我々が7時過ぎに行ったら、「只今満員で、8時過ぎに席が空く」と言うので、その時間帯に予約を取った。カフェ店でコーヒーを飲んだり、街を散策したりして、1時間程過してから8時過ぎに、『ひろこ』へ再び行った。
 このレストランは、日本人経営であるが、従業員はイギリス人と日本人の半々ぐらいであった。高級レストランなのか、綺麗な着物を着飾った女将が恭しく我々を席まで案内してくれた。我々の席の担当ウェイターは、美男子のイギリス人で黒のスーツに黒の蝶ネクタイ、身なりはきちんとしていた。もう1人の担当ウェイトレスは、若い日本人女性であった。
 若者や一般庶民は、値段の高い高級レストランに殆ど見当たらない様で、このレストランもそんな部類に入る高級感があった。この店は、1階にテーブルが15台程で、各テーブルとの空間を充分とってあった。客入りは、7割程であった店内をぐるりと見回して、我々の様な若い人や日本人は誰も居らず、殆ど紳士淑女のイギリス人であった。私の前の席も50歳代の紳士数人が、日本通で酒の良さが分るのか、日本酒を盃で飲んでいた。
 ウェイトレスからメニューを見せられた時、私は迷った。天ぷらコース、お刺身コース、すき焼きコース、鮨コース等に分かれていた。それらのコースで更にスペシャル コースと並コースに分かれていた。私は出来れば安く、豪華に見えて美味しく、且つシーラが喜んで食べられそうな料理、コースを選ばねばならなかった。
選択は難しかったが、これらの条件を満たすのに、『並のすき焼きコース』をオーダーした。お通し、魚料理、昆布巻き料理、すき焼き、ご飯、味噌汁、おしんこう、果物、アイス クリーム、そして日本茶が出された。腹を満たすには充分な内容であった。
レストランを出る時に支払った食事代は、二人分5ポンド5シリング(約5,200円。この金額は私の賃金の一週間分)であった。
私は久し振りに日本酒が飲みたかったし、又シーラにも飲ませて上げたかった。しかし後先の事を考えると、これが私の精一杯の『もてなし』であった。 
 シーラは、箸を使って食べるのが初めてで、使い方はぎこちなかった。しかし美男子のウェイターが彼女に付きっ切りで、箸の使い方から料理一品ごとに説明してくれた。私は彼女に上手く日本料理の説明が出来なかったのでこの点、非常に有り難かった。余裕があれば、彼にチップを出してあげたかったが、日本式に出さなかった。
彼女は美男子のウェイターが付きっ切りでの食事は初めてであるのか、恥ずかしいやら嬉しいやらで、その顔はご機嫌、ご満悦の様であった。そんな彼女の顔を見るのは彼女に会って以来、初めてであった。彼女はレストランの雰囲気や日本料理を充分に楽しんでくれたので、彼女を連れて来た甲斐があり、私も本当に嬉しかった。
食事が終り、彼女が「自分の使った箸を、記念として持ち帰りたい」と言うので、使ってない箸を加えて2膳、希望を叶えさせて上げた。後日、ジャネットに会った時に、彼女は日本レストランへ行った事を楽しそうに話していたのがとても印象的であった。
私がロンドンを去る前、ジャネットを入れて3人でもう一度、来たかったが、経済的理由と決断力がなく、その機会を失ったのは悔いが残り、本当に残念であった。
 所で、今日私は食事中トイレへ行きたくなったので、地下階段を降りて行ったのです。地下に20畳程の和室があり、大勢の日本人が酒を飲んでいる光景を見てしまった。その数40人程、彼等は皆、ネズミ色の背広を着て、酔っぱらって顔を真っ赤にして外国単身赴任の憂さを晴らしているのか、「ワィワィガャガャ」大声を出して飲んでいた。その光景は、日本の養老の滝等の大衆酒場以下で、上と下のアンバランスが何とも皮肉で一瞬、ここがロンドンなのか、信じられなかった。高級レストラン気取をしているなら、大衆酒場で飲んでいる醜態達と同じトイレ(非常に小便臭かった)にすべきではないし、こんな醜い飲み方をしている日本人をロンドンの紳士淑女達に見せたくない、と思った。


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