超・久々の「名古屋 対 東京」。
今回で第30弾だ。
日本の剣術の二大流派で、かつ、
徳川幕府の御流儀の剣術である
新陰流と一刀流。
その正統が名古屋と東京で、
それぞれ伝承されている。
正統なので「新陰流」、「一刀流」
の呼び名で良いのだが、
それぞれ、
「柳生新陰流」、「小野派一刀流」
という表現があまりにも人口に膾炙
しているので、
古武道大会などでは、そのように
名乗ることの方が多かったりする。
(それだけ一般に知られている
と言うことだ)
それぞれの先々代の著書
「正伝新陰流」柳生厳長 著
「一刀流極意」笹森順造 著
それぞれの先代が演武する
日本武道館発行の古武道保存DVD
柳生新陰流は柳生延春前宗家、
小野派一刀流は笹森建美前宗家が
それぞれ演武。
作家の津本陽氏は、
新陰流先代宗家の柳生延春師範に
ついて、次のように述べている。
「私は古武道の偉い方と長年おつきあい
をさせて頂きましたが、
人間と人間以上の超能力のある
ふしぎな存在、
その辺りをまたがってるような
感じがした方は、
佐川先生と柳生延春先生でしたね。
柳生先生は理を追っていて、
ある線からは
ふつうの人には出来ないことが
出来るようになった。
佐川先生はなにか根本から違っている
という感じで、身長は163センチ
だけれども、
非常な迫力をあらわされた。」
「深淵の色は 佐川幸義伝」より
「深淵の色は 佐川幸義伝」
津本陽 著(実業之日本社)
名古屋で伝承されている柳生会(現宗家
は、柳生耕一師範)、
東京で伝承されている禮楽堂(現宗家
は、矢吹裕二師範)、
が新陰流、一刀流の正統中の正統である。
柳生会は、流祖上泉伊勢守から
一国一人印可状を受けた柳生石舟斎の
長男の系統で、
柳生兵庫助、柳生連也斎等の達人
を輩出し、宗家が綿々と伝承されいる
尾州伝の柳生本家に伝わる流儀である。
江戸柳生の祖である柳生宗矩は、
柳生石舟斎の五男にすぎず、
柳生家と新陰流の本家は、尾張柳生家
である。
(徳川家康に柳生石舟斎が求められた
際、まだ、当時は、徳川がどうなるか
分からない時代であり(豊臣秀吉が
甥の関白・豊臣秀次に切腹を命じた
年であった)、ひょっとしたら、
徳川が豊臣に滅ぼされてしまう可能性
もあった時代であったので、
石舟斎は、五男である宗矩を家康に
差し出した。)
禮楽堂は、流祖の伊藤一刀斎から
小野家(小野忠明)に伝わった一刀流
の正統が津軽五代藩主津軽信寿以降
津軽家に伝わり、
先々代の笹森順造師範が
この津軽家の一刀流と
山鹿家に伝わった一刀流の正統を受け、
一刀流を集大成して16代宗家となった。
とにかく、
剣術の二大流派の正統がそれぞれ
名古屋と東京で守り続けられているのは、
極めて貴重で素晴らしいことである。
新陰流現宗家・柳生耕一師範の
著書「負けない奥義」(ソフトバンク新書)
と
一刀流先代宗家・笹森建美師範の
著書「武士道とキリスト教」(新潮新書)