いつかのキャバリーマン

だらだら生きていたぐーたら大学生がキャバ○ラ経営者にのし上がる。~人生は20代をどう生きるかで決まる!~

「事件は現場で起こっている!」いつかのキャバリーマン Vol.27

2006年05月18日 | 日記
以前に、キャバクラは日本経済の縮図でその中では数々のドラマが存在するご紹介させていただいた。

今回は、このドラマの一ページである過激な事件をご紹介したい。
そう、僕の心に染み付いている事件。

キャバクラではほぼ毎日事件が起こる。何も無い日はほとんど無い。
だから、長くやってると相当な出来事が起こっても冷静に対処できるようになる。

しかし、この事件だけは冷静になれなかった・・・・


何の変化も無い一日だった。どちらかといえばお客様の入りは好調。
このまま行けば売上はかなり伸びるなーなんて考えていた。

そんな順調な一日も営業が中盤に差し掛かったところある変化が生じた。
3人組みのお客様が理由も無く怒り出した。

店に対して、いろんないわれも無いクレームをつけて来る。
こういうときは、誠意を持ってお客様の言うことを聞き、とにかく平謝りすることが解決に
つながる。平時であればそんな矛盾した対応すべきではないが、相手は大量に酒を飲んでいる。
まともな議論など通用しない相手だ。

何かおかしい・・・・いつものトラブルと違う・・・・と感じた。


こういうときは店長はすぐには出ない。
冷静に対処し、店全体を指揮するために一旦、課長もしくは主任クラスの者が対応し策を練る。
トラブルの責任を負うもしくは、収拾がつかなくなった場合に出て行く。
(これはつらい立場だ、ブログに書けないことが多すぎる・・・)

しかし、このときに限ってそういった事前に準備したトラブル対応策は役に立たなかった。
事態は急変した。対応している従業員はいきなり殴られた。
僕は、警察への通報を指示し、とっさに走って詰め寄り割って入った。

トラブルの対応には自信があった。当時僕は20歳の若僧で怖いものを知らなかった。
今までどんなものも誠意を持って対応すれば何とかなった。
こういうときはいつも心に思うことがある。

「ここで、死ぬことは無いだろう・・・」

大袈裟と思うかもしれないが、キャバクラでのトラブルはそれだけ切迫しており、命懸けだ。
実際、刺される者もいた。そして、「死ぬことは無い・・・」こう考えるとなんだか
吹っ切れて覚悟ができた。


さらに事態は悪化する。
3人組のお客様はボトルを大理石のテーブルに叩きつけ破壊し、振り回し僕に殴りかかる!
逃げられない!やばい!

この時点で店中大パニック! 泣き出すもの続出!
とにかく、僕は泣いてられない。他のお客様とコンパニオン、従業員を安全な場所へ移動させ
3人組みを店の外に出すことに成功した。

そして、店の鍵を閉めた。お客様もコンパニオンも従業員も店の中だ。
僕は、結構殴られたが、幸いボトルで刺されずに済んだ。

他のお客様に謝り、急遽すべてのお客様を30分無料にすることにした。
コンパニオンの中には、腰が抜けて立てないものもいた。
ブルブル震えている。

「もう大丈夫だから、もう大丈夫だから・・・」

普段は元気のいい女の子なのだが・・・声をかけてもどうにもならない。
人は極度の恐怖を感じるとこんなに震えるものなのか。

まだ終わったわけではない。
店の外にまだ暴れた3人組がいる可能性がある。
雑居ビルのテナントで、店の出口は1つしかない。

少し経って、恐る恐る店の鍵を開けて、外の様子を見てみた。

まだ3人組はいる!
向かいの店(競合店にあたる)の入り口でなにやらもめている様子だった。
詳しくはわからない。鍵を閉めて再度110番通報。

「早く来てよ!!」

これほど、時間を長く感じたことはない。たった10分程度なのだが永遠に感じた。
すると、外でドタドタという大きな音が聞こえた。人の叫ぶ声も混じってたと思う。
ドス、ドス、ドスっていう鈍い音が聞こえる。

外はどうなってるんだ??
この状態で店を開けるわけにはいかない。

少しすると、外の騒ぎは収まった。不気味な静けさが残った。
勇気を出して、もう一度鍵を開けて外を覗いた。

その瞬間!!
半径1メートルほど床がドロドロの血まみれになって、ひとりの男が倒れていた。
競合店の店長らしき人だ。

「救急車を呼べ!!」

頭から大量の血を流していた。
僕は蒼ざめた。ひとつ間違えば僕がこうなってたのか!?


もう、3人組はそこにはいなかった。僕は店の安全を確保するため、ビルの屋上から
外のを観察した。どうやら3人組は外に出たらしい。
外でも一般人が何人か殴られて倒れていた。

救急車と警察はやっと到着した。 長かった。
その後、少しして常連さんが来店した。このお客様も突然殴られたらしい。
鼻血を出しながら、明るく

「最近は、飲みに来るのも命懸けやのー」

常連さんには悪いが、僕の極度の緊張は解け、大笑いしてしまった。


警察にはいろいろ事情は聞かれたが、どうせうやむやになってるのだろう。
幸い、競合店の店長は死には至らなかった。が、全部で70針縫ったらしい。

この事件で僕は反省した。
「何かおかしい」と思ったときに110番通報すべきだったのか?
しかし、110番通報をむやみにすると店の営業権にかかわる。
ひとつだけ改善することにした。110番通報は全ての従業員が、危険と判断したときに指示
されなくとも110番通報するようにした。

その事件以来、僕に変化が起こった。
乱闘のトラブルで矢面に立つ必要があるとき、足がすくむのだ。
自分の意思は前に行かねば!と強く思ってるのだが、体が全く言うこと聞かない。
このとき初めて、足がすくむという体験をした。

経験は人を成長させるというが、この事件でいろんなことを学んだと思う。

つづく。
つづく。

「キャバクラの職制と封建社会」いつかのキャバリーマン Vol.26

2006年05月16日 | 日記
前回、ご紹介したようにキャバクラ経営において、男性スタッフの人材不足は致命的な問題だ。

しかし、僕の店は慢性的な人材不足に陥っていた。
さぁ、どうしたものか・・・他にも様々な問題点は山積みだったが、次に手をつけたのはキャリアパスを作ることだ。

当時のキャバクラのキャリア形成は混沌としていた、そこに役職と役割、明確な業務分担、詳細な成果に基づく給料の格差を設けることにした。

例えば役職については

1.ボーイ A B C の3段階  ホール、ビラ、業務全般
2.主任  A B C の3段階  ボーイの仕事+ ボーイの指導
3.課長  A B C の3段階  主任の仕事+コンパニオンのマネジメント
4.副店長 段階なし        課長の仕事+課長の指導+店長補佐

そしてそれぞれ役職による給料と成果によるバック(成果報酬)を儲けた。
また服装も役職に応じて変えた。
ボーイは白のカッターシャツに蝶ネクタイ。
主任は黒ベスト
課長以上はスーツ
副店長以上はカラーのシャツも可とする。

これは、マクドナルドや軍隊を参考にした。

単純で当然なことだが、非常に効果があった。
数ヵ月後には見違えるほどのモチベーションを維持するに至った。
いままで、忙しいのでその場しのぎで仕事を覚えていたのだ。それをいつまでに何を覚えるかまた、何ができるとどれぐらい給料に反映される
かが明確にわかったため。それぞれが切磋琢磨しながら仕事をこなすようになった。

また、働くものにとって自らの目標やキャリア形成を意識することは働くモチベーションに大きく影響するのだろう。
キャバクラでは、高等教育を受けたものばかりが働いているわけではないので役職によって服装に違いを儲けたり、禁止事項を作ったりして、
キャリアステップをわかり易くなるよう工夫した。

道筋の無い暗闇に明るい道を作ったような気がした。
みんなその道を辿り始めた。人は、身近な目標に没頭することでパワーをより多く発揮するものなんだなと思った。


また、やってみてわかったのだが男性は封建社会で長い歴史を過ごしたせいかこういう階級制度にはなじみがあるのだろう。また、男性は生物と
して女性よりはるかに単純にできているのだと思った。

もちろんコンパニオンの管理はこんな階級制度だけでは到底管理できない。
余談だが、男性の階級制度がハードウェアだとすると、女性の管理はソフトウェアに依存する部分が大きいような気がする。

つづく。

「自らの気付きは人を最大限に成長させる」いつかのキャバリーマン Vol.25

2006年05月15日 | 日記
店長になって数ヶ月。常に慢性的な男子従業員の人材不足に陥っていた。

人材の育成。

これが店長として常に付きまとう問題だ。
キャバクラに面接に来る人材は一般企業の面接に比べると想像を絶する世界だ。
まず、面接に履歴書を持ってこない。そして、漢字がかけない人も多々いる。

それどころか、風紀も乱れている。
頭のてっぺんまで剃り込みが入ってるヤツや、素肌に派手な紫のスーツを着てくるチンピラ紛いのヤツもいる。
また、借金が2億円あります!というツワモノもいた。また、1週間以上風呂にも入っていない家出少年などなど。


こんな人たちも採用する。(僕はこんな人たちと同じ面接に一度落ちたのだが・・・・)そして、こんな人たちの育成はすごく難しい。

まず、僕が取り組んだことは、従業員の仕事を覚えるスピードを上げることだ。
仕事を覚えるスピードを上げるには、簡単に言うと「1を聞いて10を知る」をできるようにすることだ。それには、仕事そのものの本質を理解してもらう必要がある。

僕はまず、入店間もない男子従業員に徹底したことは。
すべての仕事において意味があり、その仕事をなぜするのか?を自ら考えさせることだ。そして、それを一方的に教えるのではなく、自ら気づかせるようにした。

入店して1、2週間する従業人にある課題を与えた。

いきなり
「○○君、8オンスのグラスが何個あるか数えてください」
とお願いした。当然仕事としてだ。

大抵の人は 「■■個です」と個数だけ僕に報告した。

ここで、その仕事の意味を考えているかどうかがわかる。

店長である僕がグラスの数を知って「ふーん」で終わるわけが無い。
当然、店を運営する最低限必要なグラスの個数があり、その過不足を把握し、足りない場合はグラスをオーダーするために個数を数える。

個数だけ報告した従業員に
「○○君、僕がなぜグラスを数えてって言ったかわかる?」
「何のためにそれをやったの?」
と問いかける。

この課題と問いかけによって、自分が仕事の意味を考えていなかったことに気づく。

そして、この
「なぜその仕事をするの?」
「なぜそういう仕事のしかたをしたの?」
「なぜ?なぜ?なぜ?」

という問いかけを徹底的に繰り返す。
何かあると問いただされると思えば、事前に自ら考えざるを得なくなるのだ。
自ら考えることによって自らの気づきや発見を得る。そしてそれは、実力へとつながる。

これによって従業員の自主性と思考力が飛躍的に上がり仕事を覚えるスピードが圧倒的に速く
なった。そして、仕事に創意工夫が生まれた。



つづく。

「キャバクラ経営の盲点」いつかのキャバリーマン Vol.24

2006年05月11日 | 日記
キャバクラ経営にとって一番大事なのは??

と、聞かれたらコンパニオン(キャバ嬢)だと思う人も多いと思うが、
実は屋台骨を支えているのは男性スタッフだ。

男性スタッフの優秀な店は必ず儲かる。もっと厳密に言うと利益率を高めることができる。

これはどういうことかというと、男性スタッフの優秀な店は、人気のあるコンパニオンに長く働いてもらうことができるとうことだ。いくら人気のあるコンパニオンが多くても一時的なものであれば売上げアップには大きく繋がらない。

キャバクラ業界は人材(コンパニオン)の流動化が激しく、平均勤続期間はおそらく1ヶ月程度だろう。そんな中、人気のコンパニオンに1日でも長く働いてもらうことが店の経営上重要な課題となってくる。また、人気のコンパニオンは単にビジュアルの良し悪しで決まるわけではない。
重要なのはコンパニオンのモチベーションだ。

この、コンパニオンのモチベーションや働きやすい環境を整える黒子役が男性スタッフなのだ。

その店の売上げは男子スタッフのサービスの質を見ればすぐに分かる。

逆に言うと売上げが芳しくない店が、人気コンパニオン獲得のために、多大な広告費を使ったり時給をアップさせたりしてしまうと失敗するケースが多い。

男性スタッフの仕事の質を高めると、おのずと求人や人件費にかかるコストが抑えられ利益率が上がるというわけだ。


こういった視点は企業経営においても重要だろう。
つまり、課題の解決は根本から行うことが非常に重要で、小手先で改善は功を奏しない。経験則から言うと、根本に踏み込まない改善はやらないほうがマシだ。

よく、昔の戦略家が、「戦略上の問題は戦術ではカバーできない」ってなことを言ってるがまさにそのとおりだ。


キャバクラの店長業務も数ヶ月が経った。

大きな問題点があった。そうまさに店舗運営の根本である男性スタッフの慢性的な人材不足だ。
僕がいきなり店長になるぐらいだから当然といえば当然なのだが・・・

さぁ、どうする!?



つづく。

「店長の仕事はウルトラ調整役」いつかのキャバリーマン Vol.22

2006年05月09日 | 日記
そんなこんなで、いろいろあったが長い下積みを経て店長になってしまった。
急になったもんだから、当然何をやっていいか分からない。

今まで、何の準備も無く指名係として数字を出すために奔走していたのだから当然といえば当然だ。
指名係が店の運営上の司令塔だといったが、所詮一パートの仕事であって、店長の仕事はいわば総監督
のようなもので重圧はその比ではない。暗中模索の中、日々売上と費用に追い捲られる。

突然僕が店長になってしまったことに対して、先輩も含めて従業員からの反発も予測したが、今まで
の地道なコミュニケーションを重ねていた為それほど反発は無かった。
まぁ、本当の所は、僕にあまり目立った取り得も無く地味にコツコツやるだけの人間だったので
あまり反発する気にもならなかったのだろう。

従業員と店長の仕事の大きな違いは、自分の権限でお金を動かすということ。
つまり、人件費、販促、求人、仕入れ等等にかかるコストの一切を管理する。
そう、人様の給料も自分の権限で決めることができる。
それも、独断なので、どちらかというと民主制というより専制君主制的な決め方だ。

下積み時代は、毎日怒鳴られて厳しい環境だったが、それでもスンマセンでことが済むことが
多かった。しかし、人の給料を決めるとなるとスンマセンでは済まない。
従業員の生活が掛かっているのだ。

当初2ヶ月ぐらいはうまくいった。数字も順調だった。
ところが、これまたうまくピンチが舞い込んでくる。それも、思いもよらぬとこから。
世の中に神様が存在するなら、ホントうまい具合に障壁を設定してくださっている。

そのピンチとは、それこそ給料の問題だった。これも大失敗だった。
キャバクラの世界は「田沼意次」の要素が強い。それを僕は「松平定信」風に公然とした
対応をしてしまったのだ。それは史実が物語っているとおり猛烈な反発にあう。

賄賂が横行しているわけではないが、給与に関して店長とコンパニオンの間で、微妙な力関係や
駆け引きなようなものが存在する。それを僕は無視したわけだ。

なぜそういったことが起こるのかというと、給与体系が過度に結果を重視した、超成果主義だった
為で、結果に対しては手厚い評価があるが、プロセスに対しては評価はゼロなのだ。
つまり、サッカーで言うアシストや野球で言う送りバントは評価対象外。

その制度の盲点を埋めるために、店長は国会の内閣官房報償費のような潤滑油となる金を割り振る
権限を持っているのだ。

それを、僕は急に意味もわからず権限を持ったものだから、漫画じゃないけど正義のヒーローっぽく
専制君主は公平で平等な社会を・・・・なんて思ってたわけだから勘違いも甚だしい。

結局、反発の鎮圧に際し、何人かのコンパニオンの時給を当面500円アップすることになった。
当時、コンビニのバイトが700円とかだったので、ひどい出費だ。そして高い授業料だった。が、その分勉強になった。

そして、給与の調整に関してそれ以来ずっと悩みの種となっていくことになる。
今回は給与アップの事例だが、逆に、生活がかかっているコンパニオンの給与を下げる処置も必要となる
こともあるのだ。店長は当然そのコンパニオンの境遇を知っている。これほど酷な判断を迫られることは無い。そんな日は一日中悩んだものだ。


いわば、キャバクラの店長の仕事は、ウルトラ調整役だ。

つづく。

「 苦難の新店長誕生」いつかのキャバリーマン Vol.22

2006年05月01日 | 日記
今、僕は指名係という店の司令塔として働いている。
この業界では、長い長い下積みを経て。

そして、課せられた数字もクリアし、さらに順調に伸びている。
しかし、まだまだ納得のいくサービスを作り出せているわけではない。
戦場のような1日を終え、帰路に着くとその日の出来事をフラッシュバックしながら毎日反省を繰り返す。

満足いく結果とは何なのだろうか?目標を達成してもさらに上の目標が見えてくる。この永遠とも思える回廊をひたすら走っている気がする。

まぁ、少し前までは。ダメ男のレッテルを貼られてたのだから、そのときと比べればずいぶんマシな仕事をしていると思う。良く耐えて頑張ったと思う。

ダメ男がここまでこれたのはいくつかの要因があると思う。

1.つまらない仕事も工夫して楽しむように心がけ熱心に取り組んだ。

これは僕にとってはほとんど無意識だが、今思えばそう簡単にできるものではない。何事も人は楽しむ事を見出さなければ力を発揮できないのだ。また、つまらないことも直向に続ける事が重要で、どんなつまらないことでも得るもはある。そして、つまらない仕事を続けられる人は、土壇場での力を発揮
  
2.仕事の基本ともいえる、優先順位付けと業務の先を読むことを覚えた。
  
どんな仕事にも通ずることだと思う。お客様は優先できても、チームプレイを優先できない人は周りからの信頼を得ることはできない。いかにチームに貢献できるかがチームにおけるその人の価値なのだから。

3.自分の置かれた立場は低くとも、店全体を社会の投影と考え鳥瞰する視点を 持った。

人が何処にモチベーションを持つかはその人の視野で決まるのだと思う。僕は世間知らずだったため、キャバクラを日本の縮図と思えた。それによって、店で起こる様々な問題も社会現象と照らしあわせて鳥瞰した視点で見れるようになり、人間や組織を理解することができた。こういった視点を持たずに、単なる給料を稼ぐ場としてみていると、それぞれの問題が自分の業務と関係ない場合は見てみぬ振りをしていただろう。逆に言うと、人のモチベーションを高く維持するためには、できるだけ広い視野を共有することが肝要だ。

4.常に仕事を生きるための勉強と思って何事からも学び取ろうとした。

僕は学校の勉強は大嫌いだった。中学校ぐらいから意識し始めたのだが、嫌いな科目は授業に行かないことも多々あった。なぜなら、その意義を説明できる先生がいなかった為だ。何のために一生使うこともない暗号のような人名を覚える必要があるのか?そんなことより、歴史的な背景から人や組織がどう判断したか、世論がどう動いたか?人がどんな苦労をしたかなどを理解し、そこから自ら未来を予知、推測する思考力をつけることのほうがはるかに重要だ。業務においても同様で、勉強は将来役立つ思考を生むものに他ならない。その勉強はダイレクトに業務成果につながる。ひいては生きるために勉強するのだ。少なくともキャバクラでは、いくら
高い役職についたところでその勉強を怠った者には将来は無い。


5.お客さま、従業員と区別なく誠意をもって耳を傾け、相手の心理状態を正確に把握することに努めた。

人の話に誠心誠意を持って耳を傾けることは、組織を動かす上で最も重要なことだ。たとえその話が100%嘘だったとしても。そして、その話を聞くだけではなく、その人がいったい何を考え、その発言をしているのか?また、何を意図しているのか?を正確に把握する必要がある。そのためには、ある程度人の心理パターンを把握し人の心がわかるようになる必要がある。人の心が理解できてはじめて人を動かすことができるのだ。

6.そして、最後に人から馬鹿にされ続けても、我慢し自分のやるべきことに集中した。
 
人の目は把握する必要はあるが、気にする必要はない。本来やるべきことをやり遂げることが先決なのだ。ただし、周りの人間を動かすには自分のブランドが必要。できる人、できない人の周りからの評価は初期段階でつく。それを覆すことは至難の技なのだ。つまり、スタートダッシュが成功の道ではないか。僕は大失敗したが・・・・

と、まぁこんなところだろうか?
後からまとめてみると、カッコいい言葉でまとまるが、そのときは目の前の苦難のハードルを越えるために必死になっているので、無意識の場合が多い。
いろいろ苦労が多かったが、僕なりに良く頑張ったと今でも思う。

ある日、僕は、いつもの出勤時間より1時間ほど早く店長から呼び出された。
店に行くと、掃除のまだできていないボックス席に一人店長がいた。
見慣れない書類がたくさんテーブルにあった。
店長は神妙に話始めた。

「俺は、今月一杯で、店を辞めることになった。君に引き継ぎたいのが・・・・」

「ええーっ!!」

青天の霹靂とはこのことだ。面々の先輩や同待遇の同僚を差し置いてなぜ僕なのか???店長は続けて話した。

「お前、初めて見たとき、この子大丈夫なの??って思ったよ・・・」
「使いものにならなかったので、どうやって辞めさそうか本気で考えたぐらいだ・・・」
「いろいろ怒鳴り散らして、スマンかったのぉ・・・」
「でも、この店始まって以来一番成長したのがお前だ・・・」
「もう大丈夫だろう」

こんなこと言われて、断れるわけがない。
このとき僕はひどく驚いたが、その後の心境は覚えていない。
ただ、店長が卒業していく生徒を見守るようなあたたかい目で見ていた事は良く覚えている。

そして、そのとき。
平成×年8月31日 18:30 新店長は誕生したのでした。

さらなる苦難は待ち構えている。

つづく。

「欲求を数字化する」いつかのキャバリーマン Vol.21

2006年04月27日 | 日記
指名係をやり始めて、数ヶ月がたった。
指名係の仕事は司令塔であると同時に、様々な数字が露骨に成績表となって現れる。

例えば、
・売上
・総指名本数
・延長率
・労働生産性 などなど。
 店の運営の根幹となる数字ばかりだ。

指名係が一番重要視しなければならない数字がある。

それは「延長率」だ。
これは例えば10組のお客様が入店し、時間延長を行った組数が5組の場合延長率は50%となる。

50%以下だと 黄色信号の要注意。
50%~60%で 安全圏。
61%以上で  優良店舗だ。 

この数字が指名係にとってなぜ重要視する必要があるかというと、その日の顧客満足度をダイレクト
に反映する数字だからだ。

キャバクラは時間制だ。
例えば、1時間(延長なし)の場合は10,000円
    2時間(1時間延長)の場合は20,000円

延長すると、料金は2倍程度になる。それでももう少しこの場に居たい、という欲求を生み出せている
かどうかが分かる。この欲求こそが店の売上げを支える根幹となるのだ。
キャバクラに飲みに来る人で1万円しか持っていない人などいない。
延長しないってことは単純に面白くないのだ。

そして毎日、毎日の顧客満足度にこだわることは将来のリピート数に大きく影響する。

仕事をする上で、数字にできないようなお客様の心理や欲求を数字化しそこに徹底的にこだわること
は非常に重要なのだ。

日頃の業務で目先の売上げや会員数などのマクロ的な数字だけに目が行っていないだろうか?

マクロ的な数字には様々な要因が絡み、それだけに注視すると、本当の売上げを支える根幹を見落とし
がちになる。結局お金を生み出す要因はシンプルで、お客様の欲求そのものだと思う。
そこをしっかり把握し、コントロールできている会社は強い。また、逆にお客様の欲求を無視し
マクロ的な数字を作ることに目線が行っている会社は危うい。



数字が評価の対象となるようになって、からの僕は今までの「仕事ができない奴」とちょっと違った。
最初に大きな失敗をしたが、地道な努力で周りの人間からの信頼を回復してからは、最強だった。
様々な数字的な記録を更新し、僕は勝って、勝って勝ちまくった。

別に、人に勝つことなどあまり意識していなかったが・・・
そして、気がついたら負けた人は全員僕の部下となっていた。

つづく。

「地道なコミュニケーションで信頼を取り戻せ!」いつかのキャバリーマン Vol.20

2006年04月26日 | 日記
僕は、指名係の仕事を始めてすぐコンパニオンからの総スカンを喰らった。
指名係をはじめて数日だったが、誰も僕の指示を聞かなくなっていた。

ショックは大きかったが、実直に周りの人の声に耳を傾けるとどうやら僕に
原因はあった。

つまり、僕は将棋の駒を動かすようにコンパニオンを使っていたのだ。
細かい心理の変化を気にせずお客様の席の残り時間だけを気にしてあっち
行け、こっち行けと指示を出していたのだ。
そして、こんなことをすると店の中は噂が噂を生む仕組みがあって、簡単に反乱が
起こるのだ。

まいった。が、気づいた時には時既に遅し。大きな失敗をしてしまった。ピンチ!

結局しばらく、指名係を交代してもらうことにした。

いくら、役割や制度があったとしても、結局働いているのは人なのだ。
細かい気遣いや相手を理解すること、人との信頼関係の重要性を思い知らされた。


そして、僕はゼロからコンパニオンとの信頼関係を作ろうと必死に努力した。
毎日、毎日面談を行った。面談といっても、最初はクレームや悩みを聞くだけ
に徹し、相手を理解すること専念した。
相手の話に矛盾や明らかな嘘があったとしても真剣に耳を傾けた。

毎日、毎日5人~10人ほど面談を行った。
崩れた信頼を取り戻すことは並々ならぬ努力が要る。

聞く耳を持つこと。
真剣に相手と向き合いコミュニケーションをとること。
チームプレイにおいてこれほど重要なことはない。

そして、その努力が功を奏して、僕は再度指名係に返り咲くことになった。
初めて、指名係をパズルのようにやっていたときとまったく違った。
あんなに、席に付くのを躊躇していたコンパニオンが
自ら「次はどこ?」って申し出るようになった。


この人は、家族構成は何人で、犬を飼っていて、将来留学したいと思っている。
誰々と仲が良くって、誰々と仲が悪い。最近の趣味は・・・などの細かいことを理解しその上に今の心理状態に細心の注意を払う。
もちろん相手にも自分のことを良く知ってもらう必要がある。
そしてお互いの存在を認めあって初めて信頼関係が生まれる。

信頼関係を築き、継続することは不断の努力がいる。
その努力なしに司令塔の職はありえない。

僕は、その後も休まず面談を続けた。


こんな状況は、一般の企業でも大なり小なり起こることではないだろうか。
部署が変わって、その場の状況をしっかり把握せず、一方的な指示を出すと
反感を買う。反感が積もり積もって不信感を生み業務に支障を来たす。

毎日短い会話でもいいのでコミュニケーションをとる努力をすると大きく
業績は改善されるのでは?と思う。

つづく

「指名係ピンチ!」いつかのキャバリーマン Vol.19

2006年04月25日 | 日記
お店の司令塔である、指名係を初めてやったときは、なんだか店を動かしている
見たいですごく気持ちがよかった。

「これなら、できる!」と思った。

テーブル番号別の残り時間を計算し、コンパニオンを移動させる。
何気なくやってると、指示通りに人が動いてくれるので気持ちがいい。
やっと、与えられた仕事が最初からまともにできるようになった、と思った。

が、数日後になって、思い違い甚だしいことに気づかされるのだった。

「○○さん2番テーブルに行ってください」
つものように、コンパニオンに指示を出す。

その直後のコンパニオンの返事がその後の苦労を物語っていた。

「いや。」

「!?・・・・・・・・・」

事態があまり理解できなかった。
仕方なく、別のコンパニオンに急遽交代の指示を出した。

しばらくすると・・僕の指示でほとんど誰も動かなくなった。

それどころか、」コンパニオンからのクレーム&ボイコットの」」
集中砲火を受けることになった。

「しんどい」
「まだ私はタイムカード押してない」
「私ばっかりこき使ってひどい!」
「あのお客さんのところに行きたくない」
「トイレ」
「あの女の子と一緒にお客さんに付きたくない」
「もういや!」

なんてこった!!僕は司令塔のはずじゃなかったのか??
僕はとにかく、「お願いします」「お願いします」「もう少しがんばって」
とお願いし続けるしか手がなかった。

またまた、半泣き状態。

指名係が僕になってからこのザマだ。僕は人間としてこんなに信頼されてい
ないのか?人間不信になるほどショックだった。

なんでこうなるの??ピンチ!

つづく



「キャバクラ店員の花形業務」いつかのキャバリーマン18

2006年04月24日 | 日記
面接、入店フォロー、入店説明は店の運営上非常に重要な仕事だ。
広告費を大量にかけて、獲得できる人員は非常に限られたものなので、入店に関する業務上のミスは直接店の収益力の低下につながる。

今まで、ダメ人間扱いされてきた僕だが、こういった、仕事をやり始めてから、
僕を仕事ができない奴呼ばわりする人がいなくなったと思う。


そうこうしているうちに、チャンス?が廻ってきた。
キャバクラの仕事でもっとも花形である。「指名係」の仕事をすることになった。

指名係はキャバクラ実務の司令塔の役割でコンパニオンや他の従業員を手足のように動かし、サービスを組み立てていく。
この指名係のさじ加減で店の売り上げは大きく左右される重要なポストだ。
下手な指名係が1ヶ月店を回すと店は潰れるといわれているぐらいだ。
そして、唯一コンパニオンとの会話が許される仕事なのだ。

風貌は黒服にインカム。(トランシーバーみたいなもの)
ほとんど動かずじっと立って激しく頭を使う。瞬間で多くの判断を行う非常に
集中力のいる仕事だ。

指名係のメインの仕事は、コンパニオンをお客様につける組み合わせや
タイミングを考え動かすことだ。

具体的には・・・
まず、前提としてキャバクラは時間制だ。1時間(延長の場合は30分もある)
毎に料金は加算されていく。

通常1時間で3人のコンパニオンが交代で接客にあたる。つまり、20分ずつ
お客様に付く。
お客様にとっては1時間の遊びだが、指名係にとっては最後の15分~10分の間の
5分間が勝負なのだ。
この、5分間のお客様の満足度を最高潮にすることが、延長、さらにリピート
につながる。この5分間を最高の5分にするために指名係は様々な演出を仕掛ける。

たとえば、コンパニオンを交代させる順番だ。
コンパニオンには成績によりランク付けがされている。SA、A、B、Cの4段階。3人のコンパニオンを順番に一人のお客様に付けるのだが、
この順番にもコツがある。

セオリーは C(15分)→B(25分)→A(20分)
もしくは、 B(20分)→C(20分)→A(20分)

ただし、このランクは相対的にコンパニオンを評価したものであり、そのお客様に
とってそれが絶対とは限らない。
お客様の好みや心理を読みお客様毎に多少のアレンジを加える。
例えば年配のお客様には癒し系のコンパニオンを付けるなど。

席数が10席の場合、10席すべて残り時間をタイマーで確認し、
コンパニオンとお客様の膨大な組み合わせの中から、最適な配置を
分刻みに計算し、コンパニオンを移動させる。

そして、単なる組み合わせや時間の計算だけでなく、リアルタイムに変化する
お客様の表情を精緻に観察し、心理を読み取り、コンパニオンの付け方を工夫したり細かい指示を与えたりする。

まぁ、文章で書くと結構簡単そうに思えるかもしれないが、これが本当に難しい。
通算2年ほどはこの仕事をやっていただろうか。
指名係の仕事は奥が深くいまだに、究極とはいえないだろうな。

また、指名係の仕事を始めたてのときは別の意味でも大変苦労する。
次回にご紹介したい。

つづく。

「女性の強さ凄さ」いつかのキャバリーマン Vol.17

2006年04月21日 | 日記
面接が終わったら次は入店のための手続き。
確実に店で働いてもらうために様々な工夫がある。

まず、その日もしくは翌日に体験入店をしてもらう。
2時間~3時間ほど働いてもらって、店の雰囲気や仕事に慣れてもらうのだ。
体験入店の場合時給は低く設定するが、給料は全額日払いする。

これは、表向きは体験入店と表してるが、実際は他店に面接に行かれないように
全額日払いという武器をつかっての囲い込み作戦なのだ。
その日に現金がもらえるという条件は強く人の心を惹く。

体験入店後、本入店してくれる確率は90%以上。
しかし、長く続く人は少ない。ここで言う「長く」は3ヶ月以上。


短いと思われる方もいるかと思うが、キャバクラの接客ほど知略とストレス耐性の
いる仕事は無い。先日紹介したが、接客相手は酒をたらふく喰らった殿様だ。
容赦なしに無理難題を押し付け、口説いてくる。これを、ウィットに富んだ
トークでかわしながら、お客様を楽しませる。さらに、お客様に気に入ってもらって次回の来店を促す。

お客様の暴言に耐えられずに泣き出すコンパニオンも少なくない。
ストレスで精神的にまいってしまう人もいる。
まさに、体を張った仕事だ。

こんな中、3ヶ月以上続く人は大体面接を受けた人数の10%以下だ。
厳しい環境で、明るくこの仕事をやり抜いているコンパニオンには本当に脱帽する。当時の僕の理解を通り越して、凄みすら感じた。
女性の強さなのだろう。おそらく男性ならもっと脱落者が多いだろう。

また、よくどんな人が働いているの?って聞かれるが、僕の回答は
「至って普通の人で、人間として魅力ある人が多い」と答える。

フリーターや学生もいるが、美容師の見習いや、専門学校生など志を持った人が
生活をかけて働きにくるケースが多い。
また、バツイチで子供の養育費と親の面倒を見ないといけないという一家の大黒柱
として働いている人もいる。

こういう、何か大切なものを背負った人は、魅力的で仕事もできる。


この頃から、僕は、コンパニオンを管理する仕事を徐々に任されるようになった。



つづく。

「キャバ嬢!初面接」いつかのキャバリーマン Vol.16

2006年04月20日 | 日記
キャバクラの仕事を始めて、10ヵ月ぐらいが経っただろうか。
ホール係の仕事も板についてきた。

その日は、いつもと変わらず開店作業。後輩なども増えてきて、僕は掃除機係を
卒業し、買出しや酒などの納品物の管理などの仕事。

一本の電話がかかってきた。相手は当時の店長。
「すまない。今日は別件で店に行けそうにない。今日面接入っている女の子を面接
 してくれないか?」

「ええっ!!」「僕なんかが面接やってもいいんですか?」

いろいろやり取りはあったが、結局僕が面接することになった。
最後に、店長から絶対に入店させることと念を押された。

ここで、相手がどんな人かもわからないのに入店させるんだったら面接なんて
やる必要は無いんじゃないか?って疑問に思う人もいるだろう。

キャバクラの面接は、面接を受ける側と面接官の立場は逆なのだ。
つまり、自己PRするのは面接官側。いかに働きやすい店か、店のスタッフは信頼できるか?
をPRして、よっぽどの場合でない限り面接を受けた全ての人に入店してもらう。

これは、男子(ボーイ)の場合もそう変わらない。
ところが、恥ずかしながら僕はその面接に一度落ちている。


そして、採用してから、ふるいにかけるのだ。
ご存知の方も多いと思うが、キャバクラの世界は完全なる実力成果主義。
成績に応じて、極端な待遇の「差」がつく。
主に、時給、勤務時間などの待遇が全く違う、そしてさらに成績優秀者は周りから
チヤホヤされ例えようもない優越感を感じることになる。

成績が芳しくない人はその全くの逆を味わうことになり自然淘汰されてしまう。
こういった仕組みなので、仮にすべて採用しても、コスト的にそれほど負担に
ならないのだ。

そうこうしているうちに、面接の時間になった。

コンパニオン(女子)の場合、駅などに到着すると店に電話をもらい、迎えにあがる。
道に迷っただけでも、面接に来てくれなくなることもあるからだ。また、競合店の
スカウトに引っかからないようにするための防衛策でもある。

そして、いざ面接。このときの緊張は今でも忘れない。
自分が面接を受けるより何十倍も緊張した。店を気に入ってもらって、入店してもらわないと
いけないというプレッシャーもあったが、それ以上にボーイは規則により、コンパニオンとの
私語は厳禁のため、僕は女の子とほとんど会話をしたことが無かったのだ。
ましてや、僕はキャバの仕事をほとんど一人ぼっちのビラ配りですごしていたからなおさら
接触する機会が無かった。

そのせいか、僕にとってコンパニオンは理解し難い存在でもあり、年齢はさほど変わらないが、
自分よりはるかに大人で世間を知っている人に見えた。
そう、僕は女の子と話がまともにできないモテナイ君状態。
そのモテナイ君が面接するんだからそれは緊張する。

しかし、そうも言ってられないので必死に話をする。
「・・・ええっと・・・当店はアットホームな雰囲気で・・・店の女の子同士も仲がよくって・・・」
 (僕は、全然アットホームな雰囲気ではない)

緊張で顔から汗が滴る。

さらに悪いことに、店の中で面接をしているため、古株コンパニオン(この言い方は店では禁句)が
僕をのぞき見て、ニヤニヤ笑ってる。仕事できない君で有名な僕が、しどろもどろで面接をしている
のがよほど面白かったのだろう。

余裕がなくなり頭が真っ白になってたような気がする。何を喋ったかほとんど覚えていない。
が、初めて僕が面接した子が入店してくれたのは覚えている。

それ以来、そうだな・・・1000人以上は面接しただろうか。まさに面接の達人だ。
少し話をしただけで、その人が店にどれぐらいの利益をもたらすかはすぐに計算できる。
もちろん、その場で時給もわかる。
そのほか、その人がどれぐらいの期間働けるか、店のどの人を信頼するかなどなど。
また、麻薬などの薬物をやっている人も、細微な息遣いや挙動、顔色ですぐに分かる。

普通に生きるにはあまり知らなくてもよい「人の心理」が分かるようになる。
嫌になることもあるが、上手に生きていくために必要なことだと思う。


面接が終わったら次は入店のための手続きがある。


つづく。

「第二の母」いつかのキャバリーマン Vol.15

2006年04月18日 | 日記
あれこれする間にキャバクラの仕事を始めて、半年が経った。

うれしいこともあったが、つらいことのほうが圧倒的に多かった。
一生懸命頑張っているのに、仕事が出来ない役立たずと周りから後ろ
指を差されながら働くことほどつらいものはない。

しかし、そんな中仕事が続けられたのにも周りの人の支えがあったからだ。
そう、最初に僕を面接してくれた50歳ぐらいの気品溢れる女性だ。
クラブならママと呼ぶのだろうか。
名前はいまだに知らないがいつも、マネージャーと呼んでいた。

僕が、大学生の一人暮らしだって知っていたので、夜食を作って
来てくれたり、風邪を引いたときには薬をくれたり、僕を馬鹿にする
人を諌めてくれたりもした。

いつも見方してくれた。本当にやさしい人だった。
第二の母といえば言いすぎかもしれないが、そんな感じだった。


店を辞めてから半年ほど経って、就職が決まって報告に行ったとき
本当に喜んでくれた。そんなときに限っていつも言われることがある。

「あんたを最初に見たとき、本当に大丈夫か?と心配になったよ」
って。ホント親みたいな言い草だ。

あれから10年以上が経つ。
マネージャー元気にしてるかな?
もう会うこともないのかな?


つづく

「殿様と接客」いつかのキャバリーマン Vol.14

2006年04月17日 | 日記
遅れながら、ビラ配り4ヶ月、カウンター業務2ヶ月を終え、ホール係になった。
普通なら1週間もすればホールに立つ。

気にならないといえば嘘になるが、目の前の仕事と身につけられる能力を考えると
下積みが長かったことは問題では無かった。むしろ、より本質を見抜くことの重要性
を理解できたのでよかったと思う。

ホールの仕事は、カウンターの仕事と決定的に違う点がある。
「接客」をするという点だ。

新規のお客様が来店されたときの料金説明や、お客様に呼ばれ要望をお聞きするときの
対応。そして、クレーム対応。などなど。
接客といってもメインは当然コンパニオンなのでどちらかというと、黒子役といったところだ。

この、黒子役が大変なのだ。
お客様は、コンパニオンとの会話を求めている、我々黒子とは本質的に話をしたくないのだ。
また、酒が入っていて面倒な話は聞きたくない。
さらに、キャバクラはお客様からすると夢の楽園で殿様扱いされる場所であって、
黒子など下々の者という意識が強い。

こんな中で、トラブルを未然に防ぐために店の決まりや料金をきっちり説明するのは至難の技
なのだ。実際この料金説明がしっかり出来ていないことによるトラブルは結構ある。

特に、当時キャバクラが新規に進出した地域においては、1時間あたりの料金は理解されない
ことが多かった。

大雑把に料金はこうだ。

基本料金 1人1時間
 PM8:00までに来店  4500円
 PM9:00までに来店  5000円
 PM10:00までに来店  5500円
 PM10:00以降の来店  6000円

延長料金 1人あたり
 30分 3000円
 60分 5000円

ドリンク1杯 1000円~
指名料金  2000円/コンパニオン

さらに、15%のサービス料金、消費税5%、

例えば、一人で8時までに来店して1時間、ドリンク1杯、1人指名した場合。

基本料金 4500円
ドリンク 1000円
指名料金 2000円
サービス料金 15%
消費税    5% 
-----------------
合計   9050円(10円未満切捨て)

となる。料金表などにも詳細は明記してあるが、どうしても4500円だけをみて勘違いする人が多い。
まぁ、それを狙っていない訳でもないが・・・・

こんな複雑な料金体系を酔っ払いでせっかちな大殿様に正確に説明する必要があるのだから
それは大変なことだ。慣れていないとまず、聞いてもくれない。聞いてくれないどころか、
誤って気を損ねられると殴られることも多々ある。

命がけとは言わないが、まさに体を張った仕事だ。
こんな、怪獣みたいなお客様に説明を聞いてもらうにはコツがある。

まず、感謝の気持ちと誠意を体全体で表現すること。これで相手に安心感を与える。
そして、表情良くハキハキと端的に説明する。これでせっかちにも対応可能だ。
そして、大義名分を伝える。簡単に言うと「お客様のためを思ってあえて説明する」
と伝えるのだ。人は大義名分に弱い。

さらに、クレームなどの場合は、相手が何を求めているのかを正確に察知する必要が
ある。人は本当に求めている答えを口にしないことが多く、高度な洞察力を要する。

また、接客においてクレームの処理などで、重要な技がある。

それは、人間誰しも持ちうる自尊心をくすぐることだ。
人間は自尊心を捨てることを最も嫌う。ましてや、相手は大殿様だ。
この技さえ理解して対応すると大抵のクレームにも耐えられる。 

例えば、「他のお客様にご迷惑がかかりますので・・・・」というトークはかなり効く。
なぜかというと、自分はえらい殿様なのだから、他の市民に迷惑をかけるなどの狼藉を
働くわけがないと自分で確信しているのだ。
ただし、このトークは当然お客様に安心を与え、信頼関係を作り、誠意を見せてから
言うセリフなのだ。誤っていきなり「他のお客様に迷惑がかかるのでやめてくれ」なんて
いったら、それこそ殴られる。

こういった、人とのコミュニケーションの技はその後非常に役に立った。
例えば、就職活動時の面接。ある時期から1回も面接に落ちることは無かった。
また、会社に入ってからの営業。営業ではほとんど人に負けたことがない。

まぁ、そんなことに役立つなんてこの頃知る由も無く、ひたすら誠意をもって
対応することを心がけた。


つづく。

「キャバクラは日本の縮図」いつかのキャバリーマン Vol.13

2006年04月14日 | 日記
キャバクラのカウンター業務も2ヶ月ぐらいたって、
さらに、新しい仕事が与えられた。

それは、ホール係の仕事。
今まで、カウンターにいる僕に容赦なしにいろいろオーダーを
出していたあのホール係。今までは、オーダーを受ける側だったのが
今度はオーダーを出す側に立つ。

ビラ配りの仕事からカウンター業務に変わった時ほどのワクワク感は無かった。

ホール係の仕事をするまでの僕のホール業務のイメージは
カウンター業務でやってた雑用に近い仕事の延長だと思っていた。

しかし、実際にホールに立つと今までとは別世界であることが分かった。

いつもの開店作業が終わって、PM7:00からお店がOPENする
お客様が少ない時間帯は、お店周辺でビラ配り。
そして、PM8:00ぐらいになると店に戻ってきてホールに立つ。

そうすると、今までと全く違う世界が広がっていた。
外から店に帰ってくると、ワッっという熱気に圧倒された。

暗い照明の中で、騒然と鳴り響くユーロビート。
派手な衣装を身にまとったのコンパニオン。忙しく動き回るスタッフ。
そして、そのコンパニオンを目当てにくるお客様。


今まで、同じ店の中でも、狭い視野の中で仕事をしていて店内の
ごく一部しか見ることができなかったのだが、ホール係は店全体を
見渡すことができる。

店内の熱気もリアルに感じることができるのだ。
後々に分かったのだが、この熱気を創り出すことがお店の売上げを
あげる重要な要素となる。熱気といってもイメージしづらいだろう。
ちょっと無理があるが、甲子園球場や、国技館で白熱した試合が
行われている場に立ったときに感じる一体感のあるあの濃い空気。

人はこの熱気を求めているのだろう。そこに、測りしえない夢や希望
を感じているに違いない。

そして、お客様とコンパニオンの微妙な駆け引きが創り出す数々の
ドラマが生まれるのだ。
そこには、複雑な誠意と化かし合い、お金と利害が絡み合う関係が
目の前にあった。

ボックス席8席+カウンターのそれほど大きくないお店だったが、
それそのものが日本の縮図にさえ感じた。

そのとき、これは将来役立つ重要な勉強になる!と肌で感じた。

考えて見ると、ちょっとした仕事の役割や視野の違いによってここ
まで、考え方が変わるものなのかと不思議に思った。
今までは、与えられる仕事をひたすら耐えながら頑張るといったマインド
だったが、この日以来、仕事を自分が将来生きるための勉強だと思うようになった。

今目の前で起こっている様々な駆け引きは、他の世界にも人が主体である以上必ず
存在し、それらの複合が社会を作っている。
それを知ることは役に立つとなんとなく思った。


まったく同じ店の1日なのだが今までの自分の考え方の小ささを思い知った。


そして、それ以来頭の中に「日本の縮図」というのがこびりついて、
店で起こる出来事や人との接触を貪欲に分析するようになっていた。

「なぜ、あの人はこんな反応をしたのか???」

と。

つづく